日本の税制では、同じ取引について日本と外国で課税された場合に「外国税額控除」により二重課税を排除することができるという規定があります。この制度は米国も含めて各国にありますが、日本の所得税の外国税額控除には注意しなければなりません。 というのも日本における外国税額控除という制度は、「国が課税権の行使について一方的に譲歩する措置(特別に認めてあげている)」と位置付けられているため、あらかじめ申告しないとあとからは認められないからです。
また、ハワイで払った所得をまるまる控除できると勘違いしている方も多いようです。本来でしたらハワイで払った税金を全額還付してもらってから日本で確定申告をすればこのような二重課税の問題は生じないのですが税額控除に一定の制限を設けているためどうしても控除しきれずに二重払いになってしまう部分が出てくるのです。
2016年に日本に居住者している日本人がハワイの不動産を賃貸した場合の例で考えてみましょう。
①2016年にハワイの申告上、不動産所得が300万円(円換算後)生じた。そしてこれにかかる連邦税州税あわせて60万円申告納税した。
② ①について日本の所得税の計算上は、減価償却の早期償却の結果-150万円となり、給与所得600万円と損益通算した。
この場合、ハワイで納付した60万円を日本で還付しようと思ってもできません。その理由は2つあります。
理由1…外国所得はゼロ
ハワイでの申告上300万円の所得が生じていても、それを日本の税法のルールに置き換えると-150万円となるため、外国での所得が生じていないことになります。外国税額控除の限度額は外国所得に対応する部分の税額しかできないのです。
控除限度額=その年の所得税額×国外所得/(国内所得+国外所得)
理由2…年度対応していない
税額控除する年度は、外国で申告納税した年度となっているため必ず1年ズレてしまうのです。ハワイでは2016年分の確定申告は2017年4月15日までに行ないます。ということは日本の2017年分の申告(2018年3月15日)に対応するしかないのです。本来でしたら、年度対応させてほしいところですが残念ながらこれはできません。そのためそのズレを調整する意味で「控除余裕額の繰越」という制度がありますが、これは期限内申告(2017年3月15日まで)に必要事項を記載しなければなりません。
以上のように、あたりまえに控除できると思っていたら手続きミスによって控除できない場合もありますので要注意。
内藤 克(ナイトウ カツミ)税理士法人アーク&パートナーズ(東京、有楽町)代表税理士、東京税理士会所属。税理士法人アーク&パートナーズ代表。ハワイと日本の税務法務専門家ネットワーク「ハワイ相続プロジェクト」代表。 弁護士会、金融機関、後継者団体で事業承継講演のほか、日経新聞・日経各誌への執筆実績多数。 |