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ハワイでの終活vol.9; ハワイで介護を受けるための保険について

日本の厚生労働省のデータによると、日本人は平均寿命の10年ほど前から介護が徐々に必要になってくると報告されています。2019年最新の日本人の平均寿命は、男性81.25歳、女性は87.32歳。なので男性は70歳、女性は77歳を過ぎたあたりから、“何らかの介護が必要になる場合がある”と想定することができます。ストローク(脳卒中)や骨折など、シニアの体調はある日突然激変することも少なくありません。“介護”を他人事と思わず、早めの準備が必要です。メディケアはじめシニア保険全般のスペシャリストである横江和子さんと、メディケアコンサルタントの小林喜和子さんに、ハワイで介護を受けるための実情と保険”について、アドバイスしてもらいます。

 

70歳前後に日本への移住を考える実情とは?!

「私の顧客や友人の中には、70歳を過ぎたら日本に帰ることを真剣に考え始める人が実に多いです。ハワイに家族・親戚がいるアメリカ人の場合はそうでもないけど、シニアの日本人カップルの多くは、“帰国”を検討されています。やはりそれほど、ハワイの介護事情は日本人には厳しいです」。ネガティブな話しで始まってしまってごめんなさいねと、横江さんはすまなさそう。「ハワイのローカルの多くは、子どもや孫も合わせた2~3世帯住居に住み、ファミリーで介護をしているのが実情です。手が足りない時だけホームケア(自宅介護)を依頼する。共働きで介護ができない場合はデイケアに預けたりもしますが、デイケアは一日80ドルくらいかかるから、経済的に余裕がないと大変です」

ところが日本人同士の夫婦の場合、子どもがいなかったり、子どもがいてもメインランドで就職していて、介護を子どもに頼ることができない孤立した高齢者が多い。「となると、介護制度がアメリカより安価で充実している日本に帰ろうか、ということになります」

 

 日本では65歳以上の国民は、住民票登録と健康保険を住まいのある市区役所で手続きすればその日から介護保険も加入でき、要支援・要介護の認定を受ければ介護保険サービスを利用できる。65歳以前でも特定疾病といわれる、認知症や末期ガン、脳血管疾病などの人も介護の対象者とされる。海外に住む人の場合、一番大きな問題が住宅の確保だ。住宅が確保できなければ、保険加入の前提となる住民登録ができない。日本では賃貸住宅を借りる場合、収入の証明ができない人はアパートを借りることすら困難で、収入が年金だけのシニアはより難しくなるのが通常だ。しかし、日米の介護状況に詳しい国際介護アナリストの横畠文美さんによると、「大きな資産を持っている方はもちろん、資産がない方でも、月々の家賃だけで入居できる介護施設が日本全国に多数あります」。介護を必要としない施設から、施設内で介護が受けられる介護付き有料老人ホームまで幅広い選択肢があるそうだ。

 

ただ、事前に健康面や収入面、身元引受人がいるかどうかの審査がある。ハワイに住みながら日本の帰国後の移住先を決めるのは、元気なうちに準備に取りかかり、自分に合いそうな施設を実際に下見し、運営者にも会うのが良いだろう。介護のために日本への帰国・移住を考えているハワイにお住まいの方は、日本で介護施設を運営する関連会社を持つジャパンメモリアルコーポレーション(電話 808-737-3405)が無料で相談に乗ってくれる。国に登録している介護施設であれば日本全国どこでも紹介してもらえる。

 

《ここがポイント!》

ハワイで介護してもらえる家族がいるかどうかが日本への帰国移住の判断基準に!

 

 

現在の長期介護保険は、生命保険に介護特約を付けるのが主流

長期介護保険(Long Term Care Insurance)は、民間の保険会社が提供している。しかし、掛け捨てタイプの保険は、保険料が固定されていないのがネックだった。横江さんによると、「現在は、生命保険に介護特約を付けるのが主流で、保険料は、年齢、性別、保障額や保障内容によって異なり、最終的な保険料の金額は、健康状態の審査が終了してから決まります。モデルケースですが、60歳女性の場合、保障内容は10万ドルで、年間保険料はおよそ2,500ドルです。掛け金は若い時に加入するほど安くてお得です。40代、50代で不動産を購入した場合に、ローン分の生命保険に加入する際に介護特約を付けることもお勧めです」。メディカルの査定は生命保険より長期介護の方が厳しいため、生命保険に加入できても長期介護特約には加入できないことがあるという。「血液検査や尿検査だけでなく、保険会社は主治医からメディカルレコードを入手します。女性の骨祖しょう症は加入が難しいです。車の違反レコードも保険会社は調べます。できるだけ若く、健康な体のうちに加入すると良いと思います」。

 

 ハワイの介護費用は年々高騰しているし、もし何も加入していなければ、今まで一生懸命貯めた貯蓄を使い果たし、不動産までも手放すなどという介護破産になりかねない。そんな自己負担を軽減するのが長期介護保険だ。「長期介護保険の給付金が支払われるのは、通常、下記の通りで、ドクターが判断します」。

①日常生活に必要な6つの基本動作(入浴、排泄のコントロール、着替え、食べる、トイレを使う、立ち上がって移動)のうち、2つ以上が90日以上、一人でできなくなった時。 ②認知障害のため、誰かが付き添っていないと、本人の安全が確保できない状態となった時。

「長期介護保険は通常、自宅介護の他に、ナーシングホーム、アシステッドリビング、アダルト・ディケアなどの費用をカバーします。アメリカの介護保険に加入する際、アメリカ国内でのみ使えるものか外国でも利用できるか確認しましょう」。

 

 長期介護保険の保障内容は、保険会社や保険商品によって大きく異なるので、横江さんのような専門家にサポートしてもらいながら、契約書の内容をよく検討して加入しよう。

 

【長期介護保険に加入する理由として】
•充実した治療を心おきなく受けたい。
•メディケアではカバーされない生活面の介護に備える。
•長期介護保険を持っていると心の平和をもたらし、安心して生活ができる。
•今まで築いた財産を減らさず、家族へ残したい。
•介護費用は経済的にも精神的にも大きな負担となるので、配偶者や子ども達に迷惑をかけたくない。
•メディケイドは財産所有に関する条件が厳しいため、そこまでしたくない。

【長期介護保険の保障内容】
•自宅介護 •老人ホーム
•介護施設 •長期療養施設 •デイケアセンター

【給付金受け取り方法】
  加入するときに選択する。
•実損払い(実費がカバーされるタイプ)
•定額払い

【 カバレッジの選び方】
•毎日或いは毎月の給付額
•給付を受ける際の待機期間
•給付期間
•どのような特約を加えるか(インフレーションなど)

 

《ここがポイント!》

長期介護保険はメディカルチェックが厳しいので、健康なうちに加入を!

 

メディケアは65歳から。毎年の見直しがお金の節約に

アメリカでは65歳からメディケア(高齢者医療健康保険)に加入できます。メディケアコンサルタントの小林喜和子さんは、「65歳になる方は、65歳の誕生日月と前後の3か月の合計7か月の間に加入手続きを行います」。 例えば、誕生日月が7月の場合、4月1日から10月31日の間にソーシャルセキュリティーオフィスで申請する。「対象となるのは、シチズンもしくはグリーンカード所有者でソーシャルセキュリティーを10年間(四半期を1クレジットとして合計40クレジット)払った方が加入できます」。「65歳以降も職場の保険に加入している方は、退職後8ヶ月以内は申請可能です。このタイミングを逃した人は、毎年1月1日~3月31日のジェネラルエンロールメントピリオドに申請できますが、保険の適用は7月1日からになります。また、遅延加入罰金が発生するので注意してください」。 メディケアはあくまでシニアの医療保険で、生活面の介護やホームケア、デイケアなどの長期介護は一切カバーされない。

 

「また低所得者、特に妊婦、子ども、65歳以下の障害者等が利用できるメディケイド(Medicaid)もあります。メディケイドは介護費用をカバーしますが、医師によるアレンジが必要です。64歳までは、若年層の低所得者を対象としたクエスト(Quest)というプログラムもあります。低額所得者向けということで、日本人は申請したがらない傾向にありますが、長年アメリカに納税してきた権利なのですから、受給申請してみることもお勧めします。ただ収入・所得が一定以下でなくてはならず、資格条件もしょっちゅう変わるので、詳しくはお問い合わせください」。

 

【メディケアの登録期間】
初めてのメディケア申請: イニシャルカバレッジエンロールメントピリオド 65歳になる誕生日付き+前後の3か月

毎年のメディケア申請: アニュアルエンロールメントピリオド 10/15~12/7 申請したプランの変更: オープンエンロールメントピリオド  1/1~3/31

【メディケアの種類】
 メディケアは、保険料金が無料のパートA、それに組み合わせる形で有料のB~Dがある。「提供されるプランは民間の保険会社ごとに様々なプランがあります。自分に合ったものを一人で探すのはとても大変。だからこそ、コンサルタントと相談しながら、毎年見直していくことが重要なことだと思います」。

 

■パートA (入院費用)

• 病院での入院
• 高度看護施設でのケア(リハビリ等)  • ホスピスケア
• 在宅ケア

■パートB (外来費用)

医師やその他の医療関係者による医療行為 • 外来サービス
• 在宅治療
• 医療器具
• 予防サービス

■パートC( メディケア・アドバンテージ)
• パートAとBを補う保障
• 通常パートDも含まれる
• HMSA, Humana, UnitedHealthcare,Kaiserなど、民間の保険会社によっ
て提供されている
• 追加サービスが含まれていることも(歯科、鍼療法、補聴器等)

■パートD (処方せん薬)
• 処方せん薬代をカバー
• 民間の保険会社によって提供されている
• 処方せん薬代のコストを下げる
*AとBに加入したら必ず加入が必要

 

《ここがポイント!》

保険料が高額にならないよう、加入内容は毎年見直そう!

 

(取材・文 奥山夏実)

この記事は2019年8月時点の情報に基づいて記載しています。

 

 

【連絡先一覧】

■横江和子
東京都出身。アメリカ本土5年、ハワイ40年在住し、アメリカのメディケアに
精通。介護の経験から保険のライセンスを取得。毎年変わる複雑なシニア健
康保険の内容を、日本語で説明・サポートできる希少な専門家。アメリカの生
命保険、長期介護保険、年金を扱うコンサルタントでもある。
連絡先 808-225-9555 [email protected]

 

■小林喜和子
山梨県出身。ハワイに移住し41年。2005年にメディケアアドバンテージコ
ンサルタントのライセンスを取得。現在、メディケアプロバイダー5社を取り
扱う公認エージェント。
連絡先 808-551-6960 [email protected]