海軍兵士を祀る“鎮魂”の碑、明治元年者渡航者の碑の前で記念写真
日本の春分の日に当たる3月22日、マキキ・セメタリー(墓地)の一角にあるマキキ日本海軍墓地で、春の“招魂慰霊式”がしめやかに執り行われた。ここは海外にある日本人墓地としては最古のもの。1860年(万永元年)、日米修好条約を推進するための江戸幕府の使節団の海軍護衛艦が、帰国の折にハワイに寄港し、以後も往来を重ねた。旧海軍の隊員の多くは無事に帰国したが、中には任務半ばにして病に倒れた兵士もおり、霊は海軍墓地の“鎮魂”の碑の元に祀られている。
旧海軍は寄港の折、ハワイに暮らす邦人の権益を守る手助けをしたり、日本とハワイの親善を尽くしたりしてきた歴史もある。その伝統は現在の海上自衛隊にも引き継がれ、練習艦隊や潜水艦、航空部隊などが年5〜6回ハワイに寄港する際には必ず、この海軍墓地を献花、参拝している。また1868年(明治元年)にハワイに移民した、元年者と呼ばれる最初の日本人移民を祀る、“明治元年渡航者之碑”もある。 一時は荒廃していた墓地を守るのは、1958年に発足し、今年でちょうど60周年を迎える“明治会”だ。明治から続く移民の歴史や、明治の心を次世代に伝えるための集まりで、現在の会長は早瀬登氏。88歳の御高齢で足を痛めながらも月に一回、カイルアの自宅からバスを乗り継いで、墓地の清掃や管理、供養に通い続けている。「ここは日系人の歴史の全てを見続けてきた、大切な場所です。先人の志を受け継いで地道に奉仕を続けていますので、少しでも多くの方にこの墓地のことを知っていただき、訪れて欲しいです」(早瀬さん)
慰霊式には、伊藤康一総領事、海上自衛隊の隊員、日米協会代表、ハワイ日本人連合協会代表はじめ、日本から埼玉県神道青年会の皆さんも列席。伊藤総領事は、 「明治元年から大正、昭和を経て、先人たちの礎と功績をここで称えられることは光栄です。今こうして日米関係が良好であるのも、戦争という辛い時代を乗り越え、各方面で活躍するようになった先人たちのおかげです。本日この歴史ある場で先人たちに思いを馳せ、さらなる平和を願います」と挨拶。雨宮正宣一等海佐は、「私は去年の8月から連絡官としてハワイに駐在しています。自衛官としてはもちろんですが、個人としても日系人の歴史の縮図であるこの墓地のことをもっと多くの人に知って欲しい。若い世代にいかに引き継いでいくか、今日は私の二人の息子と妻も参列させていただきました」と話した。皆さんも一度、マキキ日系人墓地を訪ねてみませんか。
(取材・文 奥山夏実)
(日刊サン 2018.03.18)