食に見る、トリエステならではの融合文化
●イタリア文化とオーストリア文化の共演
イタリアに併合された最後の都市、トリエステ。長くオーストリア帝国の統治下にあった歴史から、トリエステの文化はイタリアとオーストリアの風土が融合している。そんな異色文化のいいとこ取りをしたレストランこそが、Mastrobirraio Trieste(マストロビライオ トリエステ)だ。イタリアの美食とトリエステならではの一品に、中欧各地のビールが味わえる。扉を開けると、ビアカウンター越しにオーナーが優しい笑顔で迎えてくれる。
●上質な赤身の牛肉をいただく、タリアータ
Mastrobirraioの絶品揃いのメニューの中で味わいたいのは、イタリア料理のタリアータ。タリアータとはイタリア語で「切る」という意味。牛もも肉の塊を香ばしく焼き上げ、薄くそぎ切りにしたもの。表面のみが焼かれるため、中からは牛のたたきのような赤身が覗く。旨味たっぷりの牛肉に、イタリア野菜のルッコラをたっぷり添えて、ペコリーノと呼ばれる塩気が強い羊のチーズをのせていただくのが、Mastrobirraio流。オリーブオイルとバルサミコ酢、塩のみのシンプルな味付けだから、牛の質感、チーズやオイルなど、ひとつひとつの味わいが引き立つ。
●中欧風のビール煮込みで
イタリア料理の上級者には、鴨料理も外せない。ビアバー専門でもあるMastrobirraioでは、上質な鴨肉をビールで煮込ませる。鴨料理はとてもデリケートで、その良し悪しは調理法で大きく変わる。ここでは贅沢な鴨料理がリーズナブルな価格で食せるとあって、これも人気メニューのひとつ。また、ビール煮込み料理といえば、ソーセージのビール煮込みがある。イタリア料理に限らず、中欧寄りのこんな一品を味わいたくなるのも、Mastrobirraioだからだろう。イタリア人シェフの手で繊細な味わいに仕上げられたビール煮込み料理も、文化が入り混じったトリエステの宝。
●トリエステの一品といえば
メインディッシュを選んだあとは、是非ともここで試していただきたいのは、トリエステならではの一品、Patate in Tecia。Teciaとはトリエステの方言で、フライパンの意。この地方にしか存在しない一品で、ポテトに薄切りベーコン、玉ねぎという、いかにも中欧風の料理。イタリア産のベーコンの旨味がポテトに染み込み、しっとりと仕上げられて、口の中でとろける感覚は他にない味わい。ポテトに感動するという、稀なメニューだ。
●ビアバーのティラミスは?Birramisu!
お腹も心も満たされた頃だが、ここで忘れてならないのがデザート。イタリアのデザートといえばティラミスだが、こちらMastrobirraioではBirramisu(ビラミス)と呼ばれるティラミス。Birra(イタリア語でビール)のグラスに作られたティラミス。そのため外見は明らかにBirramisuだが、ほのかにビールの香りが漂うので、ビール入りの独自のレシピなのかもしれない。甘味好きでなくとも、軽くひとつ完食してしまえるほどの美味しさ。この辺りでは、世界一のティラミスと言われている。
●特上のビールに上質な美食は、Mastrobirraio
Mastrobirraioの根強いファンが多いのは、トリエステでは珍しい山小屋の気分さえ味わえるその穏やかな雰囲気と、コストパフォーマンスが高く極めて上質な美食を味わえるから。また、イタリアにいながら、ずらりと並んだ特上のビールが味わえるのも、魅力のひとつだろう。
【引用元】
https://www.tripadvisor.it/
http://chiaraandreola.blogspot.it/
http://www.foodspotting.com/
ライター /Mao Gasperini イタリア、トリエステ市在住。2010年より5年間、トルコのイスタンブールでベリーダンサーとして活動。2015年にイタリア、トリエステへ移住。イタリアの食に魅了されて、食べ歩き、料理研究の毎日を過ごす。 |