WMケック財団から100万ドルの拠出を受けたハワイ大学マノア校研究者チームは、微生物の生態学的および人間の健康への影響を明らかにするために、今秋、ノースショア流域で研究を行う。ワイメア渓谷の様々な生態系を支える微生物群をマッピングし、その機能を探る予定である。 「流域の上部から海に至るまでの微生物を特定し、その群は何なのか?そこにある植物や動物とどのように影響し合っているのか?を調べる」と主任調査員のマーガレット・マクフォール・ナイ氏は語った。流域全体がこのように研究されるのは初めてである。
バクテリアや真菌などの微生物は、植物、動物、生態系の維持に極めて重要な役割を果たすが、その仕組みの解明にはより多くの研究が必要である。 UHの太平洋生物科学リサーチセンター長の同氏は「私たちの体内や表面に住む微生物群は私たちの健康を助長し、流域に住む微生物はその流域の生態系を維持している」と述べた。 チームの実験は、最終的には、生物を蘇らせ、食糧生産を増加させ、人間の健康を改善するための微生物利用に繋がると期待している。ワイメア渓谷は、非常に多くの生態学的多様性が13平方マイルに詰まっており、複雑な微生物ネットワークを研究するのに最適な場所と見なされている。 「ハワイは、基本的にこの種の調査を実行できる唯一の場所である。カリフォルニアのような場所では1つの流域は数百マイルに及ぶが、ハワイでは、これらの環境勾配が非常に小さい地域に限られている」と共同主任調査員のニコール・ヒンソン氏は述べた。「大部分の生物体(植物や動物)は無菌で生まれ、環境からこれらの微生物を徐々に蓄積するが、その環境はブラックボックスであった。我々は、環境の変化が微生物群に与える影響や、これらの環境に生息する宿主の健康状態にどのように影響を与えるのかに、関心を持っている」 「WMケック財団は、リスクを嫌う連邦政府機関が資金を出し渋る最先端でハイリスク・ハイリターンの科学を応援することで知られている。この資金提供は、UHが真に世界クラスの微生物研究機関としての能力を持っていることを認めたものである」とUHのデイビッド・ラスナー学長は語った。
ワイメア渓谷には数多くの微生物と野生生物がいるので、このプロジェクトは難しく見える。しかし、マクフォール・ナイ氏は、UHの若手研究者たちはそれに取り組むためのツールを持っていると語り、ヒンソン氏は「彼らは、渓谷にどのような種類の植物、動物、魚がいるのかの調査データを持っている」と述べた。 マクフォール・ナイ氏は、微生物研究の先駆者で、8月に国立衛生研究所から500万ドルのMERIT賞を受賞した。この賞は、優れた科学的業績をあげた研究者に長期間の援助を与えるもので、5年ごとに選ばれる。12月には、ハワード・ヒューズ医学研究所から100万ドルの教授助成金を授与され、学部レベルで生物学を教えることになった。「私たちは動植物が主体だと思っていたが、今では生物圏の多様性が微生物から来ていることを知っている。これがダーウィン以降で最大の認識の変化である」と同氏は述べた。
(日刊サン 2018.10.06)