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日本の相続は今…【第19回 連帯保証債務】

 

気をつけなければ ならない 「連帯保証債務」

日本では会社(上場企業除く)が金融機関からの借り入れをする場合、ほとんど代表者は連帯保証人としてサインします。会社が約束通りに返済しているうちはいいのですが、返済が滞ってしまうと債権者は連帯保証人のところに回収に来て「あなた連帯保証人なのだから、代わりに払いなさい」ということになります。自分の会社や家族の保証人になるのはともかく、友人や取引先の保証人になる場合は注意が必要です。

 

【保証人たる地位は相続される】  

他人の保証人となって債務者が返済できなくなったら代わりに返済することを「保証債務の履行」といいますがこの保証債務も相続の対象となります。つまり父親が取引先の借金の保証人となっていたら、たとえその事実を知らされていなくともその保証債務を相続人たる奥様や子供(相続人)が引き継ぐわけです。そしてその取引先が倒産したら、それを後継者でもない奥様や子供(相続人)が返済することになるのです。こうなると自分の人生、誰に捧げているかわかりません。これは損害賠償責任についても同じことが言えます。交通事故の加害者であった親が死亡した場合などはその子供は相続により損害賠償義務を引き継ぐことになります。また医師であった親の相続後に患者さんから「医療訴訟」を起こされたら後継者たる医師でなくても相続人が受けて立たなければならないのです。

 

【税務上は確定していなければ控除できない】  

日本の相続税の対象となるのは現預金、株式、不動産などの積極財産だけではなく、借入金や未払金などの消極財産も相続税の対象(控除対象)となります。しかし保証債務は原則として債務控除の対象となりません。これは保証債務を履行(肩代わり)した場合には保証人が債務者に対し、返済してもらえる権利(求償権)が発生し、その後に改修できるかもしれないという前提のため確実な債務とはいえないからです。ただし、主たる債務者が弁済不能の状態にあり保証人がその債務を履行しなければならない場合でかつ、求償権を行使しても弁済を受ける見込みのない場合には、その弁済不能部分の金額については、債務控除の対象となります。  

通常、他人の保証人となる場合は家族に反対されるのを恐れて内緒で印鑑を押すケースが多いので、お人よしの親を持つ方は誰かの保証人になっていないか必ず聞いておきましょう。裁判所で相続の放棄手続きをすれば回避できますが、そもそも保証人になっているかわからなければそれすらできないのですから。

 

 

内藤 克(ナイトウ カツミ)

税理士法人アーク&パートナーズ(東京、有楽町)代表税理士、東京税理士会所属。税理士法人アーク&パートナーズ代表。ハワイと日本の税務法務専門家ネットワーク「ハワイ相続プロジェクト」代表。 弁護士会、金融機関、後継者団体で事業承継講演のほか、日経新聞・日経各誌への執筆実績多数。

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