クリスチャンのカレンダーで最も大切な受難節からイースターまで、一ヶ月ちょっとの祈りの時期をつつがなく過ごすことができた。私が通うホノルルキリスト教会では礼拝の後、ポットラックをしてジーザスの復活を祝った。
私はふだんから肉食系ではないので、受難節にお肉を食べなくてもなんともないけれど、時折食べたくなるハワイならではの肉料理がある。カルアピッグ キャベジとピピカウラだ。
豚の塊肉をティリーフで包み、炊飯器でカルアピッグができる!?
カルアピッグは豚肉の蒸し料理、カルアとはハワイ語で土窯オーブンのこと。ハワイアンは土を掘って焼いた石を入れ、バナナの葉やティリーフで包んだ肉や魚を蒸し焼きにして食べてきた。
正統派のカルアピッグは一匹丸ごとの男の料理だ。内臓を取り出してお腹に焼いた石を詰め、半日以上じっくり蒸し焼きにする。豚はその昔、男達しか食べられない、女性タブーの食品だったとか。
先日、私がよく行くレイの店で、テーブルセッテイングのためにティリーフを買おうとしたら、お店のローカルの人に「カルアピッグを作るの?」と聞かれた。私は驚いて「え〜、家でカルアピッグが作れるの?」と、逆質問してしまった。
彼女いわく、「超カンタンよ!」。1ポンドの豚肉にアラエアして、ティリーフで肉を包んでライスクッカーに入れて、炊飯スイッチをオン。で、1〜2時間ほったらかして、もう1回炊飯スイッチを入れる。「それだけよ、ただしティリーフはケチらずに7〜8枚は使った方が風味がいいし、上手にスチームできるわよ」
と、親指を立てた。アラエアは、ハワイの赤土ミネラルがたっぷりの塩のこと。キャベツと混ぜる時は、2回目の炊飯の前にキャベツを足せばいいのだという。確かにシンプル。でも500gを食べきる自信がないのでまだ試していないけれど、クックパッドにも炊飯器でカルアピッグを作るレシピがたくさん出ていた。
ただざっと見たところ、2回炊飯スイッチを入れるというコツは見当たらない。カルアピッグは角煮ではなく、ほろほろと煮崩れるほどシュレッドな状態になるまで時間をかける。ということは2回スイッチの彼女のやり方が、ローカルならではの正解なんだろう。
ヘレナズ ハワイアンフーズでカルアピッグとピピカウラ三昧。
カルアピッッグキャベジは、チャーチの友人のユキちゃんがボランティアをしている、コクア オーガニックスーパーのデリのもすごくおいしい。でも毎日あるわけではないので、どうしても食べたくなるとカリヒの西の、ヘレナズ ハワイアンフーズに行く。ここはもう一つのお目当て、ピピカウラの名物店としてもつとに知られている。
ピピはハワイ語で牛肉、カウラはヒモ。冷蔵庫のない時代、牛肉を細長く切って塩をして干し肉にした保存法が、そのまま料理名になっている。ヘレナズのピピカウラは、骨つきカルビをしょう油ベースの甘ダレに漬け込み、ガス台の上で数時間干したのち、油で揚げ焼きしたもの。前歯で骨をこそげ、奥歯で噛みしめるうちに、肉の旨みがジュワーと口いっぱいに広がってくる。チリウォーターをかけてピリ辛にしてもおいしいし、添えられた生たまねぎをかじりながら食べるのも相性ピッタリ。オーノ(おいしい)!
ヘレナズ ハワイアンフーズのカルアピッグキャベジ。厨房のガス台の上には、100を超えるピピカウラが干されている。圧巻!
奥山夏実 おくやまなつみ●フリーランスライター 『クロワッサン』の特約記者を25年続け、東京を拠点にハワイは毎年、半年ほど滞在。近著に『ココナッツオイルバイブル1、2』、『HAWAII住むように暮らす』(ホノルルの博文堂でも発売中)など。 |