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HAWAII! OISHII! ハワイイ! オイシイイ! Vol.44

Bynikkansan

3月 11, 2017

2ヶ月ぶりにハワイに戻って、ホールフーズに買い出しに行った。野菜のコーナーの下の段、タイ料理のフレッシュなスパイスなどが並ぶ棚の暗闇の中に、直感的にひらめくモノを発見した。食べてみたくてしようがなかった、“フィンガーライム”だ!

 

オーストラリア原産の、 森のキャビア“フィンガーライム”。

今や世界中の三ツ星シェフたちがラブコールを送るフィンガーライムは、ライムとレモンとグレープフルーツを足して、キリッと爽快にアップグレイドしたような味わいの柑橘類だ。 特筆すべきはそのルックスで、外側は豆のサヤのような細長。色は、ライムやレモンとは大違いの、深緑や赤緑や黒系で、少々不気味。サイズは4〜8cmと小ぶり。だけどその感動は、サヤを切った途端にあふれ出るのだ! 切って軽く押すと、輝くビーズのような果肉のツブツブがわき出てくる。まるで宝石をまき散らしたようにきれい。 確かに森のキャビアの別名通り、ツブの大きさはキャビアサイズ。プチッとはじける食感も高級感満載でおしゃれ。さらに三ツ星シェフを喜ばせるのは、ツブツブの状態だと酸っぱい果汁の味はしないところ。料理にライムをしぼりかけて食べると、酸っぱい味を最初に感じるけど、このツブツブだと、プチッとつぶれるまで味が混ざらないから、メインの素材の味わいを際立たせたまま、ライムのアクセントを与えてくれるのだ。 調べてみると、フィンガーライムには100も200も種類があって、サヤが赤くてツブツブも赤いルビーのようなのや、黄色いサンシャインと名付けられたものもある。オーストラリアの原住民、アボリジニは大昔から食べていたそうだけど、21世紀になってやっと、シドニーの有名シェフたちが料理に使うようになり、ヨーロッパのシェフも注目するようになったという。 だから農産物としての栽培の歴史は浅い。1965年にオーストラリアからカリフォルニア大学に穂木が寄贈されたが、商業生産には至らなかった。その後21世紀の初めに同大学の研究者主催の農産物展覧会で、カリフォルニア在住のジム・シャンリーという農産家が、フィンガーライムに一目惚れをし、苗木から栽培を開始。6年の歳月をかけ2012年からアメリカ産フィンガーライムとして初めて販売されるようになった。ホールフーズで売っているのも、シャンリー農園のかな。

 

シーフードもスイーツも、 ジュエリーをまとうような一皿へ。

彗星のごとく現れて、世界一の名トッピングになりつつある、フィンガーライムのツブツブ。サラダ、スープ、各種カルパッチョ、ちらし寿司、焼き鳥、ムニエル、ラムチョップ・・・アイスクリームやチーズケーキのスイーツまで、使い勝手は無限大。お弁当のすみっこに切ったサヤごと入れておけば、ムニュっと絞り出す瞬間が楽しいし。 ところでこのツブツブ、正しい日本語では“サジョウ”というのだそうです。いろいろお勉強になりました!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奥山夏実 おくやまなつみ●フリーランスライター


『クロワッサン』の特約記者を25年続け、東京を拠点にハワイは毎年、半年ほど滞在。近著に『ココナッツオイルバイブル1、2』、『HAWAII住むように暮らす』(ホノルルの博文堂でも発売中)など。