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ハワイには8つの特別区域(Special Districts)が制定されています。日本には存在しない概念で、馴染みもほとんどないと思いますので、複数回に渡っていくつかの特別区域についてご紹介します。

 

特別区域の目的  

特別区域は都市計画の一環です。利用者にとって快適かつ便利な街並みを推奨したり、歴史や文化を継承させたり、色やデザインについて制限をかけ、街全体に統一感を出したりすることで、街全体の価値をあげることを目的としています。  

この特別区域はこれらの内容を推奨するだけでなく、制限をする権限を持っているため、建物を新築・改築する際には、各特別区域を取りまとめている団体に許可を得なければならず、訂正を求められた場合には従う義務があります。

 

ワイキキ特別区域  

8つの特別区域のうちの一つがワイキキです。ワイキキのデザイン制限は多岐に渡っていますが、基本的にはリゾート地として観光客が快適に過ごせるように、また、ハワイアンなイメージを維持していけるように制定されています。  

例えば、ホテルのロビーは出来る限り外にオープンにし、エアコンは設置しないとか、オープンスペースにはハワイの植物(モンキーポッドややしの木)を植えるように推奨したりしています。また、建築物の色やデザインにも様々な制限があり、ハワイらしさのあるデザインを取り入れることを義務付けられています。特に現代的な建築物には必ずハワイアンなロゴがファサードについていたり、屋根の形状が伝統的な寄棟屋根(屋根の最上部から4方向の屋根面が分かれている屋根)にしなければならない場合もあります。  

具体例としては、カラカウア通りで西からワイキキに入るとすぐ右手に見えるAllure Waikikiという高級コンドミニアムです。1階の柱にはそれぞれハワイアンなロゴが装飾されており、庭園にはやしの木などのトロピカルな植物がたくさん植わっています。そして、極めつけが屋根です。高層ビルはフラットな屋根が採用されることが多く、現にこの建物を設計した建築士もフラットにしようとしたらしいのですが、特別区域の許可が得られず、伝統的な寄棟屋根となりました。結果、現代とハワイアンが融合された良い建物になったと思います。  

このような建物がワイキキにはたくさんあります。一度これらのことを気にしながら歩かれてみるとおもしろいかもしれません。

 

 

鵜飼 高生 Takao Ugai 建築士・AIA・LEED AP・博士(建築)・家庭塾長 Focus Labo LLC 代表取締役

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明治大学建築学科卒業後、ハワイ大学マノア校で建築の博士号を取得。日米両国での建築設計実務経験がある、経験豊富なハワイ州登録建築士。