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移民法 Q&A 【混乱続く大統領令によるトランプの移民政策】

皆さんAloha,

 

トランプ政権による移民、難民の制限処置により、国内では強い反発が起きています。イスラム圏7か国からのアメリカ入国を一時的に禁止する発令は、特に物議を醸した大統領令であり、皆さんもご存知だと思います。今回はこれまで署名された大統領令に他にどのような移民政策が含まれているのかご説明します。

 

最初の大統領令では、国外追放の行使の優先順位の変更が書かれています。これは、有罪判決や告訴の対象となった者や外国人犯罪者を国外追放するだけでなく、不法入国した者やオーバーステイをしてしまった外国人も、優先的に国外追放の手続きがなされるというものです。また、ICE(国土安全保障省の移民・関税執行局)の捜査官の数を1万人増加し、ローカルの警察官とICEのエージェントが協力して活動するとしています。これにより、ICEの捜査官だけでなく、地元の警察が不法移民の取り締まりを行い、ICEのエージェントが到着するまで、不法移民を拘束することに繋がります。 

2つめの大統領令では、国土安全保障省にて転用可能な資金を集め、メキシコとの国境に壁を建設するよう命じています。壁の建設には、約15~25億ドルかかると言われており、壁の建設だけでなく多くの国境パトロールの動員が必要となります。しかし、すでに652マイルにおよぶメキシコとの国境の壁があり、政府の現在の資金調達レベルで今年4月まで運用されなければならないため、転用可能な資金はおそらくないと言えるでしょう。  

最後に1月27日に発行された大統領令は、連邦控訴裁判所で口頭弁論も開かれた、イスラム圏7か国からの入国を90日間禁止するものです。一時的入国禁止には、7か国の出身者の永住権保持者やビザ保持者も含まれます。また、難民プログラムによる入国も120日間凍結されました。2017年の難民の受入れ数としてオバマ前大統領は11万人を計画していましたが、大統領令によりその数が半分以下の5万人に制限されました。すでに今年に入り3万人の移民が受け入れられているため、この政策は非常に懸念されます。また、この大統領令には全ての移民手続きに適用されるべき新しいスクリーニング手続きを発行するよう指示しています。新規の手続きの一部として、移民がアメリカで積極的に社会および国益に貢献する仕組みを含むものとされます。どのように誰に適用されるのか明確ではありません。  

 

これらの大統領令の発行により世界中でも波紋が広がっています。トランプ氏が大統領に就任してから約1か月ですが、これまで発せられた大統領令は移民政策の始まりにすぎず、今後も大統領令や議会を通して更なる政策が生み出されることが予測されます。

 

(日刊サン 2017年2月10日)

 

ミチコ・ノーウィッキ 弁護士

ハワイ州弁護士 皆さんからの移民法についての質問等は [email protected]までお願い致します。
日本語OKです。

 

 

このコラムはクライアントからの質問を一般的に書き換えたものです。読者のお役に立てればと思いますが、あくまでも一般的なケースであって法的なアドバイスが必要な方は専門家にご相談ください。