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住宅市場が迎えた不況の中、購入者を魅了するために開発会社が購入物件に追加サービスで提供するものは、車や価値の高い品物が多い。今回ホノルル市の開発会社が新しいコンドミニアム購入者に用意した品物には驚く人も多いだろう。カカアコのワード・ヴィレッジを開発したハワード・ヒューズ社が3つのタワーから1ユニットを購入した人に用意したのは、新しいメルセデス・ベンツの3年間リース権。

さらに同社は不動産エージェントにも意欲を高めさせるために、売却手数料の75%を仲介業者に先払いすると提案した。通常、同様のケースでは仲介手数料は、販売手続きが完了しタワーの建設が完了した後に支払われ、ワード・ヴィレッジ・タワーの場合には1年以上後になる。

 

「私達は胸を躍らせています」と、同社の販売・マーケティング部門でシニア・ヴァイス・プレジデントを務めるビル・ピセツキー氏。ラグジュアリー・ホームズ・インターナショナル・ホノルル仲介事務所が先月開催した会議で、満員の地元不動産エージェント達を前に述べた。

ヒューズ社が提案する3つ目のコンドミニアム購入に関するインセンティブとして、自宅を売却してワード・ヴィレッジ・コンドを購入する場合には、自宅売却時に発生する販売手数料をヒューズ社が負担するという。

ピセツキー氏は、購入するコンドミニアムの価格と売却する自宅の価値が大きく異なる場合には、負担する販売手数料に制限があると述べた。これらのインセンティブが適用されるタワーは、去年完成した『ワイエア』、9月完成予定の『アナハ』、来年末から2019年初めまでに完成予定の『アエオ』。

 

供給よりも需要が格段に多く住宅を売る側は有利とされているオアフの住宅市場を全体的にみると、ヒューズ社の提案するインセンティブは場違いにも見える。しかし、カカアコで『ヴィダ・アット・888・アラモアナ』と名付けれた高級タワーコンドミニアムの建設を他の開発会社が中止した事実もあり、高級コンドミニアム市場には弱点が存在している。

 

地元不動産仲介業者や分析家は、ヒューズ社の提案には初期に建設したタワーを早々に完売させる狙いがあると話す。751戸を100万ドル以下の価格で8月から販売を開始するタワー『アアリ』の販売や、今年建設を開始する予定のタワー『ゲートウェイ・シリンダー』の販売に集中するためだ。ゲートウェイ・シリンダーは2015年中頃から125戸を最大2300万ドルの価格で販売開始したが売却実績は低迷中。「アアリやゲートウェイは、先に販売された3つのタワー販売と競合してしまいます」と、ある仲介業者は明かす。仲介業者の中には、車やギフト券、設備故障の無償修理、不動産売買手数料の負担、住宅ローン金利引き下げといったインセンティブが、販売価格の値下げよりも開発会社に好まれていると話す声も。販売価格の引き下げは、同物件を購入済みの顧客に対し物件の価値が下がった印象を与えかねないため敬遠される。

地元不動産市場のアナリストであるリッキー・キャシディ氏は、ホノルルの超高級コンドミニアムには依然として弱点が存在しており、ヒューズ社は購入者を惹きつけて、販売実績の維持を上場株式の投資家へアピールしたい狙いがあるだろうと推測する。「ここまでの販売実績は素晴らしいと思いますが、売れ残っているユニットがあるのも納得できます」とキャシディ氏。

 

ヒューズ社のマスタープランでは、16棟のタワーと4300の住宅、ワード・センターズとして知られる60エーカーの建物に100万スクエア・フィートの小売店・レストランのスペースを開発する予定だ。同社の最新の報告によれば、

ワイエアはほぼ完売、アナハとアエオはおよそ3分の2のユニットが完売したという。 ワイエアでは全174戸中、440万ドルから3600万ドルの10戸程度のユニットが残っており、317戸を構えるアナハは、290万ドルから1400万ドルの15戸がまだ購入可能だ。アエオでは全466ユニット中175戸が80万ドルから200万ドルの価格で販売中。

ヒューズ社の広報担当アンドレア・ガルヴィン氏は「新規プロジェクトの販売へ移行するため、私達は常に現存する在庫の革新的な販売方法を探し続けます。アエオ、アナハ、ワイエアの好調な販売はこれからも続きます」と、述べた。

 

オアフ島でユニークなインセンティブを提供する物件はワード・ヴィレッジだけではない。開発業者のD.R.ホートンは売り上げの押し上げを図り、リーワードオアフのプロジェクト『ホオピリ』購入者には、サルベーション・アーミー経営の『クロック・センター』の1年間のメンバーシップを提供する。また同社のカイルア・タウンの住宅プロジェクト『カ・マラナイ』では、メンテナンス料金を6カ月間無料にする。