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  アメリカ東海岸の北東部にある、メイン州。日本の北海道と同じくらいの緯度に位置する。夫のアダムは小学生の頃、母親に連れられてメイン州の中でもアメリカで最も東の街、イーストポートという小さな港まちで2年程、暮らしたことがある。  

 マンハッタンで生まれた超都会っ子が、大自然のメイン州に移住した時の話は、アダムから今でもよく聞く。冬になると、軽くマイナス30度を下回ることがあるメイン州。そこで、当時、小学生だったアダムが体験したこと、それは、この厳しさの中を生き抜くには、友人知人、近所の人たちと協力して助け合うこと。そして、自然へ敬意の念を払うことがとても大切だということ。長くて厳しい冬があるからこそ、春になった喜びも倍増し、そのあと夏へと移り変わる季節の移ろいをとてもありがたく受け入れることができるようになったそうだ。

 新婚当時、NYCでも日本のテレビ番組、「北の国から」が放映されていた時代があった。アダムはこの番組が大好きで、北海道で生活する親子とメイン州での生活が重なり、毎回、とても感動していたことを思い出す。  

 私も1度、彼に連れられメイン州へ遊びに行ったことがある。  

 メイン州では、友人たちとピクニックへ出掛けた。川のほとりでテーブルを広げ、バケツに何杯も入っている巨大なロブスターを思う存分食べた。友人曰く、私が普段、チキンを食べるような感覚でロブスターをいつも食べているらしい! なんと、贅沢な〜!(笑)  

 心に残っているのは、ロブスターだけではない。滞在していた友人宅で夕食後、外も暗くなり、暖炉にあたりながらリラックスしていたその時。ふと窓の外を見たら、緑色とピンク色をしたうねる光の筋が大空を横切った。まるで長崎の有名なお祭り、長崎くんちの中で披露される龍が踊っているようにうねうねと動きまわっている光景が!  

 びっくりして、思わず声を上げると、夫の友人が、「オーロラだよ!」と教えてくれた。急いで友人と夫と外へ出て、どれほどの時間がたったのかもわからない程、3人で時空を超えて、ただ、それを眺めていた。人生ではじめて実物を目の当たりにしたオーロラ。大自然と宇宙がなす神秘を前に、永遠に時が止まってしまったかのように感じた。   

 

 メイン州を思い返すとき、いつも「ダイナミック」という言葉が浮かんでくる。大都会、NYCのダイナミックさとはまた、正反対な、大自然の中でのダイナミックさ。  

 都市で暮らしていると、いつでも何でもすぐ手に入る。でもそれは決して当たり前なことではない。メイン州のイーストポートは、いかに日々の便利な生活がありがたいことなのかを教えてくれる、そんな場所でもある。

 

(日刊サン  2017/11/1)

 

大森 千寿
香川県生まれ。一人っ子。8才の時に韓国ホームステイを経験。12才の夏休みはオレゴン州にホームステイ。16才でオレゴン州のハイスクールに1年間留学。2003年自分探しで訪れたNYで運命の人と出逢い国際結婚。2010年ハワイにホテルコンドミニアムを購入したことがきっかけとなり、ハワイで過ごす時間が増える。現在はアーティストで夫のアダムウェストンのマネージメントをしながらハワイ、NY、日本を拠点に活動中。

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