今年2月、アメリカ国土安全保障省(DHS)は移民関税執行局(ICE)の取り締まりに関する権限の拡大を表明しました。従来の不法移民対策の方針では主に重大な犯歴のある不法移民を優先して強制送還しました。一方、新方針の下で犯罪歴のない長期滞在の不法移民への猶予措置等を取りやめ、強制送還の対象はほぼすべての不法移民が該当することになりました。ハワイ州に滞在する日本生まれの不法移民は約3,000人と見積もっています。従って、トランプ大統領が命じた通り、強制送還を担当するICEの職員を1万人増員するのに伴い、ハワイ州にもその影響を受け始めるでしょう。本記事では万が一オーバーステイ等をしてしまった者がICEの職員に止められた時の権利について紹介します。
この状況を踏まえ、米国移民法弁護士協会(American Immigration Lawyers Association)がICEの職員に止められた場合にすべきことをまとめた資料をリリースしました。その主なポイントを下記にまとめて記載します。
●黙秘権を行使する権利があります。ICEの職員にあなたの出身国や滞在資格について質問されたら、答える義務はありません。もしICEの職員が身分証明書の提示を求めてきたら、拒否する権利があります。黙秘権を行使する場合、“I wish to remain silent and to speak to my lawyer”と声に出して言いましょう。
●書面での捜索令状がない限り、ICEの職員による自宅への立ち入りを拒否する権利があります。また、ドアを開く前に、ドアの隙間等に令状を通してもらい、その内容を確認しましょう。もしあなたの名前もしくは住所に間違いがあったり、判事のサインがなかったりする場合、捜索令状は無効です。
●拘束された場合、まだ弁護士を雇用していなくても弁護士と相談したいと言えます。もし依頼した弁護士とあなたが署名したフォームG-28を持っている場合、それをICEの職員に渡してください。
●弁護士に相談なく書類へのサインを拒否する権利があります。
●偽の身分証明書を提示してはいけません。嘘を言ってはいけません。 ICEの職員が職場に調査に来た場合
●捜索令状ないし雇用主の同意がなければ、ICEの職員がキッチンや商品倉庫等の一般非公開エリアへ立ち入りできません。
●冷静を保ち、逃走しないようにしましょう。どうしてもその場から出たい場合、落ち着いて職場を出ましょう。 公の場でICEの職員に止められた場合
●逮捕されていない限り、身体及び所有物を不当に捜索ないし没収されない権利があります。
(日刊サン2017.4.27掲載)
ダリル・タケノ 弁護士ハワイ出身の移民法弁護士。日本での留学・勤務経験を生かし、日本人のお客様にわかりやすく法律サービスを提供している。英語だけでなく、日本語での移民に関する相談も受け付けている。 ウェブ: http://www.migrationcounsel.com E-mail:[email protected] |
お断り:質問形式のコラムになっていますが、すべての場合が当てはまるわけではないことご了承ください。 法的なアドバイスを必要としている方は専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。