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ご主人は日本の会社に5年勤務ののち渡米。アメリカでの勤務経験は既に22年あり、今後も米国で働く予定です。もしご主人が先に死亡した場合、配偶者に日本から遺族年金が支給されるのでしょうか? というご質問です。  

 

平均寿命は日本では2015年男80.79歳女87.05歳と男女間で6歳の開きがあります。米国では2013年男76.4歳、女81.2歳と5歳の開きがあります。高齢化を背景に、老後に関心を持つのは当然のことですね。  

奥さまの場合は、これから説明します3つの要件を満たせば遺族厚生年金が支給されます。

 

(1)ご主人の要件、①から④のいずれかに該当していたことが必要です。

①死亡日に厚生年金の加入者であった(被保険者)人

②加入者であった間に初診日のあるケガや病気で初診日から5年以内に死亡した人

③障害厚生年金の障害等級1・2級の受給権者

④老齢厚生年金の受給権者又は老齢厚生年金の受給資格期間を満たして死亡した人  

 

以上の4つの要件をご主人に当てはめて考えてみます。 ①ご主人は、渡米後は厚生年金に未加入なので当該要件には該当しないと思われがちですが、実は日米社会保障協定により、ご主人が米国年金加入中に死亡された場合は一定の条件を満たせば日本の年金制度に加入していたものとみなされ該当することになります。これは非常に重要なポイントですね。

②①で説明した通り、米国年金の加入期間中は条件を満たせば日本の年金制度に加入していたとみなされますので、初診日の記録を書面で残しておくことは重要です。

③記載の通りです。

④現在厚生年金を受給するための資格期間は25年以上から10年以上に短縮されました。ただし、遺族年金を受給するための資格期間は従来どおり25年が必要です。一方米国にお住まいの方の場合は受給資格の算定上「日本の年金加入期間」+「カラ期間」+「米国年金加入期間」を合算(重複期間はいずれかを選択)して25年以上あれば資格期間を満たすことができます。ですから多くの方が日本の年金の受給資格を取得することができるわけです。  

このことは、④の要件に適合する方が多くいらっしゃるはずです。亡くなったご主人の日本での年金加入が少ない期間の場合でも、米国年金やカラ期間を加算すれば遺族年金を受給できるケースがありますので、ぜひ見直されてはいかがかと思います。

 

(2)保険料納付要件 死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までの保険料を納付すべき期間のうち、保険料納付期間と保険料免除期間を足したものが、全体の2/3以上あること。

 

(3)遺族の要件 ご主人に生計を維持されていた妻と子供が第1位で受給できます。妻の場合は、①再婚した時②死亡した時③直系毛血族および直系姻族以外の人の養子となった時は受給できなくなります。子供の場合は18歳に到達した年度の末日までの子で、結婚していなことが必要です。

 

(日刊サン 2017. 9. 23)

 

市川俊治

民間企業勤務後、外務省改革の一環として始まった領事シニアボランティア制度の第1期生としてNY更にSF総領事館に合計6年間勤務。その官と民の経験・知識を基に海外在住者の年金・国籍・老後の日本帰国の問題のアドバイスを行っている。

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