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最近「工務店に騙された!」とのご相談を受けたので、そのようなことにならないよう今回は注意事項を書いていきたいと思います。異国の地で大金を積んで工事を依頼するというのは、非常に怖いことだと思います。また、風習や常識も異なるため、細心の注意が必要です。工務店の免許を確認する等、簡単にできることも多いですが、依頼主に落ち度があるために損をするケースが非常に多いので、しっかりと勉強してから挑むか、詳しい専門家に相談をすることを強くお勧めします。

 

口頭で工事依頼をするリスク  

ちょっとした工事や修復、リフォームは建築許可はいらない、建築士を雇う必要はない、とよく耳にするかと思いますが、厳密には$1,000以上の施工費がかかる場合には、例外なくすべて建築許可が必要となります。また、工務店の役割は、日本とは大きく異なります。日本ですと、改築やリフォームをする際、工務店に相談をしに行き、そこでデザインや材料の選定の打ち合わせをします。きちんと図面にして、工事内容に納得した上で施工依頼をするという流れになります。  

一方、米国の工務店は基本的に工事しかしません。図面は引いてもらえないため、直接工務店に駆け込むと口頭で工事内容を伝えることになります。そして見積書にサインをし、工事着工となるわけですが、口頭ですべてのことを伝えることは困難です。例えば、シャワールームのタイルが古臭いから新しくしたい思い、「タイルを張り替えてください」と伝えたとします。一見それで十分そうですが、はたしてどこまで双方同じ考えを持っているでしょうか。これでは、タイルの上から新たにタイルを張るのか、タイルを取り除いた場合、痛んだ石膏ボードは張り替えるのか、防水処理はどうするのか、どのようなタイルを張るのか等、一見単純に思える作業でも、たくさんの決定事項があります。実は、「工務店に騙された!」と相談をしにいらっしゃる方でこのようなケースはとても多いです。

 

最も大切なのは契約書  

とても月並みですが、建築工事の場合、契約書というのはとても広義になります。実は建築士の描く設計図というのは、施主と工務店の間の契約書として機能しています。工事内容についてすべて自分で説明し、文書にしてから契約書を作成するか、自信がなければきちんと建築士を雇い図面にしてもらう方が無難です。  

建築工事はとても大きなお金が動きます。コミュニケーション不足で工事をやり直すことになると、2倍・3倍とお金がかかることは珍しくありませんので、十分に気をつけて下さい。

 

 

 

鵜飼 高生 Takao Ugai 建築士・AIA・LEED AP・博士(建築)・家庭塾長 Focus Labo LLC 代表取締役

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明治大学建築学科卒業後、ハワイ大学マノア校で建築の博士号を取得。日米両国での建築設計実務経験がある、経験豊富なハワイ州登録建築士。