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Study in Hawaii|ハワイで学ぶ vol.1 -ハワイと日本の教育の違い-

Study in Hawaii|ハワイで学ぶ

Vol.1 ハワイと日本の教育の違い

 

家庭教育でも、親は子どもの意思を尊重

 

「ハワイを含むアメリカの教育と日本の教育の一番の違いは“個”を生かすか否かです。日本の場合は全体主義で、皆と同じことができるようになることを目標として、協調性 を大切にします。授業は先生が絶対的な存在で、生徒は従うべき存在、師弟関係です。でもアメリカは真逆です。定義された問題の答えはいつでも1つではなく、疑い、あるいは検証する眼を養います。そしてどれだけ個々があらゆる視点から意見を主張し、また周り をいかに説得できるかなどの能力が試される機会が与えられます」  

 

人と違うユニークな意見を言ったり、自分らしい思考力を発揮したり、いかに授業に貢献できるかが求められる。 「先生とは対等に、双方向で質問や考えを交わしあいます。小学生でも大学のゼミのような授業風景です。静かに先生の話しを聞いているだけの子は、日本ではいい子でも、アメリカでは主体性のない“できない子”になってしまいます」  それはアメリカの学校教育の目標が、“自主性を向上させ てポジティブな自尊心を養い、自立した大人になる”ことだ からとウガイさん。そのために家庭での教育も、親は子ども がまだ小さい時から、「何がしたい?」と子どもが主体的に考 えて行動できるように、いつも問いかけてコミュニケーショ ンを図る。

 

「何がしたい?」と問いかけて「外で遊びたい」と子どもが答 えれば、さらに「何して遊びたい?」と、思考を具体的に深め るように問いかける。 「なぜ、そう思うの?」と問いかけて答えることで、子ども自 身も自らの力で思考し、判断し、行動する習慣が身について いくのだ。

「そうすると学校の授業でも、「私はこう思う、なぜなら◯× ◯×だから」と、論理的な自己主張ができるようになりま す。何かをやめたいと言い出した時にも、親は子どもにやめ たい理由をきっちり聞きます。理解できる理由なら、親の本 心はやめさせたくはなくても、子どもの意思を尊重するん です」  

 

子どもは自問自答を重ねる中で、焦点が常に自分に当た り、自分のことをよく知り、他人の目を気にすることなく、 自分がやりたいことや得意なことが見つかりやすくなる。 そしてスキルも伸ばせるようになるという。

 

18歳で自立できるよう、お金の教育も

 

「アメリカの親は子離れが早いですよ。18歳を自立と考え ているから、大学の学費は自分で工面するよう、お金の教育 も早くからします」  

 

ハワイでもスーパーの店頭などで、寄付金や運営資金を 集めるために、小さな子どもがレモネードやクッキーなど を売っている。カーウォッシュのプラカードを持って週末、 びしょ濡れになりながら楽しそうに働いている子どもたち の光景も普通だ。「日本ではお小遣いやお年玉をもらうのが当たり前ですが、 それは消費のための一方通行の金銭授与じゃないですか。 アメリカではお金による売買は、レモネード作りや売ること の価値の交換であることをまず学びます。僕は小学4年か らオハイオに住んでいたのですが、一軒家の家の前の道路 には、番地がペイントされていたんですね。でも消えかかっ ている家もあって、お小遣い稼ぎのために、「ペイントさせ てください」って、一軒一軒回ってセールスしたことがあり ます(笑)」  

 

飛び込みの訪問販売は、セールスの中で最もキビシイ営業手法であるというのに! なんと果敢なウガイ少年!! 「学校でも中学生くらいになると、どんな仕事をしてみたい か書き出し、仕事の種類別の収入を調べる授業などを行い ます。マイホームを買うローンの試算や、 医療費のことなど も学びます。授業の単位の中にボランティアや社会活動が 含まれていて、それらの成績も大学入試の判断材料になる のです」

 

自主性を身につけ、社会生活が営めるよう自己管理法を 学ぶわけだ。 「親も自分の仕事や会社のことを話し、給料や家計がどんな 風に回っているかを話します。アメリカでは借金をして大 学に行く学生も少なくありませんが、高い学費の大学に 行ってどんな仕事に就けばリターンできるのか、真剣にシ ミュレーションして、自己投資に値するかを検討します」  

 

そこまでシビアだったら社会で成功できる人材になるこ とをめざして、おのずと大学の学業も一生懸命に取り組む ようになれる。 「アメリカの教育がすべて優れているわけではないと思う けど、国際的な人間関係の中で生活したいのなら、しっかり 自分を持つことができる、“個を伸ばす教育”は有効だと思 います」

 

ハワイでバイリンガルに育てるには?

 

日本語を母国語とする親が、我が子をハワイでバイリンガ ルに育てたいと願った場合、どんなことを心がけたら良い のだろうか? 「ハワイの日本人家庭は、日本から来たばかりで家族全員が 英語が苦手な家庭、ハワイで出産、子育てをしているので、 子どもは日本語より英語が得意な家庭などなどさまざまで す。まず、英語が苦手な一家なら、親も子も日本人同士でつ るまないよう、意識して英語環境の中で暮らすようにした いです。日本人の友達しかいない子ども、親も週末に日本人 家族とBBQしていたのでは、英語の上達は遅れます。ハワ イは日本人が多いから難しいですけどね(笑)」

 

英語ができなくて学力がなかなか伸びないという悩みも よく聞くけれど。 「安易に英語のせいにするのはよくありません。確かに英語 は苦手かもしれないけれど、宿 題やテストの日程などを把握 していないためにできないこ とが意外に多いんです」  

 

やるべきことを理解してい ないということ? 「そう、だから一週間のスケ ジュール帳を用意して、先生に 言われた宿題やテストの日程 などをメモする習慣を身につけるようにします。英語がよくわからないなら、先生にメモ したスケジュールで間違いがないか、確認してもらったら いい。そうして期日までに宿題をするなら、毎日どれくらい するとできるのかも考えて、1日ごとの計画も記載します」  

 

できたらマルとか好きなシールなどを貼って、成果も確 認できるようにする。 達成感も得られるから励みになる。 「プリントや宿題の管理が苦手な子も多いです。そのような 場合にはフォルダを用意して、科目ごとに色分けしたり、宿 題用のフォルダと提出用のフォルダ を仕分けしてあげると 改善するケースも多いです」  

 

どこでつまずいて学力が伸びないのか、親もじっくり話 を聞き、子どもの様子を観察してあげることが最も大切だ と、ウガイさん。 「自分を管理して遊びたい欲求を抑制するという、セルフコ ントロールの力が伸びると学力もグンと伸びます。ただ、今 の子どもたちはすごくセルフコントロールしにくい悪環境 にいることも事実です。学校によっては、教科書も資料も先 生からの連絡もすべてiPadの ところがあり、今後ますます 増えます」

 

宿題もオンラインで、ロ グインして宿題を解いた ら、それをタイプしてオン ラインで提出するという ほど、iPadなしでは授 業が成り立たないのだ。 「その同じiPad で、ゲームでも ユーチューブで もできるんです。 ワンタッチで誘惑の世界に行ける。これは子どもにとって 相当キツイですよ」

 

セルフコントロールしろというのが酷なほど。親から見て も、ipadで勉強しているのかか遊んでいるのかわからない。 「僕が親なら、色違いのiPadを2つ与えて、勉強用と遊び用 に分けるようにするかな。う~ん、難しいですね」  

 

IT社会が加速する中で、学校教育も様変わりしていく。 「アメリカに永住する人、将来帰国をするので日本の受験体 制を視野に入れたい人など、家庭の事情はさまざまです。ハ ワイでのバイリンガル教育に関しては、次の機会にも一緒 に考えたいと思います」  

 

 

読者の皆さん、お子さんについての教育の質問や悩みが ありましたら、編集部へお便りをください!

 

日刊サン編集部 [email protected]

(取材・文 奥山夏実)

 

監修:鵜飼高生

ウガイタカオ 大阪生まれ、東京育ち。小学生の時、ア メリカのオハイオ州で過ごす。明治大学理 工学部卒業後、再度渡米。ハワイ大学マノア 校にて博士号取得。現在は、『フォーカス教育 研究所』の代表取締役。“家庭教師”と“塾”両方 の利点を融合させた“家庭塾”メソッドを用い、ハ ワイ在住の多くの子ども達や家族のサポートに専心 している傍ら、建築士としても活躍している。