日本政府より発表された平成29年秋の外国人叙勲授賞者を受け、ハワイ州在住サトル・イズツ氏(89歳)への叙勲伝達式が18日、在ホノルル日本国総領事館内の総領事館邸で執り行われた。伊藤総領事よりイズツ氏の経歴と功績の紹介を含めた祝辞が述べられた。
カウアイ島生まれ日系2世のイズツ氏は、ハワイ大学で心理学学士を取得した後、コロンビア大学で特別教育学修士号、ケースウェスタンリザーブ大学で心理学博士号を取得。1976年にハワイ大学医学部精神医学教授兼ハワイ大学公衆衛生学部公衆衛生教授、1988年には同大学医学部副学長となり、同年7月から、その見識を活かして国際保健医療プログラムディレクターとして、沖縄県立中部病院の研修プログラムのハワイ大学における責任者となり、現在も同プログラムの推進と発展に貢献している。
第2次世界対戦において、沖縄本島で日米両国による激烈な戦闘が繰り広げられた結果、多くの住民や軍人が負傷。医師や看護師などの医療者も失われ、県民は劣悪な医療環境の中にあった。この状況を改善するため、日本政府は1953年に国費留学制度を開始し医師の養成することとしたが、沖縄に卒業後に研修する体制がないことから、卒業生の帰還が進まなかった。この帰還を促進する施作として、1967年琉球政府中部病院(現在の沖縄県立中部病院)において、ハワイ大学との契約に基づき研修プログラムが開始した。
イズツ氏は、88年より同プログラムを統括するとともに、最新の医療の知見に基づくプログラムを作り上げるべく、常に研究を続けている。さらには、毎年3月の修了式には沖縄県を訪れ、卒業生一人一人に修了証書を手渡している。また、ハワイ大学へ短期研修にくる沖縄県の研修医たちが、米国の先進的な医療を現地で実際に体験する貴重な機会を提供している。
沖縄県立中部病院のハワイ大学プログラム修了生はすでに1千人を超え、沖縄県内だけでなく日本全国で臨床や研究活動を行って高い評価をうけており、同プログラムの発展を通して、イズツ氏が日本の医療や公衆衛生の向上に貢献した功績は非常に大きいと、今回旭日中綬章受賞となった。
イズツ氏は、「一生涯に1度の機会ともいえるこのアドベンチャーに携われたことをとても感謝しています」と謝辞を述べた。また、来賓代表祝辞や乾杯でもイズツ氏の類稀なる才能や親しみやすい人柄が紹介され、終始参列者が笑顔となる式典となった。
(取材・文 実紀カバットバット)
(日刊サン 2018.01.24)