2月10(日)、11回目となる『ウクレレピクニックin HAWAII』がビクトリア・ワードパークで開催された。 あいにく前の晩からハワイ全州にストーム警報が出され、当日は朝から暴風雨と異常な寒さが襲来。白いテントが立ち並ぶ会場も、時折40フィート以上の突風と雨にさらされ、開演は1時間遅れて10時過ぎにスタートした。
スタッフとボランティアの対応は、虹の架け橋
会場には2つのステージが設けられ、ハワイアンミュージックの重鎮や、ナ・ホク賞を受賞した人気アーティストらが集結。日本からも高木ブーさんやウクレリアンの勝誠二さんが参加し、総勢30ユニット以上のミュージシャンやフラのライブが次々と行われた。
午前中はストームの影響で中断することがあったが、出演者はジョークで和ませ、司会者は「濡れないようにテントの真ん中に入りましょうね〜」と、まるで子どもの頃のキャンプを思い出させてくれるような誘導で、悪天候すらも楽しませてくれた。
ボランティアたちはバイリンガルが多く、自分たちも楽しみながら英語と日本語両方で対応。日本からやってきた観光客にも積極的に話しかけながら、ステージの演目の変更などを案内していた。
雨上がりには何度も山側に虹がかかり、MCや通訳のスタッフは「また虹が出ましたよ〜今度はダブルレインボー!」と、びしょ濡れになりながらもアロハな笑顔で友好の架け橋となってくれた。
ウクレレは一生の友達、ハワイの子ども達にウクレレを
ウクピク・インハワイを主催するのは、2007年に設立されたNPOウクレレファンデーション。代表はサザンオールスターズのベーシストで、自らもウクレレをこよなく愛する関口和之さん。
「ハワイの子ども達にもっと、ウクレレを普及させたいと取り組んでいます。ウクピクでも第8回目から“100本ウクレレプロジェクト”をスタートしています」
地元ハワイの子ども達に毎年100本のウクレレを寄贈する活動で、今年もプレゼントした。 「ウクレレは最も習得しやすい楽器です。2つか3つのコードを弾けるようになれば、それだけで歌える歌はたくさんある。初めてでもすぐに一曲マスターできる。子どもの手にぴったりの持ちやすさで、おもちゃのような楽しさを感じるはずです」
実際、カナダやニュージーランドでは、ウクレレによる子どもの音楽教育を成功させている例もある。日本の学校教育では、リコーダー(縦笛)を習うことが多いが、関口さんは、口をふさぐことのないウクレレの方が、歌って笑って弾けるから楽しい、と話す。
「いつの時代にも子どもは宝ものです。そして子どもの心の成長はデリケート。日々悩み、ちょっとした劣等感にも悶々としています。そんな子どもにこそウクレレは必要。ウクレレの音色の科学的な検証は明らかではありませんが、僕自身、癒しの音色だと感じています。心をニュートラルに戻す働きがあるように思うんです。だから子どものうちにウクレレと出会えば、一生の友達になれる。いつでも小さな可愛いい声で一緒に歌ってくれる友達です」
NPOウクレレファンデーションでは、ハワイが生んだ、ウクレレという楽器の世界的な普及を目指すとともに、ハワイの子ども達にウクレレを通して音楽の素晴らしさを伝え、ハワイの音楽文化を継承していくことを念頭に活動を続けている。そのための最終ミッションが“ウクレレミュージアム”の建設だ。ウクピクでの収益は、毎年ウクレレミュージアムの建設に当てられている。
ポエポエ教師陣のレッスン、 感激の“カニカピラ”!
関口さんと妻の久子さんは、ハワイで『ポエポエ・ハワイアン・カルチャーセンター』も主宰しており、ローカル最高峰のミュージシャンやクムフラを先生に招聘し、ウクレレやフラ、ハワイ文化の教室を開催している。
ウクピクでもポエポエの生徒さんらがウクレレやフラのステージに立ち、日頃の練習の成果を披露していた。
またポエポエでいつも教えているウクレレのドクター・レイ先生や、フラのヴェナ・メチュラー先生が、フリーワークショップを開催。教え方はピカイチに上手く、楽しく、英語の勉強にもなってしまうほどのおトクな内容。今回はウクレレもフラもパニオロ(カウボーイ)を楽しく歌った『‘Ulupalakua』という曲で、どちらも覚えたいという欲張りさんが続出。無料で貸し出されたウクレレを初めて持つ人も、ポエポエの先生方総出でコードを教えてくれるという贅沢レッスンとなった。参加するのが楽しいウクピク、7歳の子どももポロロン♪と、可愛い音色を爪弾いていた。
そしてそれを見守っていたのは、ウクレレでジャズを奏でる名手、ベニー・チャンさん。なんと、レッスンが終わった後に飛び入りでステージに立ち、ドクター・トレイ先生とともに練習曲『‘Ulupalakua』を演奏してくれたのだ! 関口夫妻がリスペクトし、長年培ってきたローカルのアーティストとの人脈がなければ実現しない即興ライブコラボだ。
ハワイ語で「生の音楽を重ねる」ことを「カニカピラ」という。昨年亡くなったハワイアンミュージックの重鎮、ピーター・ムーンの作品タイトルにも「Kani Ka Pila」というCDがあり、ハワイの音楽シーンではよく知られた演奏スタイルなのだという。
ミュージシャンが一期一会のアロハスピリットでユニットを組み、ウクレレやギター、ベースなど弦楽器の音を重ね合う…七色の虹のように重なる音色は、美しく優しく、皆んなをハッピーにしてくれる。 思えば、ウクピクのユニットの多くはカニカピラだ。それぞれが個性的な演奏スタイルながら、心を合わせて融合することから生まれる音楽はまた格別に温かい。
11回目となったウクピクの絆はさらに深まってフィナーレを迎えた。
(取材・文 奥山夏実)
(日刊サン 2019.02.16)