五分づきご飯で味噌おむすび三兄弟。
今また発酵食品が面白い。日本は世界一の発酵食品大国だ。醤油や味噌、酢などの調味料から、日本酒や焼酎などの酒類。さまざまな漬物やなれ鮨、納豆などの加工食品、そして最近人気の塩麹や甘酒。これら伝統的な発酵食品に加え、チーズやヨーグルト、パンを焼く時の天然酵母も発酵の力のおかげだ。
日本は、世界に冠たる 発酵ワールド!
そもそも発酵とはなんだっけ? それは微生物の活動による変化のこと。カビや細菌、酵母などの目に見えない微生物がエサを食べて出す、排泄物がもともとの食材を変化させる。その変化を人間にとって有益なら“発酵”、有害なら“腐敗”と呼ぶのだ。 大豆にこうじ菌がつけば味噌になるし、味噌の熟成が進めば醤油になる。大豆にナットー菌がつけば、発酵食品の中でも最強パワーの納豆ができあがる。このナットー菌、学名はバチルス・ナットーで、菌の中でも繁殖力がハンパなく旺盛だ。たった1コのナットーキンが、15時間後には10億コに増えちゃうほどのパワーなんだそう。ミクロでせっせと活動する、発酵ワールドって面白い。
ナットー菌は“酵素”を作る力も強く、大豆の栄養を酵素の力で分解しながら、良質のアミノ酸、ナットウキナーゼ、ビタミンK、ビタミンB2など、原料の大豆にはない、さまざまな健康成分を生み出してくれている。 またヨーグルトなどは腸内の善玉菌を増やすはたらきはするけど、納豆は善玉菌を増やすだけでなく、悪玉菌を弱らせるはたらきもあるからW効果が期待できる。
免疫力を強め、メタボ対策。 がんをも予防する味噌パワー。
大豆の発酵食品の親分格である味噌にも、茶色い色素成分の中に、“メラノイジン”という抗酸化物質があり、腸内の悪玉菌を減らして善玉菌を増やす効果がある。メラノイジンにはコレステロール、血糖値などを正常に保つはたらきもあるので、Wどころかトリプル以上のご利益が期待できる。
さらに、味噌の抗がん作用にも注目。80年代、国立がんセンターが、「味噌汁が胃がんの死亡率を低下させる」と発表したが、さらに研究が進み、厚労省は味噌汁を多く飲む人ほど乳がんの発生率が下がる傾向にあるとしている。最近では、味噌に含まれる“脂肪酸エチル”が、発がん物質をおさえることも解明した。 乳がんについても、味噌が熟成することで、女性ホルモンに似たイソフラボンが変化して、がんをおさえることに一役買っているらしい。
「医者に金を払うより、味噌屋に払え」とは江戸時代のことわざ。科学が解明しなくても、ご先祖さまたちは経験値で味噌の健康効果をちゃんとわかっていたんですね。
さて、あなたが好きな手前味噌は?
味噌は蒸した大豆に、こうじと塩を加えて発酵・熟成させたもの。こうじが米こうじなら米味噌、麦こうじで作れば麦味噌になる。このこうじ、カビ菌の一種。日本の発酵食品には欠かせない、一番多く使われている菌だから、“国菌”とも呼ばれるほど、国宝級に大切な菌だ。
味噌、醤油、酒はもとより、最近人気の塩麹や甘酒もこうじ菌から作られる。
私が最も尊敬する料理研究家の白崎裕子さんも毎年、玄米味噌やひよこ豆の白味噌などを仕込んでいる。 「新米の季節は玄米ご飯がおいしいけど、梅雨時になるとお米が酸化してくるので、五分づきのご飯を炊きます。甘味の白味噌、旨みの玄米味噌、パンチのある熟成味噌の味噌三兄弟のおにぎり、ニッポン、チャチャチャですね!」
和食の極み、お母さんの掌の味。
奥山夏実 おくやまなつみ●フリーランスライター 『クロワッサン』の特約記者を25年続け、東京を拠点にハワイは毎年、半年ほど滞在。近著に『ココナッツオイルバイブル1、2』、『HAWAII住むように暮らす』(ホノルルの博文堂でも発売中)など。 |