千利休の流れをくむ三千家(表千家、裏千家、武者小路千家)のうちの一つ、裏千家のハワイ協会は5月25日、新しい天皇陛下の即位と、新しい令和の年号を寿ぐ『奉祝の茶会』を催した。
ハワイでの裏千家の歴史は長く、今年で設立68年になり、ホノルルのほか、ハワイ島のヒロやコナ、カウアイ島、マウイ島にも協会があり、約300の会員が茶道を嗜んでいる。 ホノルルにはお茶室も3ヶ所あり、京都の職人が建てた汎洋庵(はんようあん)、ハワイ日本文化センターに寄贈した星光庵(せいこうあん)、ハワイ大学に寄贈した寂庵(じゃくあん)で、日々お稽古や見学がされている。
裏千家15代家元(鵬雲斎千玄室/ほううんさいせんげんしつ)の、「お茶の魅力や楽しさを一人でも多くの方に伝えていただきたい」という思いを受けて、ハワイ協会では今年から“月釜”の会をスタート。2月には“初午茶会”を、4月には“花見茶会”を催し、定員を超える多くの人が茶道に親しんだ。 月釜の会は、協会会員が持ち回りで企画し、毎回趣向を凝らした茶会となる。今回の『奉祝の茶会』は茶歴50年以上の内山京子先生が席主を務め、その社中が中心となって開催した。
場所はシェラトンワイキキ内の日本料理吉家、和室大広間。床の間には裏千家15代家元がしたためた、“瑞気満高堂(ずいきこうどうにみつ)”、「めでたく良きおもいが茶室に満ちています」という書。点前座(てまえざ)には現上皇陛下の立太子礼を祝う茶会の際に公開された“御園棚(みそのだな)が据えられ、立礼(りゅうれい)式でお茶を点て、50名余の来客をもてなした
。 裏千家ハワイ出張所の村田仁志講師によると、14代家元の淡々斎好の御園棚は1952年、京都御苑大宮御所において皇太子(現上皇陛下)立太子礼を慶ぶ祝賀茶会の立礼席で公開された。漆地黒の掻合(かきあわせ)塗りと緋色の房飾りが好対照の棚だという。点茶盤に比べて華やいだ道具が映える意匠であり、御園棚は以降の立礼卓に大きな影響を与えた。 「立礼とはテーブルに、風炉釜(ふろがま)、水指(みずさし)を置き、イスに腰掛けて行う点前のことです。お客さまもイスに座っていただけるので、正座をしなくてもすみます。1872年、第1回京都博覧会開催にあたり、裏千家11代玄々斎が外国人客をもてなすために創案したスタイルです」
奉祝の茶会では道具などの説明は英語でも行われ、ローカルのゲストは質問したり写真を撮ったり、リラックスしながら楽しんでいた。 内山先生はハワイ東海インターナショナルカレッジでもお茶を教えているので、そこの学生も社中に加わり、若やいだ雰囲気が場を和ませていた。和菓子と薄茶の後には吉家特製の点心もふるまわれ、総合芸術としての茶道の奥深さ、魅力を体験した。 「茶道に興味がある方はお気軽に見学や体験をしてください。汎洋庵や星光庵では毎日、さまざまな時間にお稽古をしています。洋服でも大丈夫です。ぜひご一緒に楽しみましょう」と、村田駐在講師。
問合せは、裏千家ハワイ出張所 【TEL】923-3059 【Eメール】[email protected]まで。
(取材・文 奥山夏実)
(日刊サン 2019.06.07)