日刊サンWEB

過去記事サイト

ハワイ建築許可申請の最近の変化(1)

 

近年、建築許可申請にかかる時間は膨大で、問題視されてきました。昨年度には特に大きく取り上げられ注目を浴びました。以前にもコラムで書いたことがありますが、小規模な改築・増築で半年~9カ月、新築であれば2年近くかかるケースも稀ではありません。昨年は、すべての認可関連に本当に時間がかかり、そのせいでたくさんの工務店が縮小、もしくは廃業にまで追いやられてしまいました。その影響で役所もいくつかの変更をすることが決定されました。

 

2カ月未満でレビューをしてもらえることが可能に

社会問題にまでなってしまったこの問題を議会は重く受け取り、Department of Planning & Permitting(以後DPP・日本でいう国土交通省のようなもの)に一世帯及び二世帯住宅については2カ月以内にレビューをするように指令を出しました。2カ月で認可がおりるわけではなく、1回目のレビューが終わるという意味です。どのプロジェクトも何らかのコメント、主に法規に沿っているという証明をさせられるため、このやりとりを何度かします。 ただ、今まではこの1回目のレビューをしてもらえるまで6カ月以上かかっていたケースも多かったため、目覚しい改善だと思います。

 

設計者への負担も増大

建築許可申請に時間がかかる要因として、DPPは建築士及びエンジニアが完成した図面を提出しておらず、あと何を付け加えれば認可がおりるのかというチェック機構代わりにDPPを利用している人が多いと主張しておりました。実際そういったところもあると思います。そのため、DPPは2カ月以内にレビューをする代わりに、レビューが3回必要になった時点でパーミットは棄却されるそうです。また、2つパーミットが棄却された建築士は以後1年間、この2カ月未満でレビューを受けるための認可申請ができないという罰則が課せられます

建築基準法にはグレーな部分が多く、人によって解釈の仕方が違うというものが少なからずあります。こういったケースで何度かやりとりをせざるを得なくなった際にパーミットが棄却される可能性があるというのはまた別のリスクが増えてしまい、今回の変更も良いことづくめというわけにはいかなくなりました。ただ、一軒家のシンプルな増改築であれば、明確なケースがほとんどですので特に問題はなくスムーズに事は進むかと思います。

 

コラム筆者:鵜飼 高生 Takao Ugai

建築士・AIA・LEED AP・博士(建築)  Focus Design Studio 代表取締役

明治大学建築学科卒業後、ハワイ大学マノア校で建築の博士号を取得。日米両国での建築設計実務経験がある、経験豊富なハワイ州登録建築士。

Email: [email protected]

(日刊サン 2019.01.25)