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第2回 立川談慶 Hawai’i 独演会 & 佐藤由美ピアノ・コンサート

Bynikkansan

10月 31, 2019

10月19日 ホノルル妙法寺で開催

 

「立川談慶Hawai’i独演会 & 佐藤由美ピアノ・コンサート」が、10月19日、ホノルル妙法寺で催された。談慶さんの独演会は、ハワイで東日本大震災の支援活動を続けるNPOへの寄付金集めを目的としたチャリティー・イベントで、昨年に引き続き2回目の開催。

 

今年はNPO Club Casa Della Dolce Vita主催、株式会社メディカル・インフォメーション・ジャパン協賛、JTBハワイ、ホノルル妙法寺、ピアノ・プラネット協力のもとで行われた。台風19号で被災した談慶さんの故郷、長野県を始めとした被災地支援も募られ、談慶さんの新刊『デキる人はゲンを担ぐ』(神宮館)の購入者には直筆サインが入れられた。

 

2席の落語の合間には、日本で東北復興支援活動などを行なっているピアニスト、佐藤由美さんがショパンを中心としたピアノ曲を披露するミニ・コンサートを開催。

 

オアフ島内外から約120人が来場し、常夏の島で落語とクラシック・ピアノという異色の組み合わせによる芸術の秋を堪能した。

 

始めに、独演会主催のNPO代表・大田千栄美さんと協賛の株式会社メディカル・インフォメーション・ジャパン代表取締役で医師の森田敏宏さんが挨拶をした。

 

森田さんは山梨県の駿台甲府高校時代に談慶さんと同級生だった縁で、昨年から談慶さんのチャリティー寄席に協賛。心臓カテーテルのチーフとして東大病院に勤務していたという経歴を持つ森田さんは、2013年に起業し、現在は加圧トレーニングを中心とした体質改善等のコンサルティングを行なっている。

 

加圧トレーニングとは、専用のベルトで腕や脚の付け根を締めて血流量を適度に制限した状態で行うトレーニング方法。森田さん自身も加圧トレーニングで悪かった膝を治し、今回出演したピアニストの佐藤さんも事故後の後遺症を克服したという。

 

森田さんは、加圧トレーニングの実演を行いながら、そのメカニズムや優れた効果について語った。 その後、出囃子「インザムード」が流れると共に、黒の紋付羽織をまとった談慶さんが高座に登場。満場の拍手が起こった。

 

落語を生で聴くのが初めてという観客も多い中、談慶さんは日本伝統の一人芝居である落語について「少し先を想像するのが好きな日本人ならではの感受性で成り立つのが落語。お客さんの想像力が頼りなので、同じ話でも人によって受け取り方が違うのも醍醐味です」と語った。

 

1席目の演目は古典落語の『禁酒番屋』。泥酔した2人の侍がチャンバラを始め、一人がもう片方を斬ってしまい、斬った方も翌朝我に返って「主君に申し訳ない」と切腹してしまう。それを聞いた主君は、その後藩士が酒を飲むことを禁じ、自らも禁酒することに。

 

しかし隠れて飲む者が続出したため、屋敷の門に出入りの商人の持ち込む品までを厳格に取り締まる「禁酒番屋」を設置した。談慶さんは、酒を売りたい酒屋と、表向きは止めなければならないが本当は役目と称して酒を飲みたいと思う禁酒番屋の攻防を軽妙洒脱に演じた。

 

笑いと歓声が飛び交い、会場は江戸落語の世界に魅了された。

 

1席目の閉幕後、佐藤さんによるミニ・コンサートが開催された。白いグランドピアノに映えるワインレッドのドレス姿で壇上に上がった佐藤さんは、ショパンの『幻想即興曲』『ノクターン第20番遺作 レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ』『英雄ポロネーズ』『革命のエチュード』を演奏。

 

『革命のエチュード』は普通の状態、両腕の付け根に加圧ベルトを巻いた状態、加圧ベルトを解いた除圧の状態という異なる状態のもとで3回演奏された。

 

佐藤さんは「私はこれを『加圧ピアノ』と呼んでいます。同じ曲でも、加圧ベルトを付けると動きが制約されて必死になるため、やや攻撃的な音になり、ベルトを解いた状態では鍵盤を触る指先がより敏感になるため、音が繊細になります」と語った。

 

続いてリストの『愛の夢 第3番』『メフィストワルツ 第1番』が演奏され、満場の拍手が湧き起こった。繊細な美しさと力強さが折衷した演奏に、観客の中には涙ぐむ人もいた。

 

紫色の袴に着替えた談慶さんは2席目で、古典落語の代表作『井戸の茶碗』を演じた。『井戸の茶碗』は正直者で評判の屑屋、清兵衛が浪人から引き取った仏像にまつわる人情噺で、全ての登場人物が善人という明るいストーリー。

 

初心者にも分かりやすい語り口と、一人で何人もの人物を明確に演じ分けるという談慶さんの妙技に「何人もの人や景色が見えるようだ」とため息をつく人も。

 

惜しみない称賛の拍手が会場に鳴り響く中、第2回目のハワイ独演会は幕を閉じた。 昨年の独演会にも来場したという観客の女性は「落語とクラシックピアノという組み合わせはとても珍しく、談慶さんが菊なら、佐藤さんは百合の花。全くジャンルの異なる芸術表現を一度に比較するという新しい体験ができました。来年も楽しみにしています」と語った。

 

 

(取材・文  佐藤 リン友紀)

 

 

(日刊サン 2019.10.31)