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ハワイのコンドミニアムが高い理由

今回は、いつもと少し趣向を変えて、建築士の視点からハワイの不動産についてお話させて頂きます。米国の中でもトップクラスに高いハワイの不動産ですが、それには様々な理由が考えられます。

 

世界中がマーケット

近年、カカアコエリアを中心に高級~超高級コンドミニアムが乱立しています。その購入価格は、全米平均から見てもかなり高めなわりに、ハワイ州の平均年収は決して高くありません。全50州の中では、ほぼ真ん中あたりに位置しています。加えて、他の州と比較して光熱費や物価が高いことを考慮すると、かなり低いことになります。それでも、新しい物件が出る度に売り切れるのは、世界中の投資家がこぞって購入するためです。売れる→需要が高まる→供給が足りなくなる→価格が上がるといった流れですね。

 

土地が非常に限られている

ハワイ州は発展には非常に保守的で、自然溢れるところは自然のままにしようといった考えが根付いています。ただでさえ、ハワイは小さな島々で成っていて土地が少ない上に、その中でも高層コンドミニアムを建てることが許可されているエリアはほんの一握りです。ゾーニングによって、土地の用途や制限が明確に区別されているため、許可されているエリアの発展は目覚しく進んでいきます。それでも、絶対数が足りないので、その他の市外の不動産価格も、比例して徐々に上がってしまうのです。

 

訴訟リスクが建築コストを上げている

コンドミニアムというのはLease Hold(借地権)のものを除き、一つの建物を多数の人が共有しているという概念で成り立っています。つまり、共有部分については全員がオーナーということになります。オーナーということは、全員がそれぞれ建物に対して訴訟を起こす権利があります。

では、何について訴訟するのかというと、建物の瑕疵(欠陥)です。欠陥建築であればもちろん訴訟して当たり前なのですが、今の規定では工務店や建築士等の関係者は完成後約15年間責任を負うことになっています。それだけ期間がたつと経年劣化であったり、使用法が間違っていたりと様々な他の要因も関わってくるので双方ともに立証は難しいのですが、高層コンドミニアムはすべて、専門の弁護士が業者を相手に訴えを起こしています。そのため、新築コンドミニアムの計画時から、それぞれの関係者が訴訟リスクを考え、弁護士費用等を個々に上乗せしてしているのが現状です。これもまた、コンドミニアム価格高騰の一因であると言えるでしょう。

 

 

鵜飼 高生 Takao Ugai 建築士・AIA・LEED AP・博士(建築)・家庭塾長 Focus Labo LLC 代表取締役

Email: [email protected]

明治大学建築学科卒業後、ハワイ大学マノア校で建築の博士号を取得。日米両国での建築設計実務経験がある、経験豊富なハワイ州登録建築士。