子どもたちにココナッツ料理を教えるスリアさん。
前回紹介した、ワイアナエにある“マウナファーム”のスリアさん。スリランカ出身のスリアさんから習ったココナッツ料理は、カレーやココナッツライス、オキナワンポテトのココナッツミルクプディングなどなど。
その中に、“サンバル”という、ココナッツの薬味というか、スリランカ式のふりかけがあった。見たことも食べたこともない異国の料理の作り方を聞いて、私はデジャブしてしまった。前々回に紹介した、グアムのチャモロ料理“ケラグエン” と、レシピの組み立てがそっくりなのだ。
ココナッツの白い果肉和えは、豆腐のおから和えにそっくり。
“サンバル”も“ケラグエン”も、削りたての白いココナッツの果肉を使う。スリアさんは、「料理をする直前に削ったほうがおいしいよ」とアドバイス。和食のだしをひく時、直前にかつお節を削ったほうが風味が増す、という道理と同じ考え。伝統的な食文化は、手間を惜しまないものだ。
で、前々回の“ケラグエン”は、細かく切った鶏肉や玉ねぎをココナッツフレークで和えてレモン風味に仕立てたのに対し、“サンバル”はニンニクや玉ねぎのみじん切りや、クミンやカルダモン、唐辛子などのスパイスをココナッツフレークと和え、少し塩を効かせてふりかけ風にしたもの。
ココナッツが生育する風土には、おのずと共通する食文化が生まれるんだと、妙に納得してしまった。そして思った。ココナッツフレークは、日本の豆腐のような存在なのだ。おから和えにしたり、白和えにすることで、いろんな食材の持ち味を、よりおいしく束ねてくれるのと、まったく同じ使い方をしているんだと。ココナッツも豆腐も色白美人、性質はいたって優しく、栄養は満点の優等生と、才色兼備ぶりも共通する。
スリアさんは、「この純白のココナッツの果肉にはなんの不純物も含まれていません。地球上でもっとも、心から安心して口にできる食べものなんですよ」と、子どもたちに教え、こう付け加えた。
「ココナッツは伝統食ですが、現代っ子の心身を健やかに育む未来食でもあるのです」
ワイアナエコーストの、ヒーリングセンターを知ってますか?
ワイアナエの街の丘にワイアナエコースト総合保健センター(WCCHC)があるのをご存じだろうか。救急病院として最先端の医療を行う、西オアフのハブ医療施設なのだが、ここには全米で唯一の、ネイティブハワイアンのヒーリングセンターが併設されている。
ハワイ古来の伝統医療といえば、ロミロミ・マッサージ、薬草療法、ホオポノポノと呼ばれる集団セラピー。ココナッツオ イルも治療に欠かせない。WCCHCは、これらのハワイアンヒーリングを、予約さえすれば、ハワイアンをはじめ誰でもが無料で施術してもらえる、なんとも慈悲深い施設なのだ。センターの建物や散歩道には、スリアさんの彫金アートも飾られている。センターの長老たちにハワイアンヒーリングを取材したので、次回はそのご紹介をします。
ハワイアンヒーリングセンターの外壁には、スリアさんのアート作品のイルカ。
(日刊サン 2015. 6. 17)
奥山夏実 おくやまなつみ●フリーランスライター 『クロワッサン』の特約記者を25年続け、東京を拠点にハワイは毎年、半年ほど滞在。近著に『ココナッツオイルバイブル1、2』、『HAWAII 住むように暮らす』(ホノルルの博文堂でも発売中)など。 |