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日本にある財産はどう評価する?

日本にいながらハワイの不動産に投資する方から「ハワイの不動産を購入すると相続対策になりますか?」とよく聞かれます。答えは「ほとんど相続対策にはなりません」となります。ほとんどと前置きしたのは相続対策とは節税だけでなく、換金しやすい財産にシフトすることや利回りの良い財産を承継させることも含めて考えるとハワイ不動産には魅力があるためです。  

 

日本の相続対策といったら「不動産」「生命保険」「生前贈与」「遺言」という順番で人気があります。なぜ不動産かというと時価(実際に売れる価格)と相続税評価額にかなり差があるからです。もちろん相続税評価額のほうが低いことは言うまでもありません。極端な例がタワーマンション節税です。  

2014年に国税不服審判所での審査事例では、亡くなる1か月前に2億9300万円でタワーマンションを購入、このマンションを財産評価通達に基づいて5800万円で申告、その1年後に2億8500万円で売却という例がありました。これについては購入時と売却時の価額があまり変わらないことと短期間での売買であったため、さすがに否認されましたが、その後も所有し続けていたら認められていたと思われます。なぜなら税務当局が指導する通達通りでの評価だったからです。  

日本の不動産の評価が低い要因としては「建物は固定資産税評価額(時価の約50%)で計算できること」と「土地については小規模宅地の評価減(最大80%減)の適用が受けられること」が挙げられます。そのため2億8500万円のマンションが5800万円まで下がることになるのです。  

また、マイナス金利状況に置かれている日本経済においてはマンション購入をローンで行うケースも増えています。金利1%で借りて利回り3.5%のマンションを購入すれば購入価額が2億8500万円であれば年間700万円の利益を生み出し、なおかつ相続対策になるという夢のような話です。しかしあまりに実態とかけ離れた評価額の場合は事例のように否認されます(タワーマンションについては税制改正の動きもあります)。  

 

決め事の多い日本の役所だから出来ることでしょうが、 「財産評価」基本通達では、池の錦鯉や代々伝わる掛け軸、庭石などについてもどう評価するかは決められているのです。

 

(日刊サン 2016/9/27)

 

内藤 克(ナイトウ カツミ)

税理士法人アーク&パートナーズ(東京、有楽町)代表税理士、東京税理士会所属。税理士法人アーク&パートナーズ代表。ハワイと日本の税務法務専門家ネットワーク「ハワイ相続プロジェクト」代表。 弁護士会、金融機関、後継者団体で事業承継講演のほか、日経新聞・日経各誌への執筆実績多数。

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