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マカオ・香港の家族旅行、2日目の朝。両親と祖母が泊まったホテルの一室を訪ねると、すでに祖母はお化粧をきちんとして、口紅も塗り私たちが迎えにくるのを待ち構えていた。  

初日、マカオに到着したのは、夜。その後もホテルで乾杯したりカジノをまわったりして、ホテルに戻ったのはすでに夜中過ぎだった。今回は、93歳になる祖母も一緒の旅。祖母の体調が少し心配だったのだけれど、まずは、元気いっぱいな祖母をみて一安心。ゆっくりと贅沢なホテルでの朝食をいただいた後、マカオ在住の友人と合流して、マカオ観光がスタートした。  

私の中でのマカオのイメージは、カジノ一色。正直、カジノに興味が無く、マカオを旅したいと思ったことは今まで一度もなかったのだけれど、今回は、ハワイで仲の良かった友人夫婦がマカオに引っ越したことがきっかけで、二人に会いに、マカオに遊びに行こうと決めた。  

それが、実際にマカオを訪れて、印象がガラリと覆された。カジノ以外に、マカオにはたくさんの魅力がある。1999年までポルトガルの植民地だったマカオには、ポルトガルの名残が街に広がり、セナド広場周辺や聖ポール天主堂跡をはじめ、数多くの歴史的建造物が存在する。小さい土地に関わらず、世界で3番目に世界遺産が多い街なのだそうだ。  

人々も広東語の他に、ポルトガル語、英語を話せる人が多いし、とても美味しいポルトガル料理を食べることもできる。2つの相反する文化がその土地で時をかけて根付き、融合され、その新旧入り交じる独自のエネルギーに、私は、すっかり魅了されてしまった。  

ポルトガル人が最初に入植した場所とも伝えられる、マカオ最古の寺院を案内してもらった帰り道。ホテルまでは、タクシーでの移動を選んだ。これでもかとハイスピードで自信満々にかっ飛ばして行く運転手さん。こうなると、車中では、みなが運命共同体だ。窓の外で、目まぐるしく変化して移って行く古い町並みをぼんやりと眺めていた時、ふと、横に座っていた祖母がポツリとこんなことを言った。

「同じ地球上なのに、こんなにも違う世界があるなんて!」  

 

今回の、マカオの旅は93歳の祖母のこの一言に集約されているように思う。生の世界を自分で体験し、そこではじめて言えることはたくさんある。何事も、勝手なイメージで決めつけてしまうことは、自分の世界を小さく狭めてしてしまうから、もったいない。  

自分の目で見て、感じて、体験することは、とても大切なこと。まだ見たことのない世界、まだ感じたことのない思い、そしてまだ体験したことのない未知なる世界をどんどん味わっていける、そんな人生をこれからも歩んでいきたいと思った。

 

(日刊サン  2017/8/30)

 

大森 千寿
香川県生まれ。一人っ子。8才の時に韓国ホームステイを経験。12才の夏休みはオレゴン州にホームステイ。16才でオレゴン州のハイスクールに1年間留学。2003年自分探しで訪れたNYで運命の人と出逢い国際結婚。2010年ハワイにホテルコンドミニアムを購入したことがきっかけとなり、ハワイで過ごす時間が増える。現在はアーティストで夫のアダムウェストンのマネージメントをしながらハワイ、NY、日本を拠点に活動中。

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