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天井について(2)

 

空間の質を決定づける大きな要素の一つに「天井」があります。基本的に、天井は人が触れることがなく強度も意識する必要がないため、デザインの上で、最も自由度が高い部分とも言えます。前回は、天井の高さによって、人が受ける印象がいかに変わるかというお話をしました。今回は、照明と材質についてお話したいと思います。

 

 

間接照明を設置する絶好の場所

お洒落で落ち着ついた空間を演出するために、間接照明がよく採用されます。天井に窪みを作り、そこに照明を設置すれば、照明器具自体の姿は隠しつつ、天井全体を照らすことができます。点光源ではなく面光源なので、眩しさも和らぎ、テレビやパソコンのモニター等への反射も弱まります。

また、間接照明の柔らかい光には、リラックス効果もあるのでおすすめです。ただ、場合によっては、どうしても光量が足りないこともあり、例えば読書をする際には別途スタンドライトを用意した方が読みやすく、また目にも優しいでしょう。

 

音を吸収させる

硬いものは音を反射し、柔らかいものは吸収します。硬いものばかりに囲まれると、音が反響してしまい、少しの物音も大きく聞こえてしまいます。床をカーペットにすると、音が吸収されるので良いのですが、好みや機能性の問題でできない場合も多いと思います。壁に柔らかい素材を施すこともできますが、コストもかかりますし、何より耐久性に劣ります。そこで、天井を柔らかい素材にし、吸音性能を飛躍的に向上することができるのです。

天井は、前述の通り耐久性を考慮する必要もないので、吸音加工には最適です。現に、オフィス等でよくあるタイル状の天井は吸音材でできており、とても軽くて柔らかい素材です。コンサートホールのように、音をわざと反響させるケースはありますが、一般的には吸音材がふんだんに使用されていても、不快になることはありません。

特に人が多く集まるような場所には、出来るだけ柔らかい素材を施し、必要以上の騒音を抑えれば、大変心地よい空間が生まれるでしょう。

普段あまり天井の素材について考えることは少ないかと思いますが、少し気にして上を見てみると、色々な工夫がされていることがわかりおもしろいかもしれませんね。

 

 

鵜飼 高生 Takao Ugai 建築士・AIA・LEED AP・博士(建築)・家庭塾長 Focus Labo LLC 代表取締役

Email: [email protected]

明治大学建築学科卒業後、ハワイ大学マノア校で建築の博士号を取得。日米両国での建築設計実務経験がある、経験豊富なハワイ州登録建築士。