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ハワイでの終活vol.12  ハワイで適切な介護を受けるために

 日本同様アメリカで最も急増している年齢層は、85歳以上の高齢者です。そしてアメリカの中で特に高齢者の人口が多いのはハワイ州です。

 豊かな自然と温暖な気候に恵まれ、長寿を全うできることは喜ばしい限りですが、介護が必要となる時が来る人も少なくありません。

 ハワイでの介護事情はローカルの場合、家族や親族が多いので「お年寄りは身内でケアする」ことが多いのですが、ハワイに移住してきた日本人の場合、少子化の影響や「子ども世代は独立するとメインランドや日本で仕事をする」、など核家族化していきます。

 この終活特集では以前、日本での介護を紹介したことがあります(https://archive.nikkansan.net/shukatsu/adult-care-in-japan/をご覧ください)。

 今回はハワイで適切な介護サービスを受けるために、ぜひ知っておきたいことを紹介します。

 お話しをしてくださったのは、フルカワシニアケアのグレン・フルカワ代表です。

 

 フルカワ氏自身、20年前に90歳代の祖父と、80歳代の祖母に介護が必要になり、ケアしてくれる人や施設を探しても見つからなかった体験が、シニアケアの仕事を始めるきっかけとなったそうです。

「まず、介護のお話しをする前に、元気なシニアの皆さんに提案させてください。ハワイはいろんなところにシニアセンターがあり、無料で参加できるプログラムもたくさんあります。介護が必要となる前、元気なうちからシニアセンターを利用して、軽い運動プログラムに参加する、そこで出会う人と社交性を保つなど前向きな生活を心がけてほしいです」

 日本には“生活不活発病”という病名がある。生活が不活発になった、つまり動かないことが原因で、頭や体の機能が低下して衰えてしまうことだ。

 生活不活発病が要介護の原因になり、認知症なども悪化させてしまう。

「体によいものを食べる、ポジティブに考える、軽めのエクササイズをする、そして積極的に外に出て、人や社会とコミュニケーションすることが介護予防、Care prevention に役立ちますから」

 

 

ハワイで介護認定を行うのは医師です

 

 高齢者福祉がハワイより充実している日本では、介護サービスを受けるために介護認定を行うのは、住んでいる市町村の福祉課の調査員からです。指定した日時にわざわざ自宅にまで来てくれたりします。

 では、ハワイで介護認定をするのは誰??? 実は医師なのです。

「介護認定をするのは医師だということを知らない人が意外に多い。親や伴侶にそろそろ介護が必要だと感じた時、まずはかかりつけのホームドクターかナースに連絡をします。入院している場合は、そこの担当医に相談するといいでしょう。また老人医療専門のGeriatricsのドクターやナースもいるので、認知症などの疑いがある場合はGeriatricsを紹介してもらうと良いです」

 医師は要介護度Level of careをさまざまな角度から診察する。健康状態、持病、投薬のニーズ、精神状態、認知症の有無、現在の生活状況などをチェックしながら介護や看護が必要か否かをLevel of careするわけです。

 レベルは以下の4段階に分けることができる。また、介護や看護が必要と認定された場合、メディケアでは費用の一部がカバーされる。

 

 

 

Level of care

自立レベル/Independent

 シニアの方ご自身の力で判断したり、食事をとったり、健康に気を使ったり、日々の生活を営んだりできている状態。介護も看護も当面必要ないが、自宅をバリアフリーに改装するなど、安全の確保を。

 またシニアセンターなどを利用して、心と体の健康の維持、Care preventionに努めましょう。

 

要介護レベル/Care Home Level

 入浴やトイレ、身づくろい、薬の服用、ベッドの乗降など、日常生活を送る上で介護支援が必要な状態。また判断力や記憶の衰えなど、認知症による介護支援が必要な状態。

 自宅にヘルパーを派遣してもらったり、デイケア施設に通って支援を受ける。

ヘルパー派遣は1時間25ドル平均。ちなみにフルカワシニアケアのデイケアは7am~5pmまでで1日75ドル。日本語スタッフがいて、和食ランチなども提供される。

 

要看護レベル/Intermediate Care Facility(ICF

 生活支援の介護だけではなく、ナースによる看護が必要になり始めた状態。自宅にナースを派遣してもらったり、デイケアに通うならナースがいるデイヘルスケア施設や、居住型ケアホームへの入居などを検討。平均1日100ドル、ナースがいるハワイの平均的なケアホームは月5,000〜8,000ドル。

 

高度看護レベル/Skilled Nursing Facility(SNF

 寝たきりに近い状態で、24 時間の介護体制が必要、もしくは継続した看護体制が必要なレベル。

 自宅で看護できない場合は、フォスターケアホーム(月平均4,000〜5,000ドル)やナーシングホームへの入居を検討する。24時間看護の場合月6,000〜10,000ドル、もしくはそれ以上。

 

 

 

認知症は、軽度のうちに早期発見が効果的

 

「最近忘れっぽくなった……」が、単なる物忘れなのか認知症なのか? 気にはなるけど医療機関を受診する人が非常に少ないことが、Dementia認知症の専門家たちの悩みです。「なぜ、もっと早くに受診してくれなかったのか」。

 認知症とは、脳の細胞が変化して萎縮し、老化よりも早く脳細胞が消失する状態のことです。アルツハイマー型認知症などは脳の中の海馬(かいば)の細胞が減りやすい。経過観察で半年で30〜50cc近く細胞が減ってしまうのなら、明らかな認知症。

 それを早く発見できたなら、抗認知症薬を服用して進行を遅らせることができます。

 

 認知症の主な症状は下記の3つ。

記憶障害:記憶が薄れたり抜け落ちる。

見当識障害:自分が置かれている状況(時間、場所、理由)が分からなくなる。

言語障害:言葉がうまく発せられなくなったり、理解できなくなる。

 認知症の医療機関に行けば、脳のMRI 画像や、神経心理検査などでかなり早い段階から発見することができます。

フルカワ氏によると、ハワイでDementiaの進行度合いは3レベルに分類されているとのこと。

「名前は分かるけれどどこで知り合ったのか覚えていないというような、軽度の人はMild、名前が思い出せない、どこで会ったか覚えていないなどはModerateで、介護が必要になってきます。もっと進行して会話がとても限定的、もしくは混乱しているような状態はSevere、全て看護しなければなりません。いずれにせよ認知症は進行するので、定期的な検査が必要です」

 介護が必要な人も、定期的な検査を受けて、レベルの認定Determinationと評価Evaluationをしながら、その人の現状に最もふさわしいケアを受けるようにしたいものです。               

 

(取材・文 奥山夏実)