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デービッド・イゲ知事は10日、富裕層の所得税を増やし、低所得層には州税の負担を軽くする新しい勤労所得税額控除を定める法律を承認した。さらに条例107号では低所得者が食品を購入する際にかかる消費税の臨時州税控除の永続化を定めた。

 

州議会の財政委員長シルビア・ルーク氏は、これらの法の制定で撤廃する税控除額よりも富裕層から追加徴収する税額の方が多くなり年間2000~4000万ドル公庫が潤うと話す。税務局の広報担当者は、2018年度は所得税額控除によって1670万ドル、条例107号によって650万ドルの徴収税額が見込めなくなるが、富裕層からの徴収額は5100万ドル増加するとの予想を発表した。

 

下院法案209号を提出した下院議員のアーロン・ヨハンソン氏は、勤労所得税額控除によりハワイの低所得層や労働者層の家族は今後6年間に渡っておよそ1億3千万ドルの納税を免除されることになると述べた。

 

一方、反対派はハワイの税収の多くは食品や家賃等基本的支出からの一般消費税に支えられており低所得者層による税収の比重が大きいと話す。州の公庫収入のおよそ半分を消費税が占めている。 イゲ知事は、低所得層の家庭が州税や地方税で収入の13%を納税しているのに対し、富裕層の納税額は収入の8%以下であると示す統計を公開した。「余裕のない層から徴収している消費税が公庫の収入の大部分を占めており、これが最善の策では無いことは明らかです。この状況のバランスを取り、州政府の収入を増やすために余裕のある層から徴収する方法を模索しています。209号法案は正にこの目的に即しています」と、知事は述べた。

 

ヨハンソン氏は209号法案を「労働者層にとって大きな勝利」と称した。同氏はこの法案は支持者で40歳のシングルマザー、マーチェル・トゥガディさんが訴えた生活の苦しさに応えるものでもあると話す。「彼女と会った当時、なんと答えたら良いかわからず私は固まってしまい気まずく感じました。209号法案は支持者だけではなく低所得者層の多くの方々に応える内容です。生活により良い影響を与える、意義深い変化が議会で起きています」と、同氏は語った。

 

ハワイではここ数年間低所得者層の代弁者達から勤労所得税額控除の導入を提案されていた。連邦政府と26の州では導入済みであり、コロンビア特別区では独自の税控除制度を採択した。ハワイにおける新しい税控除では、世帯が受ける連邦の勤労所得税額控除の20%を他の税負担に相殺できる。例えば、3人の子供を持つ夫婦が合計で4万ドルの収入がある場合、州の所得税額は1261ドルとなるが、連邦の所得税額控除の20%を充てることで州の所得税負担額は568ドル減少する。

209号法案は、ハワイ民主党、アップルシード・センター弁護士団体、YWCAオアフ等の団体から支持を得た。また、ホテル、医療、食品サービス業界で働く1万1千人の労働者を代表する団体「ユナイト・ヒア・ローカル5」も支持した。

 

一方、この法案では富裕層に求める所得税率が増加するため、ハワイ商工会議所とハワイ不動産協会からは反対された。タックス・ファウンデーション・ハワイは、富裕層への高い税率について「ハワイは生活し働き投資するには向かない場所であるというイメージが生まれ、ビジネス環境の評価を悪化させる」と述べる。税務局広報担当は、新法案によって税率が上がるのは15万以上の収入を持つ独身の納税申告者と、30万ドルを超える収入がある夫婦合算申告者であり、ハワイ住民のうち高額納税者の上位1.2%相当が対象となると明かした。例を挙げれば、50万ドルの収入がある4人家族が合算申告した場合、州の個人税負担額は4000ドル増加する。

 

ヨハンセン氏に助けを訴えたアイエア住民のトゥガディさんは、同氏が209号法案を「マーチェル法」と名付けたと聞き「驚きすぎて言葉も無い」と話す。「私の意見がこのような形で反映されるなんて信じられません。この法が成功し私の両親と世のシングル・ペアレントや家族にとって助けになるよう願っています。私のようにフルタイムで働き家族の世話をしなければいけない親にとって生活するのは本当に大変なんです」と、加えた。

 

(日刊サン 2017. 7. 21)