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Wine at home vol.5 ワイン業界を変化させたロバート・パーカー

Bynikkansan

4月 6, 2017

 

ワインに得点を付け、その味わいなどを総合的に評価する「ワイン評論家」。世界中に数多といるワイン評論家のなかで、最も影響力を持つ人物といえば、アメリカ出身の「ロバート・パーカー・ジュニア」でしょう。彼が評論したワインの点数が高得点であれば驚くほどに値上がりし、逆に低評価のワインは売れ残るという、まさにワイン業界の帝王です。今回、ロバート・パーカーという人物を紹介します。

 

ワイン界の帝王は嫌われもの?

ロバートパーカーの発行するワイン評論誌「ワイン・アドヴォケイト」。5万部にも及ばない発行数ながら、世界で最も影響力のある評論誌として知られています。彼が高得点をつけたワインは世界中に注目されることから、元値が数十倍以上に高騰することもあります。そのためか、フランスやカリフォルニアでは、彼の舌に寄り添うようなワインをわざと造る生産者も増加してしまいます。当然ながら、パーカーの採点方法に異議を唱えるワイン関係者も現れますし、悪者扱いをされている一面もあります。しかし、彼は本当に悪者なのでしょうか。

 

消費者目線の評論がしたかった

帝王と呼ばれる以前のパーカーは、ただの純粋なワイン好きでした。元弁護士であることからも真面目な性格であり、長いことイギリスの評論家の下でボルドーを勉強していたようです。そして、彼の人生を変えるキッカケとなったのが1978年。ワインへの関心が高まりはじめた当時のアメリカでは、ワイン評論雑誌などはほぼ出回っておらず、消費者の多くはどのワインを購入すれば良いかの路頭に迷っていました。ワイン業界に媚びた評論をする当時のイギリスに嫌気を覚えていたパーカーは、消費者目線のワイン評論が必要だと思い始めていました。そしてついに、とあるワインショップで購入したメーリングリストに記載されている顧客へ、自費で創刊した自らの評論誌を送付。その評論誌が高く評価され、定期購読の申し込みが殺到します。ついに「ワイン・アドヴォケイト」の歴史がここから本格的にスタートしたのです。

 

信頼された理由

「ワイン・アドヴォケイト」が人気を博したのが、100点満点の採点方式だったことです。細部にまでこだわった解説や膨大な数のワインのレーティング、ワイン初心者でも分かりやすいレイアウトなど、全てが消費者目線で作られていました。また、元弁護士で正当な立場を貫くのもパーカースタイル。フランスの格付シャトーも出来が悪ければ、カリフォルニアワインを平気で高得点にするという、癒着無しの正当な評論も人々の心を掴みます。歯に衣着せぬ物言いで反感を受けるパーカーですが、彼は自分が信じた評価を貫いてきたのです。

 

北部カリフォルニアへ専念

2016年、パーカーはボルドーの評価より完全に撤退し、ナパとソノマを含む北部カリフォルニアの評価に専念することが発表されました。カリフォルニアワインの発展にも寄与し続けたロバート・パーカー。これからのカリフォルニアワインも、より面白くしてくれることでしょう。

写真 http://greatwinenews.com/

ナカゴミコウイチ
東京都在住。ワイン好きの裾野を広げるため、WEBサイトを中心にワインコラムを執筆しています。