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Wine at home vol.7 世界のファインワイン造りが変革を遂げる!

Bynikkansan

4月 6, 2017

 

今、カリフォルニアを筆頭に、世界のファインワイン造りに変革が訪れています。

ロバート・パーカーが好む、果実味溢れた濃厚なワイン造りがメインだったファインワインではなく、「土地を表現するエレガントな味わい」のファインワイン造りが脚光を浴びています。今回、新たなファインワインの潮流をお伝えします。

 

ビッグフレーバーワインの時代

第二次世界大戦後、さまざまな研究者によって、安定的な高品質ワイン造りの「基礎」が出来上がりました。2000年代にかけて、ロバート・パーカーなどの出現により、ブドウの果実が熟せば熟すほど良いとされる、「ビッグフレーバーなワイン」を多くの生産者は目指すようになります。結果、消費者の舌は濃厚なワインに慣れていき、濃厚味が特徴の安価なチリワインなどが、「低価格なのに、案外飲める」ということでヒットを飛ばします。こういったワイン造りが、今日までのワイン造りを支えていったのです。

 

今までのワイン造り

では、今までのワイン造りとはどんなものだったのでしょうか。「良く熟したブドウを使うこと」「清潔な環境であること」「温度管理を徹底すること」が基本となり、そのなかでも、よく熟した糖度の高いブドウからアルコール度数の高いワインを造ることに生産者たちは重きを置きました。しかし、安全性や果実味にばかり目を向けたことで、個性の無い「ありきたりなワイン」が増えていったのも事実でした。

 

新たな潮流を生み出す生産者

新たな動きとして注目されているのが、カリフォルニアの「IPOB」です。ビックフレーバーなワインを目指したブドウの糖度を無理矢理上げるような栽培方法は避け、土地に合ったブドウ栽培を行う、繊細なワイン造りをはじめています。培養酵母ではなく天然酵母を主体にした、昔ながらの醸造方法を試すなど、『個性のあるワイン』が次々と登場してきたのです。現在、オーストラリアでナチュラルワインブームが訪れているなど、「IPOB」をはじめとした、「テロワールを意識したワイン造り」が世界各国に広がりつつあるのです。

 

さまざまなアプローチ

これら注目の生産者たちのワイン造りをひとことで表現するのは簡単ではありません。その理由は、経済的理由から自社畑を持たずブドウを購入し使っていたり、大手とは違うワイン醸造方法を試してみたり、あえて有機栽培を行わないなど、生産者たちそれぞれが自由な製造方法を試しているからです。

 

正当な価格のワイン

個性的で珍しいワインとなると、価格が高騰してしまう恐れもでてきます。ワイン・ジャーナリストのジョン・ボネ氏によると、「新しいカリフォルニアのワインは、フェアな価格設定であるべき」と述べています。この思いは、カリフォルニアだけでなく、世界中の同じ志しを持つ生産者も同様でしょう。ワインを『価値』だけで飲むのではなく、『土地の味』で楽しむ時代が戻ってきたのです。

 

ナカゴミコウイチ
東京都在住。ワイン好きの裾野を広げるため、WEBサイトを中心にワインコラムを執筆しています。