キムチ用には、みりん粕コチジャンにニンニクと生姜のおろしたのを加えた。砂糖ゼロ、添加物ゼロの自然な漬物がカンタンにできます。松の実を散らして高貴に宮廷風!
ニジヤで“みりん粕”を見つけた。さすがニジヤだなあ、日本のスーパーよりコアな伝統食品を売っている。 みりん粕は、私が好きな小説家、高田郁さんの『みをつくし料理帖』を読んで初めて知った食材だ。江戸時代の女料理人の細腕繁盛記を描いたこの小説には、慎ましく賢く、季節に寄り添った珠玉の和食が登場する。
みりん粕は、江戸時代の高貴な 女性が好んだヘルシーフード。
実際、江戸中期の書物、『和漢三才図会』(わかんさんさいずえ)にも、みりん粕は記されている。お江戸の高貴な女性が好んで食べた、スイーツなんだとか。私もみりんの名産地、三河からみりん粕を取り寄せたことがある。酒粕より甘く、花のような芳香がして、しぼりカスとは思えない上品な味わいだった。 そもそもみりんは、焼酎に蒸したもち米と米糀を加え、40〜60日熟成させて作る発酵食品だ。もち米のでんぷん質が発酵により糖化して、自然の甘みをかもす。ブドウ糖や麦芽など、9種類もの糖に分解されるから、白砂糖より奥行きのある甘みになる。
米糀の豊富なアミノ酸に加え、糀菌にはビタミンB群が大量に含まれている。だからみりんは、江戸時代の人にとって、高価な栄養ドリンクのような存在でもあった。事実、調味料として用いられる以前は、高級酒として飲まれていたという。 残念なことに、現在スーパーなどで売られているみりんは、アルコールや水あめ、その他もろもろの添加物で作られた、人工的なみりんもどきが大半であるけれど。
みりん粕には、注目の レジスタントプロテイン含有。
みりん粕は、健康食品としても一躍脚光を浴びている。レジスタントプロテインという物質がみりん粕には多く含まれていると、日本健康医学会で発表されたからだ。 レジスタントプロテインはタンパク質の1種で、食物繊維に似た働きをする。胃では消化されにくく、そのまま小腸へ進み、腸内の脂質にくっついて体外へ排出する働きを持っているのだ。便秘改善や、血中コレステロールの低下、肥満防止などが期待できる、古き良き健康食品なのだ。
ホノルルキリスト教会の、 ランチのキムチにみりん粕!
ニジヤのみりん粕の売り場には、「味噌やマヨネーズと混ぜて野菜ディップに」とある。それを見て私は思いついた。みりん粕でコチジャンを作ろう! 私の尊敬する料理家、白崎裕子さんが教えてくれた、甘酒を使って作るコチジャンの親戚筋バージョンだ。本家韓国の伝統的なコチジャンは、もち米を炊いて糀と唐辛子と塩を入れて発酵させる。ならば、原料はみりんとほぼほぼ同じ。 作り方は、超カンタンの混ぜるだけ。ニジヤのみりん粕は約200gなので、半量の100gを使う(残りは次回、江戸女子も喜ぶ、高貴なスイーツに使うので、大切にストックしておいてね)。 みりん粕を大さじ3杯の水でのばす。そこに塩10g、韓国唐辛子5〜10gを加えて混ぜる。速攻で完成! 私はホノルルキリスト教会のランチ当番の日、大根とキュウリを塩もみし、水気を切って、みりん粕コチジャンで和えたキムチを作った。松の実を散らして高貴な宮廷風に!? 皆さんもマノアを散歩がてら日曜礼拝に来て、ランチをご一緒しませんか!
奥山夏実 おくやまなつみ●フリーランスライター 『クロワッサン』の特約記者を25年続け、東京を拠点にハワイは毎年、半年ほど滞在。近著に『ココナッツオイルバイブル1、2』、『HAWAII住むように暮らす』(ホノルルの博文堂でも発売中)など。 |