日刊サンWEB

過去記事サイト

現地からお届け! 海外Food Trend【イタリア・トリエステ編 vol.5】

海の街の魅惑レストラン、Città di Cherso

●クロアチアの美しい島をイメージして

海の街トリエステには、底知れぬ海の幸の贅沢がある。

そして、イタリアといえばワインの宝庫としても知られる。そのふたつがテーブルに並んだときに、この国の、この街の魅力がこの上なく感じられる。そんな幸せな空間を提供してくれるレストランは、Città di Cherso(チタ・ディ・ケルソ)。Chersoとは、トリエステから車で約2時間のところにあるクロアチアの島。トリエステと同じアドリア海を共有するChersoは、世界一美味しいといわれる手長海老の産地である。美しく澄んだ海と新鮮な生ものの産地とあって、春から夏のヴァカンスシーズンにはヨーロッパ各地から人々が訪れる。Città di Chersoは、Chersoを再現してくれるトリエステのレストランだ。

 

●イワシの南蛮漬け、イタリアンヴァーション

前菜は、盛り合わせで楽しみたい。その一皿にはトリエステならではの小イワシや、その日届いた海の幸が並ぶ。中でも注目したいのは、Sardoni in Savor(サルドーニ・イン・サヴォール)と呼ばれる小イワシ料理。この料理は日本でいう、ちょうどイワシの南蛮漬けのイタリアンヴァージョン。トリエステからヴェネツィア周辺の北アドリア海沿岸地方の料理。北アドリア海の特産である小ぶりのイワシを揚げて、玉ねぎとともにオリーブオイルと白ワイン酢につけたもの。酸味が少し強めの白ワイン酢がキリッと効いている。他には小イワシのマリネや小エビなど、海から揚げられたばかりのぷりぷりの魚介類が盛り付けられる。

 

●魚介類の出汁が決めてのパスタ

前菜とメインディッシュの間には、パスタやリゾットを楽しむのがイタリア流。このレストランではパスタ料理が人気で、その中でも小イカや海老のパスタは絶品。小イカの内臓部分から出た出汁がパスタの奥までしっかりと浸透していて、イカの姿を食べなくてもパスタだけで香ばしい味わいが楽しめるほど。海老のパスタは、海老の頭や殻から出た出汁がパスタに浸透している。そこに春のアスパラが絡むと一気に春らしい爽やかな一品になる。

 

●手長海老が届けてくれる幸せ

メインディッシュには、ぜひ獲れたての新鮮な海の幸を。ここCittà di Chersoでは、その日に届いた新鮮な魚を見せてくれる。まだ生き生きと輝く魚の目が光っている。大きな魚であれば、丸焼きしてもらう。魚の気分でなければ、ぜひ試していただきたいのは、やはり手長海老。これもアドリア海の名産で、もはやここでの人生は手長海老なくして語れないほどの美味しさ。手長海老は生のままでいただかないのであれば、グリルが一番。香ばしく焼き上げられた手長海老が、幸せとともにテーブルに届く。

 

●美食は上質なワインとともに

この地方は、ワイン通に注目される隠れたワインの産地。トリエステから1時間ほど車を走らせたワイン村Collio(コッリオ)。海の食文化と内陸の食文化が融合した地域のため、赤、白ともに、表情豊かなワインが生産される。繊細な海の幸のそばには、味覚を壊さずに豊かに広がる上質なワインがほしい。シェフとワインに秘められた魔力で、目を瞑るとChersoの海が目の前に広がる夢心地になる。

 

ライター  /Mao Gasperini

イタリア、トリエステ市在住。2010年より5年間、トルコのイスタンブールでベリーダンサーとして活動。2015年にイタリア、トリエステへ移住。イタリアの食に魅了されて、食べ歩き、料理研究の毎日を過ごす。