奈良県の大和野菜“ひもとうがらし”を見つけたので、ルックスが似ている長ひじきと煮合わせてみた。フラックスシードオイルもえごま油も加熱NGなので、仕上げにかけてビターな風味づけ。
ベジタリアン&オーガニックのスーパー、ダウンツゥーアースに行くと、よく買うデリがある。ひじきサラダだ。芽ひじきとコーン、きゅうり、人参、パプリカが、ゴマとごま油たっぷりの酢醤油で和えてある。芽ひじきのけっこう強烈な磯の香と、芽ひじき、コーン、ゴマが、それぞれ三様に口の中でプチッとはじける食感があとをひき、きゅうりの青い味、人参やパプリカの甘みや彩りが、妙に地味派手な一品なのである。
ところが自分で作ってみると、磯の香の凝縮感が乏しく、ごま油もダウンツゥーアースほどドボドボ入れる度胸がないから、なんだかぼやけた味になってしまう。
で、買う、作る、を繰り返しているうちに、はたと気づいた。お店では芽ひじきを水で戻さず、乾燥したままドレッシングに漬け込んでいるんじゃないかしら!?
ひじきに含まれる無機ヒ素の発がんリスクと、ごま油のリノール酸、過多アレルギーと。
臆病者の私は、とたんに尻込みしてしまった。日本人の私たちは、ひじきは鉄分や食物繊維に富む健康食材だと思っている。ところがイギリスの食品規格庁では、「ひじきには無機ヒ素が多く含まれている。無機ヒ素はヒ素の中でとくに 毒性が高い上、発がんリスクもあるので食べるべきではない」と勧告を出しているのだ。
日本の食品安全委員会は、ひじきが無機ヒ素を含有していることは認めるものの、水で充分に戻せば、ヒ素の大半は排出できるから問題なしとしている。
私も、乾燥ひじきは水で戻せば問題なしに、大賛成! ただもう一つ気がかりなことがある。ごま油の使い過ぎだ。
ひと昔前までごま油は、健康オイルの代表格だった。だが、ごま油に多く含まれるリノール酸は、体内でアルキドン酸というアレルギー物質を増加させてしまう。がんのリスクを高めることも報告されている。スナック菓子にも多くのリノール酸が使われているから、現代人は摂り過ぎなのだ。アトピーや花粉症などのアレルギー症が増加しているのは、リノール酸の摂り過ぎと指摘する専門家 は少なくない。また、茶色いごま油は、ごまを高温で炒って搾油するため、製品化の段階ですでに酸化しているというのが残念な実情だ。
ひじきの磯の香には意外にも、ビターなフレックスシードオイルやえごま油が合う。
9月10日号の『クロワッサン』で、フレックスシードオイルやえごま油、サ チャインチオイルなどの機能性オイルの特集をした。その中で地曳直子さんというオイリストに料理を作ってもらったところ、ひじきとごぼうと押し麦の炊き和えの仕上げに、えごま油を振り入れたのを紹介してくれた。オメガ3系の油はビターな味のものが多く、料理に使いづらいことがあるけれど、土くさいゴボウや、磯くさいひじきなどとは意外にも相性抜群。以来、私のひじきサラダは、必ず水に戻すことと、えごま油を使うことで一件落着した。
(日刊サン 2015. 9. 9)
奥山夏実 おくやまなつみ●フリーランスライター 『クロワッサン』の特約記者を25年続け、東京を拠点にハワイは毎年、半年ほど滞在。近著に『ココナッツオイルバイブル1、2』、『HAWAII 住むように暮らす』(ホノルルの博文堂でも発売中)など。 |