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ハワイでの終活vol.2;ハワイのお葬式と、プレプランニング

ハワイでの終活vol.2

ハワイのお葬式と、プレプランニング

少し前まで、自分や家族が死んだ時のことを話題にするのは、縁起でもないとダブー視されていました。

でも平均寿命が年々伸びて、老後の生活が心配になる中、人生のエンディングについて早くから考え、行動する“終活”はちっともタブーではなくて、自分らしいライフスタイルの選択として明るくポジティブに受け入れられています。核家族や単身者世帯の増加や、親戚や隣近所との付き合いが薄れる昨今、死は個人のものに変わりつつあります。その結果、「家族や周囲に迷惑をかけないよう、自ら死後について考えて準備をしておきたい」という、自立的な終活の動きが加速しているのです。

ハワイの日系コミュニティも日本と同じように高齢化社会です。独立した子どもは、日本やメインランドなどに離れて暮らし、核家族も増加しています。国際結婚をしているカップルも多いハワイでは、宗教や葬儀・埋葬など、異なる文化や価値観を持つ場合もあり、お互いのエンディングを話し合っておくことはより大切です。日刊サンでは、「ハワイでの終活」と題し、特集シリーズでお伝えします。

vol.1の前回は「終活とは具体的にはどんなことか」をお伝えしました。2回目となる今回は、「ハワイのお葬式と、プレプランニング」について特集します。

 

覚えておこう!ハワイで亡くなった場合の届け出

 

−−ハワイのお葬式についてナビゲートしてくれるのは、ハワイ在住で日本の終活カウンセラーの資格を持つ花水恵美さんです。エミさん、どうぞよろしく!

―ハワイに永住している人だけでなく、短期からロングステイまで日本とハワイでデュアルライフを送っている人も少なくありません。ハワイ滞在中に不慮の事故や病気で亡くなる方のご家族など、何をどう対処したらいいのか途方に暮れてしまうケースもあるのではないでしょうか?

 

 異国の地で、予期せずにお亡くなりになると、本当に不安だと思います。ハワイ在住者や旅行者がハワイで亡くなられた場合、まず医師による死亡確認が行われ、葬儀社に連絡します。葬儀会社からハワイ州保健局(Department of Health)に死亡証明書の手配を行い、時期により約3週間から1か月後に、死亡証明書を取得することが可能です。日系人が利用する代表的な葬儀社は、Hawaii Funeral Services (バレーオブザテンプルズ) 、Hosoi Garden Mortuary、Dignity Memorial、Mililani Memorial Park & Mortuaryなどです。

 また亡くなられた方が日本国籍を所有していた場合は、家族や代理人が在ホノルル日本国総領事館で、死亡証明書と日本の死亡届など必要な書類を提出して、死亡したことを戸籍に記載してもらう必要があります。それも葬儀社が代行でき、日本へのご遺体の搬送も一任できます。

 

−−分かりました、エミさん。悲しみの最中では公的機関への届け出まで頭が回らないから、葬儀社などをうまく利用したほうが得策のようですね。

 

ハワイで愛する人が亡くなった時にすべきステップ

生前に用意しておくべき書類

遺言書、出生証明書、結婚および離婚証明書、ソーシャルセキュリティー情報、生命保険証書、ミリタリー軍事退職票、金融関係書類、金庫などの鍵、事前指示書(living will / advanced directive)など

 

臨終(医師からの死亡宣告書)

↓ ※この時にお葬式プランを持っていない場合は数日の間に決定・支払いまでしなければなりません

葬儀社決定(遺体の搬送・安置・納棺)

告別式

火葬・収骨

納骨(埋葬)

 

ハワイのお葬式はプレプランニング(事前準備)が大事

 

終活を考える時、お墓の購入と同様に重要なのが、どんなお葬式をしたいのか計画することです。人生のライフイベントの中で、教育資金や住宅の購入のように、葬儀費用はまとまったお金がかかるので、あらかじめ計画される事をお勧めしています。

 最近日本でも葬儀社連盟などに加入している葬儀社は明確な見積書を提示するようになってきましたが、ハワイでは州法により葬儀社が細かな料金表を提示しているので、サービス内容や料金の比較を事前に行い、一社に絞ることをお勧めします。

 

−−さて本題のお葬式について。どんなお葬式をしたいか考えるというのは、仏教のお坊さんを呼んでお通夜と告別式をしてから火葬するとか、クリスチャンなら母教会で告別礼拝をしたいとかでしょうか?

 

 そうですね、お通夜と告別式を執り行うのは「本葬」とか「一般葬」と呼びます。仏教式でも神式でも、カトリックでもプロテスタントでもその方の宗教に合わせることができます。宗教を持たない方の告別式もあります。葬儀場の会場を借りて、ご自身の信仰に則った告別式をすることもできます。

 私が所属するバレーオブザテンプルズでは19年3月、霊園内の斎場がハワイで一番大きくて綺麗にリニューアルオープンします。とても開放的でハワイらしい空間なので、別の霊園に埋葬する方も、告別式はバレーオブザテンプルズでしたいという問い合わせがあり、ご葬儀プランのお手伝いもしています。

 

−−日本からハワイアンウエディングに来るカップルのように、大切な身内をハワイアンエンディングでお見送りしたいという人も増えそうですね。

 

 ハワイアンエンディング、ハワイが大好きな方には最高のエンディングになりますね。ハワイ語でさようならは「A Hui Hou アフイホウ」と言います。「また会いましょう」っていう意味で、「さようなら」という別れの言葉はハワイ語にはないそうです。これから日本の方にも「また会えることを約束する旅立ちのセレモニー」を広げていけたら嬉しいです。

 

−−最近はもう少し簡略化した、家族葬を希望する人も増えているようです。

 

 今までは社会的なつながりが優先され形式的なご葬儀が主流でしたが、家族や親族を中心にした少人数で行う「家族葬」もとても増えています。

ご本人が終活を通してプランニングしておけば、親しい、仲の良かった人達だけで見送ってほしいという「プライベート葬」の希望も叶えられます。

 また、告別式などの儀式を行わずに火葬のみを行う「直葬」もあります。ご本人が生前にプランを立てて、希望を明確にされておくことによって、残されたご遺族などが迷うことなく、最後まで自分らしさが叶えられます。

 

ハワイでのお葬式の費用

火葬だけのプラン      1,990ドル~

お葬式セレモニープラン   4,048ドル~ (20%オフキャンペーン適用時)

お葬式&ビューイングプラン 6,252ドル~ (20%オフキャンペーン適用時)

※協力:Hawaii Funeral Services ※料金はすべて2019年2月時点のものです

 

 

−−ハワイでは土葬も火葬も選択できますよね?

 

 はい、ハワイでは長く土葬が主流でしたが、最近は墓地用の土地が少なくなってきていることと、土葬に比べ火葬の費用が低いなどの理由から70%くらいの人が火葬を選択しています。日系人はほとんどが火葬を希望されます。アメリカの軍人さん達が眠る土葬用の芝生墓が広がるパンチボウルのお墓でも、最近は土地が少なくなり、納骨堂に火葬した遺灰を埋葬しています。

 バレーオブザテンプルズの場合、お葬式なしの火葬だけのベーシックパッケージは人件費・搬送費・安置・火葬費が含まれて1,990ドルからご用意し、前もってご購入いただけます。

お葬式をするパッケージ料金は、お棺の材質などで金額がかなり変わります。また、お棺を開けて故人と最後のお別れをするビューイングをご希望でしたら、エンバーミング(防腐加工)や着付け、お化粧なども含まれます。

 

 

−−ご葬儀プランは生前に買える!? 初耳です!!

 

 ご葬儀プランは生前に購入することができます。ハワイでは1960 年代ごろから生前プランを提供し、契約書は公的に正式な書類として守られ、ハワイ州規定のトラストファンドに入金・運用されるので安心です。

 お葬儀の料金は毎年5〜10%ほど値上がりしていますが、生前購入したパッケージ料金は据え置きで何年経っても加算されることなく、購入した時の値段のまま契約したお葬式をすることが可能です。

 

−−早めに購入すればするほど割安になるってことですか?

 

 生前購入ですと、ディスカウントも利用でき、プラン購入時の料金がそのまま適用されるため、料金の高騰に影響されません。また予算に合わせた支払方法が選べます。私もすでに購入して分割で支払っています。

 

−−ハワイのお葬式はアロハやムームーで参列する人もいて、日本のように黒装束ではない服装ですよね。雰囲気も悲しいけれどしんみりし過ぎないよう、皆さんポジティブにしていて、それがとても救われる感じです。

 

 終活のエンディングノートには、「お通夜や告別式はめそめそしないで明るく送ってほしい」などという希望を記入することもできます。また流して欲しい好きな曲もリクエスト。私はマイケルジャクソンの「スマイル」を選んでいます。そして喪主の挨拶ではなくて、生前に用意しておいた故人自身の挨拶を読み上げたり。さらにメインとなる大切な遺影も、お元気なうちにお気に入りの洋服を着てあらかじめ撮影する方も増えています。

 

お葬式のスタイルは、自分らしく自由に演出しても良い時代になりました。前もってプランして、文章で書き残し、それをご家族や愛する人々に伝えておくと、残されたご遺族や大切な方が、故人の意思通りの「また会えることを約束する旅立ちのセレモニー」を営むことができれば、それ自体が残された方にとって最高のグリーフケアになることと思います。

 

 私自身、終活の最終章であるご葬儀とお墓プランのお手伝いを通して、お一人おひとりの豊かな人生に触れ、お客様が笑顔で「これで安心しました!」と言っていただくたびに、心から嬉しく思います。これからもライフワークとして、ずっと寄り添えていけたらと願っています。

 

後記:エミさんから、「一番安い葬儀プランだと棺桶はダンボール製」だと聞き、同席した男性は「僕はダンボールには入りたくない」とポツリ。女性筆者は、どうせすぐに燃やすんだから木製じゃなくても良いかな・・・と笑いあいましたが、皆さんはいかがですか? 元気なうちに終活しておくと、こういう本音を明るく語り合えるから良いんですね!

 

(取材・文 奥山夏実)

この記事は2019年1月時点の情報に基づいて記載しています。