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 今まで私は、都会大好きで育ってきた。マンハッタンを離れ、郊外に引っ越して行く友人ファミリーを幾度となく見てきたけれど、自分自身、都会の方が好きなんだと思っていた。それが先日、覆る出来事が起きた。NYのペンステーションから電車に乗り、約40分。ニュージャージー州メイプルウッドという閑静な住宅地にある友人宅。アメリカは今月、6月が卒業シーズン。仲良しの友人ファミリーも息子が高校を卒業し、自宅で開催された卒業のお祝いパーティーに参加してきた。

 友人も、昔はブルックリンに住んでいた。マンハッタンで働いていたけれど、子どもができてからは、NYのお隣、ニュージャージー州へと引っ越して行った。夫と私は今まで何度もこの友人宅へ遊びに行き泊まったりもしている。

 お昼から始まったパーティーは、自宅の裏庭を解放して、約70人程が参加。子どもたちは、裸足で芝生を駆け巡り、大人たちはその様子を見守り、太陽と緑に囲まれた中、リラックスして食事と会話を楽しんだ。なんだかとても心地の良い気持ちよさ。ハワイに居た頃に友人たちと過ごしていた週末とよく似た開放感。人がわんさか集まって、所狭しと日光浴しているマンハッタンの家の近所の公園とは、全く違う。夫、アダムがよく口にする、”Quality of life”(人生の質)が感じられた時間だった。そして、面白いことに、パーティーで話をした人たちのほとんどが、NYCを離れて郊外へと移り住んだ人たちだった。

 夜9時をまわる頃、陽が沈むと共に暗闇の中に、ふわぁ〜、と光っては消えるものが見え始めた。あちら、こちらで蛍が楽しそうに飛び回っていたのだ。”Firefly!” 感動のあまり、思わず声を上げると、誰かが「もう、そんな時期になったんだね」と言った。この一言が、なんだか、無性に懐かしかった。

 マンハッタンの自宅に戻る頃には、今まで頑なに都会暮らしが私のライフスタイルだと思っていた私の気持ちに、少し変化があらわれていた。自分でも驚いた。都会での生活に少し、疲れ始めているのか?それとも、私自身が変わり始めているのか?もう少し、時間が経ってみないと、真相はわからないけれど、その日、パーティーでボブが言った、こんな言葉を思い出した。

「生まれた瞬間から、僕たちは、各々が名前をいただき、オンリーワンの「自分」という人間をクリエイトしていく権利を与えられた。自分の人生を思うように創って行くのは、自分自身。」

 そうだ。フリーなマインドで変化も成長も楽しんでいきたい。環境も、生き方も、自分で選んで創っていくことができるのだから。

 

(日刊サン  2017/6/28)

 

大森 千寿
香川県生まれ。一人っ子。8才の時に韓国ホームステイを経験。12才の夏休みはオレゴン州にホームステイ。16才でオレゴン州のハイスクールに1年間留学。2003年自分探しで訪れたNYで運命の人と出逢い国際結婚。2010年ハワイにホテルコンドミニアムを購入したことがきっかけとなり、ハワイで過ごす時間が増える。現在はアーティストで夫のアダムウェストンのマネージメントをしながらハワイ、NY、日本を拠点に活動中。

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