世界の中で、高齢化率トップを走る日本。ハワイに住む日本人も高齢化と核家族化で、長生きをことほぐ一方で、介護の不安を抱えた人も少なくありません。日本では、65歳以上の高齢者同士による“老老介護”や、認知症が出はじめている高齢者同士の“認認介護”が深刻な社会問題ともなっており、ハワイでも同様。早め早めの対策が必要になっています。ハワイのシニアの中には、「老後は日本で介護を受けたい」と願う人も多く、今回は日本の介護保険事情を紹介します。
だれでも、どこでも、いつでも甘受、日本の国民皆保険制度は世界一!
現在の日本では、国民皆保険制度がきちんと機能している。たとえばハワイから日本に帰国し、母国で生活する場合。
以下は、日本国籍を持っている人の場合。日本国籍を離脱した方は、後述で帰化の申請情報などを紹介します。
①居住地を決めて住まいを確保し、その居住市町村で住民票登録をする。
②すると市町村の職員が国民健康保険の手続きも案内してくれ、65歳以上なら、その日のうちに健康保険証とともに介護保険証が発行される。
③印鑑証明、マイナンバーカードの登録もする。
④健康保険は即日使用することができ、介護保険もすぐにでも申請することができる。
以上!なんてカンタン!日本の健康保険は“いつでも”、“どこでも”、“だれでも”使える、世界で最も便利で公平な保険制度といえる。現在、国民健康保険の費用負担額は75歳未満で3割、75歳以上の後期高齢者(及び、寝たきりなどの65歳以上の人)は1割負担(ただし現役並みの所得がある人は、75歳以上でも3割負担になる)。さらに公的医療保険には“高額療養費制度”があり、医療機関や薬局でかかった医療費の自己負担額が、ひと月で一定額を超えた場合、その超えた金額が支給される(年齢や所得で支払額は違う)仕組みになっている。だからアメリカのように、「高額な医療費を請求されて破産」なんてこともない。世界保健機関(WHO)から日本の医療保険制度は総合点で世界一と評価されたほどだ。
日本の介護制度はどうなる?増え続ける介護難民
まず、日本の介護保険制度について。
介護保険は介護が必要な人に、その費用を給付してくれる保険だ。日本では加入者が皆で保険料を負担しあって支えあっている。40歳になると介護保険への加入が義務付けられ、64歳までは健康保険料とともに徴収される。65歳以上の人は、原則として年金から天引きされるが、自治体ごとに保険料はさまざまなので、詳細は居住市町村で確認を。
驚くのは、長くハワイに住み、日本の国民健康保険料や介護保険料をそれまで支払っていなくても、前記したように手続きさえすれば、すぐにでも利用できる点。日本はやっぱり豊かだなあ、と思ってしまうが実情は火の車のよう。日本の国民皆保険制度、超高齢化と少子化のダブルパンチで財政赤字は悪化の一方だ。支える人より保険を使う人の方が多くなり、遠くない将来「日本の保険制度は破綻する」ともいわれている。2000年に発足された現行の介護保険法は、何回かの改正を経ながら20年たち、サービスの多彩さなどは出揃ったものの、ヘルパーなど介護従事者は慢性的に不足しているし、要介護者に認定されているにもかかわらず、施設に入所できない、家庭でも適切な介護サービスが受けられない“介護難民”が続出している。ある調査では「2025年には全国で約43万人が介護難民になる」との報告もある。この2025年、長寿大国日本では、5人に1人が75歳以上になるのだ。国も医療費がかさむ高齢者は、病院から自宅、あるいは在宅型の施設に移して医療費を削減し、介護費で賄おうと、“地域包括ケアシステム”を打ち出し、本格化させている。地域密着型で高齢者をケアするという考え方で、地方自治体の地域包括支援センター”が中心となって運営を行っている。
それでも日本の介護制度は魅力!?申請のサポート体制も整っている
大阪で介護施設を運営するピースクルーズ株式会社代表の田中知世子さんは、車椅子のお年寄り達を引率し、毎年ホノルルマラソンにも参加している看護師さんだ。ナース・介護福祉士・主任ケアマネジャーとして、長く介護の現場で働いてきた。「ケアギバーが高齢化し、若い介護従事者が不足しているのは確かに深刻な問題です。国が外国人労働者の緩和政策を出し、ベトナムやフィリピンなどからヘルパーさん要員の受け入れを始めています。施設に入所しているお年寄りとおしゃべりするロボットや、入浴介助やベッド・車椅子の移動介助にAIロボットの導入も始まっています。でもその一方で、年金で賄える程度の費用で入居できる民間の有料老人ホームが増えたり、家庭的な小規模のグループホーム、入所してリハビリができる老人保健施設など、施設もサービスも選択肢は増えました」。ハワイの介護事情と比べたら、比べものにならないほど充実している。
「あと、介護の相談先である市町村の“地域包括支援センター”は、本当に便利で頼りがいがあります。ハワイから日本に引っ越してすぐなら、分からないことだらけかもしれないけど、地域包括支援センターで相談するといいですよ。とても親身にアドバイスしてくれます」 国が苦肉の策で、地方の自治体に丸投げした感のある“地域包括支援センター”だが、現場の対応は概して顧客重視で誠実。介護予防、寝たきり予防のため、居住エリア内で行われているエクササイズ、リハビリ、カラオケなどの催しも案内してくれるし、食事の宅配サービスや困りごと支援、一人暮らしの高齢者のための安全見守りなどの情報も得ることができる。オレオレ詐欺の防止などにも取り組み、サポートしている。センターのメリットは、高齢者やその家族の相談を、行政や関係機関の間でたらい回しすることなく、ワンストップで対応してくれるところ。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャー専門性を持った職員が配置され、医療・福祉・介護と包括的な連携が取れる体制だ。まさしく、現代版お年寄りのよろず相談所といえる。
頼りがいのある地域包括支援センター 介護保険の申請もここで
*介護保険のサービスを利用するまでの流れ*
1 申請
要介護認定を受けるには所定の申請書への記入が必要。保険証と印鑑を持って地域包括支援センターに行けば、記入を代行してくれる。
2 ケアマネージャーを決める
地域包括支援センターに介護の総合プロデューサーであるケアマネジャーの一覧があるから、担当者の助言を得ながらケアマネを決める。
3 訪問審査を受ける
市町村の調査員が来て、介護を必要とする人と面談しながら、心身の状態をチェック。場所や日時は指定できる。
注:面談の時、元気そうにしたり、一人でできますから大丈夫、などと答えると、要介護認定を取るには不利。主治医の意見書などはケアマネが手配してくれる。
4 認定結果の通知
認定審査会で要介護に該当するか、要支援か、必要な介護の度合いが判定され、申請から30日以内に認定結果が通知される。
非該当 / 介護保険サービスは利用できないが、介護保険外サービスがいろいろあるので、地域包括支援センターに問い合わせる
要支援1~2 / 介護予防サービスが利用できる
要介護1~5 / 介護サービスが利用できる
5 ケアプランの作成
要支援、要介護の度合いによって介護プランを作成する。ヘルパーの派遣、デイケア通所、介護施設の入所から、住宅のバリアフリー、車椅子など福祉用具の購入補助など、ケアマネと相談しながらカスタマイズしよう。
6 介護サービスと契約
ケアマネが介護費用を計算し、サービスを行う事業所と契約する。
7 介護サービスの開始
サービスが不都合だったらケアマネに変更を促す。心身の状態に変化があったら、再度介護認定を受け直す。
■介護保険で提供されるサービス
介護保険サービスは、サービス内容が介護保険制度の枠内のものに限定されている。サービスは介護認定を受けた当事者に限り、伴侶や同居家族はサービスの対象ではない。利用できるサービスは以下の通り。
〈生活援助〉掃除、洗濯、寝具の整え、衣服の整理と補修、一般的な調理、買い物、薬の受け取り
〈身体介護〉食事の介助、排泄介助、入浴介助、衣服の着脱介助、通院・外出介助、就寝・起床介助
※提供できないサービス 散歩や趣味のための外出介助、金銭の管理や契約書の記入などの手伝い、同居する家族の援助となる家事援助、正月・節句など特別な調理、大掃除、窓のガラス磨き、床のワックスかけ、家屋の修理、家具の移動や修繕、草むしりや花木の水やり、犬の散歩などペットの世話、車の洗車や掃除、来客に茶を出すなど
要介護認定を受けていなくても高齢者の支援の輪は広がっている
要支援や要介護の認定を受けられなかった人や、介護保険サービス以外でも生活をサポートして欲しいと、不安を感じているシニアへ。市町村、介護サービス事業者、社会福祉協議会、民間企業がさまざまな高齢者支援サービスを行っている。料金は無料、一部負担、全額有料などさまざま。地域包括支援センターでどんな支援があるのか、問い合わせて役立てよう。市町村が行っているサービスや市町村から委託された訪問介護事業者やNPO、シルバー人材センターのボランティアなどが提供するサービスの一例をご紹介。
●おむつサービス/ おむつを月1回自宅に配送、または購入費の助成
●訪問理美容サービス/外出困難な人に理髪店・美容院から派遣(費用の目安/500~2,500円、年間回数に制限)
●配食サービス/日常的に食事の準備が困難な人に、食事を配達(費用の目安/1食500円前後)
●移送・送迎サービス/通院や高齢者福祉施設までの送迎、車いすリフト付き自動車などで移送。
●訪問による生活援助サービス/掃除・食事の準備などの家事支援、外出支援など。
●通所による活動援助サービス/生活機能維持のための運動やレクリエーション、口腔機能改善など。デイサービス、高齢者会館などで開催(自己負担の目安/無料~400円)
前出の田中知世子さんも保険外サービスの活動をしている。「地域に住んでいる看護師が、忙しいご家族に変わり、介護のお手伝いをする“キャンナス”の会というのがあり、全国の有志ナース(潜在ナース、勤務ナース、会社経営ナース)達が、介護保険外のお手伝いをしています。全国100カ所を超え、一人でキャンナスを運営している人もいます。私は、キャンナス大阪の代表です。また今年のホノルルマラソン10キロランウオークに、キャンナス静岡は車椅子の男性と参加します。介護保険では補えない、生きがいのケアにも力を入れたいと考えています」。健康を保ち、質の良い生活を送るため、いきがいをもってイキイキと寿命を全うするために、支援の輪を上手に利用しよう。分からないことや困ったことは抱え込まずに、地域包括支援センターや市町村の福祉課になんでも相談してみよう。想像以上に親切に対応してくれるはずだ。
(取材・文 奥山夏実)
この記事は2019年9月時点の情報に基づいて記載しています。
日本の国籍を離脱した方の日本帰化・在留申請の手続き方法
日本の帰化や在留申請の手続きに詳しい、石橋法律行政書士事務所の石橋潤子さんが要旨をまとめてくれた。
注)読者の方々に誤解が生まれないように、フルバージョンをアップデートしました
■日本への帰国者または移住をお考えの方へ
- 日本でのステータスを得る
日本とアメリカなど68カ国の間ではビザ免除措置というものがあります。アメリカ入国時に必要なESTAはアメリカ特有のシステムですが、観光や知人訪問などが目的の場合には、通常他の免除国への入国には在留資格許可証やビザがなくても入国時にパスポートを見せればそのまま入国できて、 入国から3ヶ月間、その国に滞在することができます。これは日本では「短期滞在」という在留資格のカテゴリーの一つになります。短期滞在では病気など緊急の事由がない限り、3ヶ月以上の滞在、延長は認められませんので、期限の3ヶ月経つ前に出国することが必要になります。3ヶ月ごとに出国、入国を繰り返していると、入管で止められ事情説明を求められたり、場合によっては入国できないことがあります。
ですから、海外から日本に移住をするためには、日本に住むための資格=短期ではなく中長期以上の在留資格を取得する必要があります。出入国管理及び難民認定法(略して「入管法」と呼んでいます)という法律に従った在留資格は、大きく分けて、外交や芸術活動、就労に関するもの、身分によるもの、の3種類があります。法定代理人や入管での取次ができる資格を持つ行政書士・弁護士などを通して、日本で在留資格申請をします。在留の許可がおり許可証が発行されたら、許可証を日本から郵送してもらい、その許可証とパスポートを持って最寄りの日本大使館・領事館でビザ取得の手続きをします。在留申請は入国管理局、ビザの取得は大使館になりますので、在留資格とビザの所轄は別になります。よって、在留許可証があってもビザがおりるとは限りません。ビザ許可のスタンプやシールがあるパスポートを持って日本に入国すると、該当する在留資格と許可年数が書かれた在留カードが入管から発行されます。
- ●国籍が日本である方、日本のパスポートをお持ちの方
在留資格は必要ありませんので、入国されたら、住む場所を決めて、その場所を管轄する地区町村の役所で所定の手続きを進めてください。
- ●国籍が日本以外の方
- ●以前は日本国籍であったが、日本国籍を離脱した方
申請人のご両親の両方または片方の戸籍が日本の役所に残っている場合、ご両親の子供である(あった)ことがこの戸籍で証明できる場合には、その方の家族として、「家族滞在」の在留申請をすることが可能です。ご両親がお二人とも亡くなっている場合は、戸籍は除籍となりますが、除籍という形で本籍地に残っていたら、この除籍を取り寄せて、在留申請できます。
国籍離脱の定義については、以下をご参照ください。
https://www.ny.us.emb-japan.go.jp/jp/a1/01.html
国籍を手に入れるためには、「帰化」の申請が必要です。在留許可申請と違って国籍法が準拠法となり、法務大臣の裁量によって、許可・不許可判断されます。帰化申請する為には20歳以上で、合法的に(在留許可をもって)5年間以上日本に住んでいること、素行善良、生計を立てられること、などの条件を満たすが必要です。
>一旦国籍を離脱した方が国籍を日本に戻すために帰化申請することは可能ですが、国籍離脱の事由が、「住んでいた国、配偶者の事情によりそうするしかなかった」場合、つまり、その事由が「やむを得ない」場合に限り、国籍離脱者の帰化が認められることになります。やむを得ない事情で国籍離脱をした場合には、通常の帰化の要件が緩和され、日本在住5年を経ないでも申請は可能となります。日本からアメリカ籍に変更された場合、アメリカでは二重国籍が認められていて、自ら日本国籍を離脱必要性はありませんので、帰化が認められるためには、他のやむを得ない何らかの事情を必要とします。
なお、申請人の配偶者が日本人であった場合は帰化の条件が緩和されることがあります。後述する日本人の配偶者等の在留資格を取られた外国人の方が、在留後5年経ってから帰化の手続きをする場合には、この緩和条件が適用されることになります。永住申請をする場合にも、日本人である配偶者が保証人となって、申請することになります。
- ●元々外国籍である場合、配偶者が外国籍である場合
外国人が日本に長期住み続けたい場合には、 いずれかの在留資格を取得する必要があります。就労関係ですと、会社を設立してその経営者になる、または会社の役員クラスの地位の方のための「経営・管理」、日本の会社に就労する場合の「技術・人文知識・国際業務」などが一般的です。
なお、在留資格申請中に待ちきれなくて日本に短期滞在資格で入国してしまった場合には、「在留資格変更」の手続きで、短期滞在から該当の在留資格への変更手続きが可能です。が、現在では「やむを得ない事情」を書いた理由書を提出し、入管の審査官にその事由が認められない限り許可されなくなっている=短期滞在の機嫌が過ぎたら出国しなければならない、ので注意が必要です。
- ●配偶者のどちらかが日本国籍で、一方の配偶者やお子様が外国籍である場合-
配偶者やお子様は「日本人の配偶者等」という身分系の在留申請をすることが可能です。この在留資格が取得できると、就労の活動に制限はありませんので、どんな仕事に就くことも(つかないことも)可能です。
- 住民票、印鑑証明書、マイナンバーカード
日本で住居を定めたら、所轄の市区役所で住民届けを出します。住民になれば実印登録が可能で、印鑑証明書が取れるようになります。実印は原則本人しか持っていないということで、日本では印鑑証明書が多くの場面で本人確認の証明書となります。登録をお勧めします。また、市区町村の役所で、マイナンバーカードの取得もしておいた方がいいです。 日本では、口座の開設、または身分証明にマイナンバーが必須となっていますし、運転免許証などのIDの代わりや、コンビニで住民票や印鑑証明書が取れるので、マイナンバーカードを持っていると便利です。
〈まとめ〉
在留資格や帰化・永住申請は、複雑でわかりにくいものです。また、日本人では足りない労働力を外国人に求めるため、最近入管法が改正され、手続きが複雑化、要件の厳格化が進み、以前は通った申請が拒絶されることも多くなっていると聞きます。 在留資格については、申請取次の資格を持つ行政書士に相談されることをお薦めいたします。
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