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米国に居住し日本の老齢厚生年金・老齢基礎年金を受給している方の所得税は、日米租税条約により居住国である米国で納付することになります。年金が日本の銀行口座に振り込まれていれも、米国に住んでいる限り米国でIncome Taxの対象となります。日本の年金額をアメリカで申告する際、Form 1040, Line 21, Other incomeの欄に報告します。ここで注意すべきことは、二重課税を避ける為の事前の対応が必要であるということです。

つまり米国で申告する必要があるのに、日本で所得税を源泉されてしまうわけで、二重課税を避けるためには、次の書類を年金請求書類に加えて日本年金機構に提出することになります。

 

1.「租税条約に関する届出書」等の書類  

①税条約に関する届出書 ②特典条項に関する付表 ③居住者証明書(U.S. Residency Certification、IRS発行Form 6166)の3種類です。  

すでに年金を受給されている方は、居住者証明書をIRSに申請して提出されたご記憶があると思います。居住者証明書はIRSのForm8802(IRSのHPから入手可能)に必要事項を記入して申請します。

 

2.書類の提出時期  これらの①~③の書類は、日本の老齢厚生年金・老齢基礎年金を請求するとき、及びその後3年ごとに日本年金機構へ提出することになります。

 

3.書類の提出を省略ができる場合がありますのでご注意ください。年金額が、源泉所得税を徴収されない以下の金額の方については提出を省略できます。  

(1)65歳未満の方…年額72万円未満 

(2)65歳以上の方…年額120万円未満(老齢厚生年金・老齢基礎年金合計)  

年金を受給している方については、3年ごとに日本年金機構から書類提出のお知らせが届きますが、年金額がこの基準以下であれば、源泉徴収はされませんので、提出の必要はありません。この省略によりForm6166の作成費用$85と手続きの手間が節約になります。省略に該当される場合は、“年金額が源泉徴収対象額以下なので、租税条約に関する届出書等は提出しません”と言う趣旨の手紙(申立書)を添えて、日本年金機構に返却してください。

 

4.その他、①遺族年金・障害年金は非課税ですので、租税条約の手続きは不要です。  

②米国の遺族年金は非課税扱いではありませんのでご注意下さい。  

③課税控除額は日本と海外の居住者間では基準が異なります。日本居住者には38万円の基礎控除が加算されますので年金額が120万円ではなく、158万円未満の方が源泉税の非適用となります。

 

 

(日刊サン 2017.7.22)

 

市川俊治

民間企業勤務後、外務省改革の一環として始まった領事シニアボランティア制度の第1期生としてNY更にSF総領事館に合計6年間勤務。その官と民の経験・知識を基に海外在住者の年金・国籍・老後の日本帰国の問題のアドバイスを行っている。

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