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メディポリス国際陽子治療センターの医師が、ハワイで先端医療をレクチャー

Bynikkansan

9月 17, 2018

身体への負担を最小限にできる、最新の陽子線ガン治療について

 

 

今や2人に1人はガンになる時代。 自らも膀胱ガンを患ったことのある“知の巨人”、立花隆氏は、「生きるとは、いずれガンになる運命のどこかの地点にいること」と述べている。 がんの治療法は、外科手術、化学療法、放射線療法が三大治療法と言われている。 これから紹介する“陽子線治療”は、放射線療法の中の先端医療だ。 手術や抗ガン剤治療のプロセスはつらい副作用や入院などがありがちだが、陽子線治療は痛くも熱くもなく、点滴などのチューブ類も一切つけない。照射時間は1回あたり15〜20分。仕事や日常生活を続けながら治療が可能で、高齢者にも優しく安全で、治療後の社会復帰も楽だ。 なにより陽子線治療は、従来の放射線療法よりガンの病巣をピンポイントで狙うので、正常細胞を傷つけることが少なく、かつ、病巣に当たった時に最大のエネルギーを発揮する。 体への負担や副作用は最小限で、最大限の治療効果を期待できるのだ。 そんな陽子線治療の第一人者である菱川良夫医師と、福﨑好一郎氏がホノルルを訪れ、有志を集めたレクチャーを開いてくれた。 「残念ながらハワイには陽子線治療をできる病院はありません。ですが自分や大切な人がガンになった時、有効な選択肢の一つに陽子線治療があることを一人でも多くの人に知っていただきたい。そして陽子線治療を受けたいと希望するなら、日本で受けられることも可能なことをお伝えしたいのです。九州、鹿児島の指宿にある“メディポリス指宿”は、世界で唯一のリゾート滞在型陽子線ガン治療施設です」 菱川医師と福﨑氏は、メディポリス指宿の新設・運営に携わっている。お二人のレクチャーを取材してまとめた。   

 

陽子線治療は、ガンの病巣のみを狙い撃ち

 

 

放射線を照射することで、がんを治療する放射線治療は、外科療法や化学療法と並ぶ、がんの3大治療法の1つだ。100年以上の歴史ある治療法だが、日本では欧米に比べて専門医や専用の施設を有する医療機関が限られており、放射線治療は他の2つの治療法に比べて普及が遅れがちだったといえる。しかし近年、新しい技術や機械などが開発され、がんの先進的治療の一翼を担い、放射線治療を希望する患者さんも増加傾向にあり、良好な治療実績を上げている。  従来の放射線治療では、エックス線やガンマ線といった光子線を使用するが、陽子線治療は、水素の原子核(陽子)を加速してエネルギーを高めてできる陽子線を治療に使う。  陽子線治療はガンの病巣のみをピンポイントで狙い撃ちできるため、周りの正常組織への影響を最小限に抑えることが可能だ。治療効果が高く、身体への負担や副作用が軽い、という点でも大いに注目されている。 

 

ガンの病巣のみをピンポイントでくり抜く

 

 

エックス線などの放射線は、体の表面近くで一番強いエネルギーを放ち、身体の奥へ入るに従いエネルギーが弱くなり、病巣を超えて体を突き抜けてしまう。そのため、病巣の奥にある正常な組織や臓器を傷つけることが避けられなかった。  しかし陽子線は、「設定した深さに到達したときに最大のエネルギーを放出して停止する」という物理的特性を持っている。病巣のある深さに合わせて陽子線の照射を設定すれば、その病巣に当たった時点で最大のエネルギーを放出して停止し、奥までは突き抜けないのだ。  一人ひとりの患者さんに最適な照射を計画することで、ガンをピンポイントでくり抜くように治療することができ、同時に正常な組織への影響を少なくすることができるというのが最大の利点だ。

 

身体への負担が少なく、 仕事や日常生活を保てる

 

陽子線治療は、がん細胞のみを狙い撃ちできるため、他の正常な細胞へのダメージが小さく、従来の放射線治療と比較すると副作用が軽くすむ。体への負担や、治療後の社会復帰に支障をきたすことが少なく、QOL(生活の質)を保つことができる。また、治療期間中は原則として入院する必要はなく、通院での治療となる。  日本ではメディポリス国際陽子線治療センターのほか、国立ガン研究センター東病院はじめ、全国14カ所で治療を受けることができ、施設数としては世界で一番多い国となっている。

 

日本では314万円、 アメリカではその5倍以上!?

 

名誉センター長で財団の副理事長の菱川良夫医師(右)と、副理事長の福﨑好一郎氏。笑顔もアロハな着こなしも素敵!

 

治療は1回15〜20分で、照射時間は5分以内です。それを1日1回、ガンの部位や状態にもよりますが、準備期間も入れて5週間から8週間ほどが目安です。日本での自費負担の治療費は314万円で、日本の先進特約付きの医療保険に入っていれば、全額カバーされます」  アメリカ、メインランドで陽子線治療を受ける場合は5倍以上の費用がかかるという。ハワイで、日本語によるアメリカの生命保険やガン保険のアドバイザーをしている須田くみさんによると、 「アメリカのガン保険でもカバーできます。ただ、日本とアメリカではガン保険プラン本体がかなり異なります。アメリカ国内でも州によって違うことがあります。アメリカでガン保険に力を入れている保険会社は、5年〜10年ごとに見直しをして、新しい先端医療をどうカバーするか検討し、保険内容を更新します。アメリカのガン保険に加入している方は、お持ちのガン保険が最新の保証となっているか見直しをお勧めします。なおアフラックのガン保険に関しては、今年が改訂となりましたので、見直しのチャンスです」  とのこと。どんな保証の保険に入っているか確認してみよう。

 

メディポリス国際陽子線治療センター

 

メディポリス国際陽子線治療センターは2011年に治療を開始した“リゾート型ガン治療施設”だ。菱川医師は2005年、施設の計画段階から関わってきた。 「当時私は兵庫県立粒子線医療センター長をしていました。リゾート型のガン治療施設の実現は、かねてから私が温めていた構想でした。ガンの治療というと、死に直面しながら鬱々と、ネガティブなイメージになりがちですが、もっと明るく前向きに治療する環境が欲しかった」  九州の南端の温暖な地にある指宿は海に面した開放的な土地柄。日本有数の温泉地としても知られる。豊かな自然の中に夫婦や親子で滞在し、温泉につかったり、ゴルフや海の遊びを楽しんだり、山海の幸を味わったりしながら治療を受ける。日常生活から少しだけ離れて、心と体を癒せたら…。ガンに限らず、病気を治療するということは本来そうあるべきだと菱川先生は考えていた。 「東京ドーム77個分という広大な土地に、治療センターはあります。ホテル&スパの宿泊施設も、プールなど各種スポーツ施設も充実しています。敷地内で無農薬の野菜も栽培しています。近隣にはゴルフコースもある。ガンは心と体の生活習慣病です。ならば環境をリセットして、心と体が元気になる場所で、ポジティブに治療をしてほしいんです」  メディポリス国際陽子線治療センターは、医療の質を厳しく評価する国際病院評価機構(JCI)の認証を粒子治療施設として、世界で初めて取得している。 「ガンと診断された時、複数の医師の意見を聞き、複数の治療法の中から、患者さん自らが納得した治療法を選ぶのが望ましいです。私たちのセンターでは、専門医によるセカンドオピニオンを実地しています。陽子線治療という選択肢もあるんだということと、メディポリス国際陽子線治療センターへ日本語で問い合わせてみることもできるということを、ぜひ覚えておいてください」

 

(日刊サン 2018.09.15)

 

(取材・文 奥山夏実)