大入満員、喝采のうちに幕
ニューヨークで活動を続けるキャバレーアーティスト、トシ・カプチーノさんのキャバレー・ショー「ザ・昭和歌謡」ハワイ公演が、11月7日、JAZZ MINDSで開催された。ニューヨークを始め、ボストン、シアトル、ポートランド、カナダのトロントや日本各地で公演を行なっているトシさんだが、ハワイ公演は今回が初。チケットは販売開始後数日で完売し、平日夜の開催にもかかわらず在住日本人を中心とした約130人の観客で席が埋め尽くされた。客席にはハワイ在住の有名人の姿も。追加席や立ち見が出るほどの盛況の中、約2時間の講演でメドレーリレー形式の昭和の歌謡曲54曲を中心に数々の歌を熱唱。歌の合間に同性愛者としての半生や、故郷の福岡に住む母への想いをありのままに語った他、観客を巻き込んだジョークや機知に富むユーモアも多々添えられた。歌に演劇的要素を混在させた「トシカプ」独特の世界観に、観客全員が魅了された。
開幕時間の午後7時過ぎ、ヒトミ・デービスさんのピアノ伴奏に合わせ、黒いラメが光るマリンキャップと白手袋、赤いネッカチーフとポケットチーフ、黒いスーツにエナメルのハイヒールという煌びやかな衣装でトシさんが登場。JAY-Zの名曲”Empire State Of Mind”で舞台の幕が開き、会場は大きな拍手と歓声に包まれた。トシさんは、1980年代の東京でクラブ歌手としての活動を経た後、25年前に単身ニューヨークへ渡った。現在は演劇評論家、日本のパフォーミング・アーツを受け入れるプロデューサーとしても活躍。自身が舞台に立って歌うパフォーマンスでは、ブロードウェイのミュージカル、オペラ、ジャズなどを経て、辿り着いたのが昭和の歌謡曲だったという。トシさんは「ジャズやミュージカルを知っても、やっぱり物心がついて12歳くらいまでに聴いた音楽は最強。一生忘れられません」と語る。
トシさんは、ジャッキー吉川とブルーコメッツの『ブルーシャトウ』、野口五郎の『青いリンゴ』、西城秀樹の『傷だらけのローラ』と『YMCA』、山口百恵の『横須賀ストーリー』、松田聖子の『赤いスイートピー』、郷ひろみの『裸のヴィーナス』など、昭和40〜50年代の名曲が力強くも洗練された美声で歌い上げた。日本で経験した同性愛者としての葛藤をテーマとしたオリジナルの楽曲も歌唱。その際、観客の男性1人をステージに上げ、ホールフーズの紙袋で作ったフェイスマスクを被りながら歌うという場面があるなど、過去の辛い経験を人々と共有できる笑いに変えて昇華させるという演出も見せた。後半は白いオーロラ・ラメのマリン帽にシルバーのコルセット、濃いピンク色のマントにショートパンツ、高いヒールの膝上ブーツという装いで登場し、会場を湧かせた。そして、故郷の母への想いなどを語りながら美輪明宏の『ヨイトマケの唄』を熱唱。魂のこもった歌声に目元を拭う人もいた。アンコール曲は、岩崎宏美の『夏に抱かれて』とBarry Manilowの” Copacabana“。満場の拍手と”Hana Hou!”という掛け声、称賛の指笛などが飛び交う中、トシ・カプチーノさんのハワイ初公演は大成功のうちに幕を閉じた。
観客の30代男性は「日本語の歌詞が分からなくても十分楽しめるショーでした。そして命を込めてステージに上がっているというトシさんの気概が感じられました」と語った。アメリカ在住歴10年以上という40代女性は「日本生まれで自主的にアメリカへ移住した日本人のうち、9割以上は女性と同性愛者という話を聞いたことがあります。日本での経験を前進する力に変え、ここアメリカで夢を成し遂げているトシさんの姿に心から共感。自分にもやれる事はまだ沢山あると勇気をもらいました」と述べた。
初ハワイ公演を終えたトシさんは次のように語った。「ハワイ在住日本人の昭和歌謡への熱さを体で感じました。皆さんノリが良くて、私自身も大変楽しめました。来年の同じ時期にまたハワイ公演を行いますが、その時はブルーノートでやりたいですね」
(取材・文 佐藤リン友紀)
世界を股に躍進を続けるキャバレー・アーティスト、トシ・カプチーノさんの今後の公演予定は以下の通り。
2019年 12月10日 大阪北新地公演
12日 鹿児島公演
27日 神戸公演
2020年 2月15〜19日 ニューヨーク公演(3回)
2月24日〜3月2日 シドニー、メルボルン、 ブリスベン、ゴールドコースト、キャンベラを回る オーストラリアツアー(予定)
5月・6月 福岡、北九州、東京、大阪、名古屋、 札幌を回るジャパンツアー
7月以降 LA、サンフランシスコ、シアトル、 カナダ、コロンバス、トロント、バンクーバー、 モントリオール、ハワイを回る全米・カナダツアー
トシ・カプチーノ オフィシャルブログ TAKE ME TO BROARDWAY https://ameblo.jp/toshicappuccino/
(日刊サン 2019.11.13)