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旅に出ると、事前に計画していないことも多々、起きる。特に、自分で計画したフリープランの旅は、思い通りにならないことの方が多いかもしれない。でも、良いことも良くないことも含めすべてが「旅」。物事をプラスに受け取り楽しむか、それともマイナスに受け取るかで、旅の思い出も経験も大きく変わる。

 

大学時代、タイのプーケット島でスキューバーダイビングのライセンスを取った。泳ぐことが苦手な私だったが、高校時代からの友人に誘われるがまま、ライセンス取得のコースに参加したことがダイビングをはじめたきっかけだった。今まで、テレビや本でしか触れたことのなかった、海の中。その永遠に広がる未知なる世界に魅了され、ダイビングにハマった。そして、プーケットの大自然、人々の笑顔、燦々と輝く太陽に大いに癒された。  

タイから帰国後、今度は、ダイビングの免許を持つ大学の仲間たちとプーケット行きを計画。数ヶ月後の夏休み、同じ学部だった仲のいい6人でダイビングの旅へと出発した。  

ところが、前回の旅とは大きく違って、プーケットへ到着と同時に前が全く見えないくらいの大雨。数ヶ月前と同じ島とは思えない程にどんよりとしていた。約1週間の滞在中は、毎日ダイビングの予定を入れていた。不安になりながらも迎えのトラックに乗り込んだのだが、翌朝も地面を叩き付ける大雨。ボート乗り場へ到着すると、恐ろしい程に波がうねり、押し寄せていた。皆、無言だった。  

後でわかったのだが、タイでは5月から10月が雨期。雨期でも、全く大丈夫な時もあるそうだが、私たちが行った時は、いつも以上に天候が悪かったらしい。相手は自然だ。何も太刀打ちできない。調べずに行った私たちの責任だ。毎日毎日、魚一匹さえもみられない程の最悪の視界に、さすがに最後の1日はダイビングを取りやめにして、現地で遊ぶことにした。  

代わりに選んだのは、バンジージャンプ。海がだめなら、思いっきり空をダイブしよう! ということで意見が一致した。今思えば、当時、19歳と20歳だった若気を感じる。まだまだハプニングが続く旅だったが、思うようにいかない状況の中、仲間と本気で喧嘩したり助け合ったりしながら、思いっきり旅を味わえたように思う。  

 

その後も、何度かプーケットへ出掛けているけれど、この時の旅ほど強烈な思い出はない。私にとって、どの旅も宝ものだけれど、中でも自分を成長させてくれたり記憶に深く残っている旅は、ピンチを乗り越えた旅だったり、新しい発見をした旅だったり、本気で自分をさらけ出せた旅だったりする。  

やっぱり、人生から旅を切り離すことはできない。

 

(日刊サン  2017/7/19)

 

大森 千寿
香川県生まれ。一人っ子。8才の時に韓国ホームステイを経験。12才の夏休みはオレゴン州にホームステイ。16才でオレゴン州のハイスクールに1年間留学。2003年自分探しで訪れたNYで運命の人と出逢い国際結婚。2010年ハワイにホテルコンドミニアムを購入したことがきっかけとなり、ハワイで過ごす時間が増える。現在はアーティストで夫のアダムウェストンのマネージメントをしながらハワイ、NY、日本を拠点に活動中。

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