前回、このコラムでかき氷の第三世代ブームについて書いた。書いた後、コーヒーも第三世代の波が来ていることを思い出した。 コーヒーは1970年代までの、“ヨーロッパやアラブのコーヒー文化を、アメリカの大量消費が覆した”時代が第一波、“シアトル系スターバックスの登場”が第二波、そして昨今のサードウェーブは、“ワインのような品種へのこだわりや、ソムリエのようなティスティング”を楽しむ、コーヒー通のバリスタ化だ。 ハワイのローカルコーヒーも 第三のファインウェーブが来ている そして実はハワイにも、ハワイだけのコーヒー第三の波が来ているように思う。しかも我らがハワイの波は、大量消費や通ぶったこだわり消費としてではなく、誇り高き作り手、コーヒー生産地としての新世代ファインウェーブだ。 ハワイ州はアメリカ合衆国において唯一、コーヒーの商業的な生産が可能な州なのである。 そのハワイにコーヒーが伝わったのは19世紀、1840年頃にはカメハメハ大王の船がブラジルに寄り、アラビカ種の木を持ち帰ってハワイ島のコナに植えたという。 マウイやカウアイ島でもコーヒーの栽培をしたが、害虫の影響や、サトウキビ栽培に人手を取られて衰退するが、コナの自然環境はコーヒーに適していた。 『トムソーヤの冒険』で知られるマーク・トゥエインは当時、『ハワイからの手紙』の著書でコナコーヒーを大絶賛している。この1800年代が、第一次ハワイコーヒー黎明期だ。 しかし第二波は嵐の荒波。コーヒー市場の高騰で、欧米の投資家からコナ農園に追い風が吹いたかと思うと、砂糖やパイナップルの生産に人手を奪われて弱体化。第一次世界大戦や大恐慌など、時代の波に飲み込まれたり。それでもコーヒー栽培を続けたのは日系移民達だった。彼らは辛い太平洋戦争も乗り越え、コーヒーの木を守り通した。 そして2000年、ハワイ州はコナコーヒーを保護推進する法令を施行し、ブランド化をバックアップ。一時は1200エーカーまで落ち込んだ畑も、3000エーカーに回復した。第三波の到来だ。
オアフ島やカウアイ島、モロカイ島やマウイ島でもコーヒー栽培が徐々に広まっている。若い生産者がその土地柄を生かした個性的な豆を栽培するようになり、それぞれの島で名産のコーヒーが生まれている。 クレバーコーヒードリッパーで、 マウイモカを淹れる幸せ! 私はコーヒーの銘柄や味わいに疎く、淹れ方も下手だ。友人に、酸味のあるコーヒーが苦手だと話すと、「80度くらいの湯で淹れると酸味が抑えられるよ」とか、「マノアのモーニンググラスは、スタバ創成期の一人がやっている店。ここのドリッパーが秀逸で、あれで淹れると誰でもバリスタの腕前になれる」とか、いつも助言が頼り。 さっそく“クレバーコーヒードリッパー”というベタなシロモノを入手した。底の穴が塞がれるようになっていて、湯の注ぎ方を気にしなくても、湯が滞留して、コーヒーを難なく抽出できるようになっているのだ。 これが超便利、ストレスフリーで必ず及第点以上のおいしさが味わえる。 しかも最近ホールフーズで、超小粒のコーヒー豆を見つけた。普通のコーヒー豆の半分にも満たないサイズだ。 珍しいので買ってみたら大当たり! 香り高くて、飲み口はするりとしたのど越しで、後から甘みのあるコクとまろやかな苦味を感じて、おいしい〜。 イエメン・モカマタリがコスタリカ経由で、はるばるマウイ島カアナパリに根付いて栽培されているという。 世界の流通は希少なんだというけれど、ローカルのよしみで飲める幸せ、生産者さんありがとう!
奥山 夏実 おくやまなつみ ライター
『クロワッサン』の特約記者を25年続け、2017年ハワイに移住。近著に『ココナッツオイルバイブル1,2』、『HAWAII住むように暮らす』(ホノルルの博文堂でも発売中)など。