落語家の林家つる子さん、日本舞踊の藤間浩菊さんの公演が1日、ホノルル日本領事館そばにある日蓮宗ホノルル妙法寺(住職・山村尚正)において開催された。
この公演は、「つる子海外十番公演」in ハワイその1番目「~落語と日本舞踊の夕べ~」と題し、落語と日本舞踊を同時に楽しめるというもの。落語は笑顔がチャームポイントで瞳がきらきら輝く女性落語家として注目を集める林家つる子さん。
日本舞踊は海外公演を十数回こなし、世界交流に努める藤間浩菊さんが披露。林家つる子さんは、海外公演が初ということで、緊張の中、高座に上ったが、そんなそぶりは微塵も見せず、観客を笑いの渦に巻き込んだ。
会の冒頭、主催の林家つる子江戸後援会、川上功さんが英語と日本語で挨拶。続いてホノルル妙法寺住職の山村尚正さんが「平日の夕方と皆様お仕事をされてお忙しい中、これだけたくさんの皆様にお集まりいただきまして、日蓮宗のハワイを代表してありがたく思っている次第です。お礼を申し上げます。」と挨拶してスタートした。出囃子に合わせてつる子さんが高座に上がると観客は待ってました! とばかり拍手喝采。
「皆さん、こんにちは、アロハ~! 今日は私、つる子にとっても初めての海外公演です。ハワイの皆様にお越しいただき、とてもうれしく思います。ハワイにいながら、日本の古き良き落語の世界を堪能していただけるように頑張ります。落語は、どんな場面かどんな情景か、皆様のご自由に想像していただいて構いません。落語を聞くのにはなんの準備も要りません。初めて落語を聞く方もぜひ、ごゆるりと、お楽しみいただけましたら幸いです」と挨拶。
海外での落語ということで「落ちを語る」という落語の由来やダジャレやおやじギャグ、とんちなど、日本の笑いについての紹介を織り交ぜながら、わかりやすく丁寧な展開。「かつて小学生のために行った落語や日本で外国人を前に行った内容を盛り込んだ」吟味した構成となっていて、観客の中のハワイ大学の学生も爆笑させるなど、冒頭からつかみは十分。
落語は上下をきる(登場人物をわける)角度を、まず手の位置で覚える、という説明の際「皆さんもやってみましょう!」と促すなど観客を巻き込み、高座と客席の一体感は抜群。ぐいぐいと聴衆を引き寄せる巧妙な話術とテンポよく小気味よいスピード感のある展開は、二ツ目(※)とは思えない安定ぶり。お題は初高座で演じたつる子さんの十八番ともいえる「みそ豆」、夏といえばおなじみ四谷怪談の「お菊の皿」、最後に「片棒」を披露した。
藤間浩菊さんの日本舞踊は「藤娘」と「もみじ」「昭和歌謡曲メドレー」。もみじでは壇上に観客を招き、踊りを指導するなど、こちらも客席と一体感のある演出で、訪れた観客を魅了した。浩菊さんは「歴史、文化を学び、国際交流をすることが私の喜びです。「文化で世界の友好を!」これからも、草の根の交流の輪を広げて参ります」と話した。また、特別参加の詩吟も披露されるなどあっという間の2時間であった。
林家つる子さんは日刊サンへのインタビューで「初の海外公演。落語、伝わるのかな、日本語わかるのかな? と思っていましたが、皆さまとても反応がよくて。終わった後に(話を)伺うと、ハワイ大学の学生さんは『私は日本語力はそこまでないけれど、内容にはじゅうぶんついていけた』と。「あぁ、そうか!」落語は語りだけでなくてジェスチャー、所作もあるし、センテンスだけでついてきていただけると実感。
これで海外公演にすこし自信がつきました。ハワイではなかなか落語を聞く機会は少ないと思いますが、決して近づきがたいものではないので、もし機会を見つけたら、ぜひ足を運んでいただいて、聞きに行っていただければと思います!」と落語の魅力をもっと知ってほしいと語った。この「つる子海外十番公演」、来年はフランスとタイでの公演も予定されている。
短い滞在でプライベートな時間はなかなかとれないとのことだが、「ビーチには?」の問いに「明日、足を入れます!」と満面の笑みで瞳を輝かせる。この澄んだ瞳とキュートな笑顔がこの上ない魅力。「つるっとしている」から「つる子」と師匠に名づけられました~! と話すチャーミングなお顔立ちと伝統的な古典芸能は化学反応を起こすはず。真打ち昇進も遠い日ではないだろう。
(取材・文 鶴丸貴敏)
(日刊サン 2019.10.08)