KCCファーマーズマーケットで、オツジさんとモリンガ。
ココナッツオイルの取材で、オアフ島の西、ワイアナエにある“マウナファーム”に行った。スリランカ出身のスリアさんという方が運営している農場で、4.5エーカーの敷地には、野菜畑や果樹園が開墾され、ログハウスやアトリエもある。
スリアさんの本業はエクステリアの彫金アーティストだ。カハラの豪邸通りなどを歩いていると、あちこちでスリアさんの門扉が見かけられる。サモアの王様も御用達なんだとか。
そんな師匠はココナッツ食文化の本場、スリランカ料理もお手のもの。スパイスの芳しい香りに引き寄せられて鍋を覗くと、すでにカレーが煮込まれていた。
“薬箱の木”モリンガは国連推奨、世界の貧困と飢餓を救う、救世食。
「This is made with the drumsticks of the Marunggay and coconut milk」
ムルンガイの鞘???
「Yes, Marung gay i s s ay M oringa i n English」
モリンガってあのモリンガ!? 地球上の可食植物の中で最も栄養価が高いといわれる植物で、 90種の栄養素と300種の効果効能をもつ、“薬箱の木”と呼ばれるモリンガ!?
モリンガはインド原産の樹木。3千年の歴史があるアーユルヴェーダにもモリンガの処方が記載されていて、インドやスリランカ、フィリピンやカンボジアなどの東アジアでは、カレーやスープに昔からよく使われてきた食材。
放っておいてもすくすく成長し、ジャックと豆の木のようにどっさり葉を茂らせてくれる。葉は小指の先ほどに小さくて柔らかい。 国連のWFP世界食糧計画にも採用され、世界中の飢餓と貧困のために、モリンガの食用を推奨している。
私も自分の飢餓と貧困を救うため、ハワイに来ると必ず、冷凍庫にモリンガを常備する。枝を手でしごいて葉っぱだけをとり、水で洗って冷凍させておくのだ。生で食べると青臭いというか、キリンさんとか草食動物がいかにも好みそうな味だけど、加熱するとくせのない味わい。スープにもお味噌汁にもカレーにも、手軽にひとつかみ入れて食べる。茹でて胡麻和えにしてもおいしい。
モリンガを買うのは、KCCのファーマーズマーケットに出店しているオツジファームで。オツジファームはほかのファーマーズマーケットにも出店しているが、モリンガはKCCでしか売らないんだそう。いつもあるとは限らないけれど、あると大束の100万本のバラ状態で、3ドルだったか5ドルだったか、おトク感満載のひと抱え。あと、ノースキング通りの魚屋、タマシロマーケットでも売っていることが多い。だけどthe drumsticks of the Marunggay、モリンガの鞘が売られているのは見たことがなかった。
さっそくスリアさんのカレーをごちそうになろう。カルダモン、クローブ、クミン、ターメリックなど、さまざまなスパイスで煮込まれた、モリンガの鞘の味は?
鞘の殻は固いので、前歯でこそぎ取る。豆は小豆粒くらいの大きさでちょっと苦 い。というか、豆もカレーのうま味がしみているのでそれ自体に感動はない。地味・・・もとい滋味!
スリランカ式、モリンガの鞘のココナッツカレー。
(日刊サン 2015. 6. 2)
奥山夏実 おくやまなつみ●フリーランスライター 『クロワッサン』の特約記者を25年続け、東京を拠点にハワイは毎年、半年ほど滞在。近著に『ココナッツオイルバイブル1、2』、『HAWAII 住むように暮らす』(ホノルルの博文堂でも発売中)など。 |