ピギー・スモールズのベトナム風フレンチディップ。無添加、手作りマスタードをぜひ。白ワインを少し加えるだけで、ディジョン越えのお味!
最近、ダウンタウンのおしゃれな店でこぞって使われているのが粒マスタードだ。骨髄料理がおいしいフレンチ系の店では、前菜のハムやチーズのボードにマスタードがたっぷり添えられている。前回紹介したザピッグ&レディや姉妹店のピギー・スモールズでも、てんこ盛りのマスタードメニューが評判だ。
アメリカのダイナーによくある、 フレンチディップの進化系。
ピッグとピギー、2店舗のオーナーシェフのアンドリュー・レ氏は、ベトナムの血を引く、家族思いのナイスガイ。おばあちゃんの思い出の味をベースに、ハワイのローカルな食材を巧みに使い、スタイリッシュなのにフレンドリーな、今っぽい料理に仕立ててくれる。 たとえば“フォー・フレンチディップ・バインミー”。バケットに、香ばしく焼いた牛肉をサンド。玉ねぎと粒マスタードがたっぷり乗せてあり、フォーのスープにドボン、パンを浸して食べるのだ。 パンをカリッ、肉とスープがジュワ〜、粒マスターがプチプチっとはじけて、なんとも賑やかで斬新。なのに味わいは、アンドリュー・レ氏ならではのロジックで束ねられているから、これが正統!?と思ってしまうほどおいしい。 もともとフレンチディップって、N.Y.などのダイナーによくある、ローストビーフをフランスパンにはさんで、肉汁をつけて食べるあれのこと。イギリス発祥のローストビーフが、アメリカでカジュアルになり、ハワイに来たらアジア的に進化した…土地柄の三段活用ですね!
粒マスタードは意外にも、 健康効果の高い香辛料。
さて、マスタードはアブラナ科の植物の種のことで、意外に健康効果が高い。まず、辛さは抗酸化作用のあるポリフェノールの働き。そして糖質の代謝を助けて疲労回復に役立つビタミンB1、新陳代謝を促して美肌づくりなどに役立つビタミンB2が豊富。さらにカルシウムやリン、マグネシウムも多いので、料理のアクセントとして積極的に使いたい。
超カンタン! 自家製は至極美味。
基本は酢に漬ける、それだけ。
私はハワイに住むようになって、マスタードは自分で作っている。オーガニックスーパーの、コクアやダウンツーアースで、シードを量り売りで安く買えるからだ。マイルドなイエローと、辛みのあるブラウンがあって、私はテキトーに混ぜて使う。 作り方は、乾燥したマスタードシードを酢で漬けるだけ。ビンにシードを入れて、好みの酢をシードがひたひたになるくらい注ぐ。私はココナッツビネガーが好きだが、日本の普通の酢でも、甘みのあるアップルビネガーでもいい。で、軽く蓋をして、室温に放置する。熟成させて苦みを取るためだ。シードはゆっくり水分を吸う。1日に1回くらいは混ぜて、2日めに水か白ワインを足し、空気に触れないくらいのひたひたを保つ。そして3〜4日したら、塩と甘み(砂糖やハチミツ)で好みの味に整える。以上!
半分くらいをブレンダーでペーストにしてもいい。ハム・ソーセージ、ポテサラ、たまごサンド、蒸し鶏、トンカツやフライ、各種ドレッシングetc、もう必需品!
奥山夏実 おくやまなつみ●フリーランスライター 『クロワッサン』の特約記者を25年続け、東京を拠点にハワイは毎年、半年ほど滞在。近著に『ココナッツオイルバイブル1、2』、『HAWAII住むように暮らす』(ホノルルの博文堂でも発売中)など。 |