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 NYCで生活をしていると、人生ではじめての経験をすることがたくさんある。最近のはじめて体験といえば、大人子ども総勢30人で一緒に映画を観に行ったこと。35年振りの続編で話題の「ブレードランナー2049」を観た。  

 きっかけは、ブレードランナーが大好きな友人のひとりが、映画の公開に大興奮して、公開日前日のプレオープニングチケットを15枚も買い占めたこと。「早い者勝ちだよ。チズもアダムも一緒に観に行きたい?」と連絡が入った。夫のアダムもこの映画のファンだった為、”Of course!”と即決。翌日、またその友人から連絡があり、行きたい人たちが芋づる方式で膨らみ、結局、友人の友人が新たに15枚チケットを買い足したという。  

 結局、7時からスタートする映画の前に6時頃から友人宅に集まり、たった50分のピザパーティーを開催することに。平日の6時という時間帯、しかも前日に計画されたこの半無計画的な「映画鑑賞&パーティー」に果たして本当に30人も忙しいニューヨーカーたちが集まるのかと、私は半信半疑だった。  

 

 そして当日。はやめに友人宅へ行って手伝いをしていると、次から次へと人が集まる集まる!  四方八方から大音量で英語が飛び交う中、映画館へ行く前のたった50分にも満たない時間に、友人がそのまた友人を紹介し合って人々は人脈を広げ、中型自転車のタイヤくらいの大きさのPIZZAが8枚とサラダやチップス、大量にあった飲み物はあっという間に残り少なくなった。  

 ちょっとの時間も無駄にせず、豪快にパワー全開、目の前にある瞬間瞬間を楽しむ能力。そして新しい人とあっという間に友達になってしまう人々の能力の高さに本当、いつも感心する。  

 後でふとしたことでわかったことなのだけれど、主催した友人は、この夜の数時間だけで軽く1000ドル以上支払ったらしい。もちろんすべて自腹だ。それでも、ケチケチなんてしていない。ホームパーティーで同じ時間を過ごした人たちがお仕事だったり、人脈を紹介し合って、いい関係が繋がっていくという循環を知っているから。そして何より、シンプルに楽しい時間をみんなで共有できたのが嬉しいと話していた。  

 彼のように、まわりを楽しませてくれて喜ばれるお金の使い方や人との交流をしていると、そりゃあ、お金も人も喜んでまた彼のもとにたくさんやってくるだろう。  

 

 今回の映画パーティー。本命は「ブレードランナー2049を観る」ことだったのに、私にとっては映画を観ることよりも、思いがけず「時間の楽しみ方やお金の使い方、人と交わる楽しみ方を観る」貴重な体験となった。いつも新しい扉を開けてくれる友の存在に感謝だ。

 

(日刊サン  2017/10/11)

 

大森 千寿
香川県生まれ。一人っ子。8才の時に韓国ホームステイを経験。12才の夏休みはオレゴン州にホームステイ。16才でオレゴン州のハイスクールに1年間留学。2003年自分探しで訪れたNYで運命の人と出逢い国際結婚。2010年ハワイにホテルコンドミニアムを購入したことがきっかけとなり、ハワイで過ごす時間が増える。現在はアーティストで夫のアダムウェストンのマネージメントをしながらハワイ、NY、日本を拠点に活動中。

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