去年日本で出版した『ココナッツオイルバイブル』が好評で、第二弾を6月に刊行できることになった。おかげさまでハワイでも多くのココナッツラバースを取材、撮影できて大収穫。きのうもとびっきり可愛いココナッツガールを撮影した。
ココナッツツリーは、 ハワイアンの命と生活を支える木だった。
ノースショアの妖精ティナは19歳。勉強好きな大学生で、時々引き受けるモデルの仕事も大好き。ププケアの自宅にはココナッツツリーが1本屹立していて、たわわに実をつけている。
採って、ココナッツウォーターを飲んだり、実を食べたりするの? 「家族みんな、高いところには登れないの。だから落ちてきたのを拾って、飲んだり食べたりしている」
ハワイの公共の場では、実が落ちると危険だから、全部刈り取らなければならない法律があるんだよ。一年間に100個もの実を宿す“子だくさんのお母さん”、みたいな木なのにね。せっかく生まれたココナッツの赤ちゃんを大きく育てることができないの。
「そーなんだ、かわいそう」
ココナッツウォーターは太平洋戦争の時、薬の代わりに点滴に使われていたほど、人間の体液とよく似たミネラルバランスなんだよ。長い幹が、透析の機械のような精密なフィルターになっているからピュアなの。昔のハワイの人は“天空の湧水”って呼んでいたんだって。
「大切な木なんだね」
当時のハワイアンの家庭には、子どもが生まれるとお父さんが庭にココナッツの実を植える習慣があったの。すぐに大きくなって、8年ほどで実がなるようになる。ココナッツは栄養満点の食糧として尊ばれ、硬い殻は火つきの良い燃料になって。高波やハリケーンがきたら、子どもたちの体をココナッツツリーにしばり付けて風雨から身を守って、まさにライフツリーだったのね。ココナッツオイルは万能薬として使われていたし、木の幹は舟や太鼓にもなった。
「葉っぱは屋根に使われていたんでしょう」
そう、ほんとうに捨てるとこのない宝物のような存在で、ハワイアンは一生涯ココナッツツリーとともに暮らしていたんだそう。
「だけどナツミ、アイムソーリー。家族の中で私だけ、ココナッツジュースを飲むと頭が痛くなっちゃうの。ココナッツミルクも苦手。妹たちはおいしいっていうけど、アーモンドミルクも飲むと頭が痛くなっちゃうから、きっとナッツ系に弱い体質なんじゃないかな」
えー、ティナはココナッツラバースじゃないんだ!? ガーン、私のほうが頭を抱えてしまった。
「でも乾燥した、ココナッツチップスは大好きだよ。おやつにも食べるし、サラダやグラノラに混ぜてもクリスピーでめちゃおいしいっ」
救われました。
ティナのパパは海の写真家、ママはサーファー。二人の妹がいる、とっても面倒見のいいお姉ちゃん。
おやつにサラダに、 ココナッツチップス
ココナッツチップスは油で揚げず、ローストしただけなので軽くて香ばしい。ミネラルや食物繊維が豊富。
(日刊サン 2015/4/24)
奥山夏実 おくやまなつみ●フリーランスライター 『クロワッサン』の特約記者を25年続け、東京を拠点にハワイは毎年、半年ほど滞在。近著に『ココナッツオイルバイブル1、2』、『HAWAII 住むように暮らす』(ホノルルの博文堂でも発売中)など。 |