釈迦頭、この緑色が少し茶色っぽくなってきたら食べごろ。
パンの味わいのはずの、ブレッドフルーツ。これは失敗例。
釈迦頭の白い実は、カスタードアイスクリームのような味わいで美味。
友人の家でブレッドフルーツをごちそうになった。パンの実とも言われ、白くてスポンジ状で、噛むとイースト菌のような味がする。ナガイモの蒸したような、マコモダケのような食感だけど、確かにパンに近いかも。ジャガイモより軽い味わいで私は好きだった。
ブレッドフルーツ、 ハワイ語ではウル。
果実は子どもの頭ほどの大きさで、薄緑色の小さな突起のある、硬い皮に覆われている。葉っぱはハワイアンプリントによく使われるので、実よりも馴染みがあるかもしれない。
昔のハワイアンは、焚き火の中にウルを投じ、皮を丸焦げに焼いて剥き、中の白い実を食べたという。私は包丁で半分に切り、皮を剥いて蒸すことにした。
と、包丁で皮を剥き始めると白い液体が出てきた。かなりベトベトしていて粘着性がある。かぶれたら嫌だなと思った。アクが強いのか、実も変色してきた。友人の家で食べたのはきれいな白色だったのに、なんかみすぼらしい。 それでもとにかく30分蒸した。蒸している間に包丁とまな板を洗ってびっくり。ベトベトの粘着液体がセメダインのように固まって、スポンジでゴシゴシしたくらいでは落ちなくなっていた。なんなんだ、このアク!? 挙げ句に蒸しあがったブレッドフルーツは、パンというよりしなびたメンマ。はっきり言って不味い。もうがっかり。 実の選び方を間違ったのだろうか?私が買ったのは直径20cmくらいだったけど、もっと大きいのじゃないとおいしくないんだろうか?
う〜ん大失敗。
かたや、釈迦頭も旬。 こちらはランデブー成功!
釈迦頭と書いてシャカトウ、バンレイシとも言い、チャイナタウンでは英語でアテモヤと書かれて売っている。これもフルーツ。ハワイでは今が旬。ブッダの頭のようにボコボコしているから釈迦頭というネーミング。 ネーミング通り、ルックスはブレッドフルーツ同様に、トロピカルな派手さはなく、どこか不気味。ところが逆転ホームランの味が待っていてくれた。
食べ方は簡単。皮は手で剥ける。白い果肉は小さな房になっていて、黒い種が入っている房もある。食べるととろ〜り、アイスクリームのように甘い。果物の女王、マンゴスチンを濃厚にしたような味わいだ。 ペルーなどのアンデス地方が原産で、有史以前から食べられていた果物だそう。アジアやアメリカでも栽培が盛んで、さまざまな交配種もあるらしい。
栄養価も優秀で、貧血予防などに役立つ葉酸、体内の塩分調整に役立つカリウム、たんぱく質の代謝を高めるビタミンB群などが豊富。種を除き、冷やして食べると天然のカスタードアイスクリームのような味わいだ。 リベンジ必須のブレッドフルーツも、成功したアテモヤも、実が緑色の保護色だから、葉っぱに隠れて目立たないけれど、注意して見ていると、ハワイの家々の庭先で実をつけているのを見かける。地味派手なお味見をぜひ。
奥山夏実 おくやまなつみ●フリーランスライター 『クロワッサン』の特約記者を25年続け、東京を拠点にハワイは毎年、半年ほど滞在。近著に『ココナッツオイルバイブル1、2』、『HAWAII住むように暮らす』(ホノルルの博文堂でも発売中)など。 |