日本の終戦記念日の8月15日(ハワイ時間)、マキキ・セメタリーの一角にあるマキキ日本海軍墓地で、『2019年お盆法要』が執り行われた。ここは昨年、秋篠宮ご夫妻も献花に訪れている。
マキキ墓地は海外にある日本人墓地としては最古のもの。1868年(明治元年)にハワイに移民した、元年者と呼ばれる最初の日本人移民を祀る、“明治元年渡航者之碑”がある。
また、それを遡る1860年(万永元年)、日米修好条約を推進するための使節団の海軍護衛艦が、帰国の折にハワイに寄港し、以後も往来を重ねた。旧海軍の隊員の多くは無事に帰国したが、中には任務半ばにして病に倒れた兵士もおり、霊は海軍墓地の“鎮魂”の碑の元に祀られている。
旧海軍は寄港の折、ハワイに暮らす邦人の権益を守る手助けをしたり、日本とハワイの親善を尽くしたりしてきた歴史もある。その伝統は現在の海上自衛隊にも引き継がれ、練習艦隊や潜水艦、航空部隊などが年5〜6回ハワイに寄港する際には必ず、この海軍墓地で献花、参拝している。
一時は荒廃していた墓地をきれいに整えて守るのは、1958年に発足した“明治会”だ。明治から続く移民の歴史や、明治の心を次世代に伝えるために活動している。前会長の早瀬登氏(90歳)は今春、旭日単光賞を受勲した。早瀬さんは会長時代の7年間、カイルアの自宅からバスを乗り継いで、墓地の清掃や管理、供養をするために通い続けた。
慰霊式にはハワイ明治会の名誉会長を務める伊藤康一在ホノルル日本国総領事ご夫妻、海上自衛隊、日米協会、木曜午餐会などの来賓が参列。明治会のディーン・アサヒナ会長が「祖国のために務めて亡くなった先覚者への感謝と畏敬の念は忘れません」と、あいさつ。
伊藤総領事は次のように語った。 「旧海軍の慰霊や元年者の移民が150年以上昔だということは、遠いできごとのように感じるかもしれませんが、私はこの墓地にお参りするたび、とても近しいことに感じます。それは墓地や慰霊碑がいつも美しく掃き清められているからかもしれません。明治会の長年のご奉仕に深く感謝します。ハワイおよびアメリカ社会で、日系人が果たしてきた役割はとても大きなものでした。その原点となる場所がマキキ墓地です。戦争を知らない若い世代にも、この墓地の存在を心に留めて欲しいと切に願います」
法要はハワイ日蓮宗別院の僧侶が読経後、全員が焼香。詩吟の“国誠流”の有志も献吟した。
(取材・文 奥山夏実)
(日刊サン 2019.08.21)