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前回は商業施設のバリアフリーについてご紹介しました。米国は裁判大国であることも関係して非常に厳しく制定されています。バリアフリーでなければならないという法律はありませんが、万人が差別なくサービスを受けることができなければならないという決まりはありますので、実質法律で定められているようなものですね。一般住宅については、個人の自由となり何ら決まりはありません。今回は、バリアフリーの住宅を建てる(改築する)際に注意した方が良い点をいくつかごご紹介します。

 

最も大変なのは段差  

バリアフリーの住宅に改築・新築する際に最もコストがかかるのがスロープです。特に50年ほど前の住宅は、高床式住宅であることが多く、玄関前に階段があります。それをなくしてスロープにするにはかなりのスペースが必要とされます。車椅子で自走できる勾配は最大1:12と言われており、1インチの段差を上がるのに1フィートの距離が必要になるということです。24インチ玄関が高くなっていると24フィートと、かなりの面積が必要だとお分かり頂けるでしょう。もし、どうしてもスペースがとれない場合にはエレベーターを設置することも可能です。

 

開口部及び周辺を広げる  

通常のドア、特にトイレのドアなどはとても狭いことが多いですね。しかし、車椅子で利用するには最低でも32インチ、出来れば36インチの開口を推奨します。毎日通る場所ですから、頻繁に壁にぶつかっていてはストレスになるかもしれません。また、計画時に忘れがちなのがドア周辺です。開き戸の場合、取っ手側に逃げるスペースがないと、ドアが車椅子にぶつかってしまい開けることができません(下図の左)。少しスペースを設けるだけで車椅子の利用者が心地よく行動できるスペースが増えるので工夫をしてみましょう。

 

シャワー・バスタブは専用品がある 

お風呂については、どの程度自力で動くことができるのかにより大きく変わってきます。捕まる場所があればシャワーを浴びることが可能な方ならば、手すりのみを設置できます。誰かに身体を洗ってもらう等、さらなる機能性が必要であれば、ドアがついていて段差をこえなくても入れるバスタブや、段差のないベンチ付シャワーなどにすることも出来ます。そういったところを工夫することで、介護者の負担も飛躍的に軽減することができます。

 

 

 

鵜飼 高生 Takao Ugai 建築士・AIA・LEED AP・博士(建築)・家庭塾長 Focus Labo LLC 代表取締役

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明治大学建築学科卒業後、ハワイ大学マノア校で建築の博士号を取得。日米両国での建築設計実務経験がある、経験豊富なハワイ州登録建築士。